野宮美乃6.氷の美人じゃありません
かなり前に書いたものですが、
データが出て来たので、
手直しして投稿していきます。
翌日、学校へ行くと何となく洸哉の様子がおかしい。
何がどうと言う訳ではないのだけれど…..。
話しも普通にするし、笑顔も見せる。
なのに、どこかおかしいと感じてしまう。
なぜだろう?違和感を感じているのは私だけなのだろうか?
よく分からない、ただ本当に何となくなのだ。
洸哉に聞いても答えは出ない気がした。
じゃあ、カズキ君に聞いてみようか?
なんと言っても彼は私の片想いを知っている唯一の人だ。
そして、洸哉が一番信頼しているだろう人だから…..。
そうしよう、彼に聞いてみればいい。
後は昼休みを待つだけだ。
いつも以上に長く感じた授業を優等生の顔でやり過ごし、カズキ君のクラスへと向かった。
その辺にいた人にカズキ君を呼んでもらった。
「カズ、“氷の美人”がお呼びだぜ」
ってオイオイ。
本人の目の前でそんな呼び方はないんじゃないの?
私には野宮美乃というちゃんとした名前がっ、ってそんなことはこの際どうでもいいわ。
呼ばれたカズキ君は教室の端の方から歩いてきた。
「あれ?美乃ちゃん。どうしたの?」
「あ、うん。ちょっと相談というか話しがあるんだけど、今時間いいかな?」
やっぱりカンが鋭いのか、すぐにピンときたみたいで、
「ここじゃなんでしょ?屋上に行く?」
私はひとつ頷いて、カズキ君と共に屋上へと向かった。
屋上へ出ると、ちょうどいいだけの涼しい風が吹いていた。
人はまばらにいるくらいだ。
内緒の話しをするにはちょうどいいかも知れない。
誰もいないフェンス側でカズキ君は、
「アイツとなんかあったの?」
単刀直入に、しかもこれ以上ないくらいの鋭い切り口で話しを切り出してくれる。
やっぱりこの人は侮れないな、というのが私のこの時の感想だ。
「どうして、何かあったって思うの?別に何もないよ?」
「そーなんだ?昨日アイツさ、オレん家に来てムズカシイ顔してたし、今日は今日で美乃ちゃんまでオレの所に来るからさ、何かあったのかなって思うじゃない?」
「そっか、ゴメン。たいしたことじゃないんだけど、洸哉から何か聞いてない?」
「何かって?」
「何か洸哉いつもと違う感じがするんだよね…..」
私は青く広がる空を見つめていた。
秋の空は高くて澄んでいた。
青くて高くて少し寂しく感じた。
言葉をなくしてしまった私の背中に、カズキ君の笑い声が聞こえた。
振り返ると、カズキ君は私の瞳を見て、
「美乃ちゃん、アイツに告白しないの?」
そんな言葉を投げつけてきた。
「えっ!?」
胸がハネ上がる。
「だから、コクハク」
その言葉は私が今までずっと長い間タブーとしてきた言葉だった。
それをいとも簡単にカズキ君は、口にするのだ。とても簡単なことのように…..。
脈と一緒に、口調もどんどん早くなっていく。
「出来るワケないじゃない。親友だ親友だってアレだけ強調されてるのに、言えるワケないよ。ダメだよ、言えない。今の関係を壊せないよ、壊したくないよ。失いたくないよ」
ホントにそう思っていた。
一緒にいられるだけで、今は幸せだった。
洸哉だけが本当の私を分かってくれたから、失くしたくないよ。
洸哉の存在だけは、失くせない、絶対に。
いつのまにか私はフェンスをギュッと握り締めていた。
「でもさ、美乃ちゃん?考えてもみなよ。一歩踏み出さなきゃ何にも変わらないよ?いつまで経ってもアイツは美乃ちゃんの気持ちに気づかないよ?それでもいいの?ずっと親友だって言いつづけるよ?アイツは」
分かってる、分かってるけど……。
でも無理だよ、壊すだけの勇気は今の私にはないよ…….。
無言の私にカズキ君は、とんでもないことを言ったのだ。
「じゃあ、こうしない?オレと美乃ちゃんでカケをしよう。で、美乃ちゃんが負けたらアイツにコクハクするって言うのはどう?」
「えっ!?イヤ、でもダメだよ」
渋る私にカズキ君はいやぁな事を言う。
「美乃ちゃん、君は“氷の美人”なんだからコレくらいの事、どーってことないってポーカーフェイスでやり過ごさなきゃ」
はぁ?そんな理屈ってありっ!?
