野宮美乃8.願うのはハッピーエンド
かなり前に書いたものですが、
データが出て来たので、
手直しして投稿していきます。
ただ今7時40分。
天気は快晴、遊園地日和。気分は雷雨。
家にいても落ち着かなくて、早く来すぎてしまった。
改札を抜けると驚いたことに、すでに洸哉の姿があった。
なんで!?
8時待ち合わせじゃなかったっけ!?
えっ!?
時間、間違えた!?
あれっ!?
なんかよくわかんないけど、とりあえず、
「おはよう、天気よくて良かったね」
と、後ろから声を掛けた。
洸哉はすごく驚いた様子で振り返った。
「おはよう、普段の行いがいいからな」
と、笑顔をくれた。
私達は自然に歩き出した。
「早かったね、だいぶ待ってたの?」
「あ、いや、美乃の2分くらい前かな」
「そっかぁ、私時間、間違えたのかと思っちゃった」
エヘッと笑うと洸哉は、
「おまえも早かったじゃないか?」
とてもじゃないけど、緊張してなんて本当のことは言えない。
たとえ、口が滑っても、だ。
「天気がいいから、待ってるのもいいかなぁって思って」
なんて、取ってつけたような理由でごまかしながら、
「遊園地混んでそうだね、天気いーから」
なんて、さらりと話題を変えてみたりして……。
「多分、混んでるだろうな」
その予想は少しの狂いもなかった。
どのアトラクションも長い行列が出来ていた。
ジェットコースターではキャアキャア叫び、コーヒーカップでは目が回り、すっかり純粋に楽しんでいる自分に気がついた。
「ねぇ、ちょっと休まない?並び疲れちゃった」
「そーだな」
合意を得たところで、少し歩いた所にあったベンチに座り、しばしの休憩。
洸哉はジュースを買いに売店へと駆けていった。
どうしよう?
やっぱり洸哉との今の関係を壊したくないよ…..。
だけど、頭の中でカズキ君の約束は守れ、という言葉がうるさいくらいに鳴っている。
分かってる、分かってるよ…..けど…….。
昨日から想いを伝える場所は決めてある。
在り来たりかも知れない。
でも、私は観覧車の中で、と決めている。
だから、まだ観覧車には乗らない、乗れない。
最後の最後、ギリギリまで乗りたくない、この時間をまだ壊したくはない…..。
まだ魔法が終わる時間じゃないから…..。
そんなことをぼんやり考えていたら、近づいてくる足音に気がついた。
「美乃、ホラ。オレンジでいいよな?」
洸哉の声が耳に、ペットボトルが手に届いた。
「ありがとう。お金….」
「いいよ、オレのおごり」
「ありがとう」
ベンチに並んで座り、歩いていく人を眺めていた。
「どんどん混んでくるなぁ、あと幾つアトラクション乗れるかな?美乃は何かコレだけは乗りたいっていうのあるか?」
今だ。言わなくちゃ…..。
「うーん、最後にのんびり、観覧車とか乗りたいかも」
言った。
これだけは、譲れないよ。
これだけは、絶対に乗るって決めてるんだから。
洸哉は、じゃあ、と言って、
「観覧車の前にアレに乗らない?」
そう言って洸哉の指したモノは、今年出来たアトラクションだった。
どんなものかと言えば、フリーフォールの逆バージョンで、下から上にすごいスピードで昇るヤツだ。
地上50メートルとかいうヤツ。
「アレ乗ったら、観覧車乗ろーぜ。いいか?」
頷いて行列の最後尾に並んだ。40分待ちの札が出ている。
「40分待ちだって」
洸哉を見上げると、なぜか固まっているらしい。
「もしかして洸哉?自分で乗るって言ったのに怖いんじゃないの?」
「うるさいっ」
「あっ、やっぱり怖いんだ。洸哉の弱虫くん」
図星だったらしく洸哉は私をジロッと睨んで、
「弱虫なんかじゃないぞっ、そういうこと言うのはこの口か?んっ?」
と、私の口を指で摘む。
いたぁ~~~~~~い。
口を摘まれてるから声にならない。
「ん~~~~~~~~ん」
「もう言わないなら、しょうがないから放してやる」
コクコク首を振ると、やっと指を放してくれた。
「もぉ、何すんのよっ」
私が抗議したって、洸哉はどこ吹く風で知らん振りしてるし、周りの人はクスクス笑ってるし、もぉーイヤ。
そんなことをしながら、40分並んだアトラクションは結構すごいスピードでドキドキした。
そして、とうとう来てしまった。
ついに、運命の時が……。
観覧車は他のアトラクションに比べて、空いていて20分程待てば乗ることが出来た。
この時点ですでに心臓は壊れそうなほどの動きをしている。
観覧車の一周は約3分程度、その間に何とかしなくてはいけない。
どうしよう……..。
そんな想いと共に私達は赤い色の観覧車に乗り込んだ。
「楽しかったね、今日はありがとう」
とにもかくにも、何か話していないと倒れそうだ。
「オレも楽しかったから、また一緒に来れたらいいな」
もぉ、嬉しいこと言ってくれる。
「そうだね、来れたらいいね」
どうしよう、どんどん観覧車は高くなっていく、あと30秒もすれば頂上にたどり着いてしまう。
えぇぇぇい、女は度胸よ。
口を開きかけたその時、洸哉が言葉を発した。
「あのさ」
顔を上げた私の目に飛び込んできたのは、いつかと同じ夕焼けの中で輝く洸哉の姿だった。
「あのさ、オレさ…..実は…….」
洸哉にしては、珍しく歯切れの悪い、要領の得ない、らしくない話し方をしている。
どうしたんだろう?