「もぉ~~~~、“氷の美人”なんかじゃないってカズキ君知ってるくせにっイジワルっ」
カズキ君は洸哉がやるみたいに、ニッと笑って、
「そっオレ、イジワルなの」
と、ほざいたのよ。
私が絶句したのは言うまでもないかしら…..。
「美乃ちゃん、苦手な教科って何?」
「へっ!?突然ナニ?英語だけど…..」
反射的に答えながら、首を傾げた。
「よし、オレは英語得意だから、じゃあ、3日後の実力テストの英語の点数がカケね」
と、ウインクひとつ。
ウインクはカズキ君のクセなのだろうか?って今はそんなことはどうでもいい。
「ナンデ?テスト?しかも英語?だってカズキ君得意なんでしょ?私不利でしょ?」
もぉ、ホンットに苦手なのよ、英語はっ。
「イエイエ、美乃ちゃんの得意の教科じゃカケにならないでしょっ、満点取っちゃうんだから。というわけで実力の英語だからね」
爽やかな笑顔を残してカズキ君は屋上から消えていった。
ちょっと待ってよぉ、ホンットに勘弁してよぉ~~~。
どうしよう、どうしよう、どうしよう!?
私が弱気の泣き言をこぼしていた頃、階段を降りながらカズキ君が呟いていた
「昨日、洸哉に使ったのと同じ手だけど、まぁいっか」
なんてセリフは誰一人として知る由もなかった。
洸哉との間に一方的にぎこちなさを感じたまま運命(!?)の実力テストの日がやってきてしまった。
朝から落ち着かない私とは反対に、怖いくらいに真剣な顔で静かに勉強を続ける洸哉の姿が私の隣にあった。
うーん、英語は最後の教科。
こんな状態で今日1日持つのだろうか……。
緊張で貧血起こしそう……。
あっ倒れたら試験受けなくてもいいかなぁ?
でも不戦敗だって言われそうだしなぁ。
カズキ君イジワルだしなぁ。
やっぱり女は度胸で、覚悟決めるしかないよねぇ……。
とりあえずは他の教科をクリアしないことには話しにならないんだから….。
終わった、終わってしまった…..。
でも、やるだけはやったんだから、もうなるようにしかならない。
あとは結果しだいだ。
大きく息を吐いて、隣を見ると、洸哉の顔にも笑みが戻っていた。
「終わったね、テスト」
自然に話しかけていた。
「あぁ。結果はあんま見たくないけどな」
それは私も同感だわ。
「明日から戻ってくるのかな?」
「たぶん、な」
はぁぁぁぁあ。
なんて、2人のため息が重なっちゃって、顔見合わせて笑っちゃった。
「美乃、なんか帰りに食いに行かねぇ?」
「そーだねぇ、何か甘いもの食べたいかも」
「よし、決まりな」
もし、もしだけどカケに負けちゃって、それで玉砕なんかしたら、今までみたいに2人の時間なんてなくなる。
その前に出来るだけ、2人でいられる時間がほしい。
自分の気持ちに精一杯の私には、複雑な笑顔をした洸哉に気づかなかった。
「そういえば、2人で帰るのって久しぶりだよな?」
「そうだね」
何となく、言葉が滑ってるだけの表面上の会話しか出来てないのにも、私は気づかなかった。
毎日更新予定です。
よろしくお願いします。