「えっ!?ナニ?どうしたの?」
「あ、うん。オレ、おまえのこと……」
えっ!?なに?ちょっと待って!?
突然何が起こってるの?
なんかすごぉーく、都合良く解釈したい自分がいる。
そんなワケないのに、そんなワケないのに……..。
だけど、まさか、そんな……….。
どうしたらいいのか、全然分からない私の瞳が、不意に洸哉の瞳に捕まった。
逸らせない気持ちと、瞳がすべての音を止めた。
そして、洸哉の唇が告げた。
「好きだ」
の3文字…………。
洸哉が私の事を…….?
そんなこと思いもしなかった、どうしよう。
驚きすぎて声も出せない。
瞬いた瞳と共に世界に音が戻った。
「美乃?聞こえてる?」
頷くのが精一杯だ。
で、でも言わなくちゃ。
ちゃんと言わなくちゃ、私の気持ちも…….。
「……..洸哉」
やっとの思いで出した声は、緊張のためなのか、それとも嬉しさのあまりなのか、とにかく少しかすれていた。
「私、ね。ずっと、洸哉のことだけ見てきたんだよ、ずっと。洸哉…….好きだよ」
伝えた想いと一緒に零れ落ちそうな涙の向こうに、とびっきりの笑顔の洸哉を見つめていた。
私達を乗せた観覧車が、少しずつ地上へと近づいていく、そんな中、優しい瞳をした洸哉が私に少しだけ近づいて、一瞬触れるだけのキスをくれた。
私は今日という日を、生涯忘れることはないだろう、そんな風に思っていた。
これから少しずつ大切な瞬間が増えていくのを感じていた。
月曜日、やっぱりどこかテレくささを感じながら、学校へと向かっていた。
教室には、洸哉のところにすでにカズキ君が来ていた。
おはようの後に、待ってました!とばかりに、
「洸哉も美乃ちゃんも約束守ったかい?」
などと、カズキ君は私達に向かってそう言ったんだ。
「美乃も?」
「洸哉もって?」
私達の声が重なり、顔を見合わせ、ちょっとだけイヤな顔をして、カズキ君を睨んだ。
カズキ君は、イタズラのバレた子供みたいな顔を作った後、ウインクを一つ飛ばした。
「あっ?もしかして私のことハメた?」
カズキ君はニッと笑って、
「半分正解。美乃ちゃんだけじゃなく、洸哉のこともハメたから」
「どういうこと?」
カズキ君は悪びれた風もなく、こう言って退けた。
「つまり、2人ともお互いのこと好きなのに、相手は自分のこと親友としか思ってない、なんて思ってるから気の毒というか、鈍いというか、とにかくじれったくて……ここはひとつオレが一肌脱いでやろうと、色々考えたワケよ。それでどっちかが、カケに負けてくれれば、上手くいくのは分かってたからさ。けど、2人とも負けてくれるとはねぇ」
と、私と洸哉を見比べてくつくつと笑っている。
私はア然として、洸哉と顔を見合わせてしまい、言葉も出なかった。
「おまえら、ホント似てるよ。似合いのカップルだよ」
カズキ君は、笑いながらウインク一つ残し、私達の前から去って行った。
「じゃあ、何?オレ達カズキに踊らされてたワケ?」
洸哉はカズキ君の消えていったドアを見たまま、そう呟いた。
それはそれは、ものすごく悔しそうに……。
「そういうことになるのかな?ケド感謝だよね?アレがなかったら、きっとずっと親友でごまかしてたよね」
洸哉を見上げて言うと、
「んっ、そのうち身動き取れなくなって、最悪の状態に陥ってたかもな」
「そうだねぇ、最近すでにちょっとそんなカンジだったしねぇ」
確かに変だったのは、どちらかではなく両方だったのだから……..。
「とりあえずは、終わりよければすべて良しってことにしておくか」
「うん」
頷いたら、笑顔がこぼれた。
自分が自分でいるために、2人が2人であるために、必要不可欠な相手なのだから……。
これから街で囁かれるセリフに微笑みながら、2人で歩いていきたい。
友達のように、親友のように、そしてライバルのように、素敵な2人になっていきたい。
そう、大切なあなたと一緒に………。
fin
明日からは"高峰洸哉"バージョンになります。
毎日更新予定です。
よろしくお願いします。




