野宮美乃5.ハッピーバースデー
かなり前に書いたものですが、
データが出て来たので、
手直しして投稿していきます。
気持ちよく太陽が笑っている日曜日の朝10時、駅で待ち合わせた私達は電車に揺られて、人ごみに揉まれながらショッピング街へと足を運んだ。
今日の洸哉洸哉はジーンズにTシャツというラフな格好だったが、スタイルが抜群なので、3割増カッコよく見えた。
スリップドレスにジーンズの私とも相性のいい感じだ。
「おーい、何買うんだよ。いいかげんに教えろよ」
さっきからあちこち見て回るだけの私に、いい加減に苛立ちを隠せなくなった洸哉のセリフだ。
「ゴメン、実はまだ決まってないんだ」
ナニィー!?とすっごい嫌な顔一つして、
「じゃあ、なにか?ただウロウロ歩き回ってただけかよ」
さすがに、こめかみに怒マークが出ている。
「ゴメン、色々見ているうちに決まると思ってたんだけど、全然反応ないし…..」
段々声が小さくなって、語尾があやふやになっていく。
「反応ってなんだよったく」
洸哉はぶつぶつ文句を言ってる。
あぁ、この分だと今日が何の日かなんて絶対忘れてるんだろうな。ニブイ奴め。
「さて、ここで問題です。今日は何の日でしょう?」
「何だよ、イキナリ。今度はクイズかよ。えーっと?今日は何日だよ!?」
ふぅ、私は一つため息をついて言った。
「今日は10月28日だよ」
そこで洸哉の顔があっ!!となった。
「もしかして、オレの誕生日!?」
「そうだよ、忘れてたんでしょ?」
「キレイさっぱりっ」
と、頷いた。
「やっぱりねぇ……」
と、私が頷く横で、洸哉の不機嫌な顔が笑顔に変わる瞬間を見た。
「もしかして、買い物ってオレのプレゼントだったりするんだ?ちゃんとオレの誕生日覚えててくれたんだ。オレは嬉しいっ」
一人、感激している洸哉を連れて、プレゼントを探しにもう一度見て回ることにした。
洸哉は調子に乗って、たっかいスニーカーがほしいとか、ビンテージのジーンズがほしいとか、散々好き勝手なことばかり言ってくれちゃって、その度にマジメに選べとツッコミを入れたのは言うまでもない…..。
結局はTシャツに落ち着いた。
それから私達はかなり遅くなったランチを食べて帰ることにした。
洸哉は必ず、一緒に出掛けた時は家まで送ってくれる。
今日も当たり前のように、家までの距離を送ってくれている。
家にたどり着くと、いつものように、じゃあなっと言って、来た道を戻ろうとする洸哉を初めて呼びとめた。
「待って」
何?と振り向く洸哉に、私は震える気持ちを押さえながら言った。
「ちょっと寄っていかない?」
「イヤ、でも…..。やっぱ帰るよ」
そう言って、今にも走り出しそうな洸哉を、
「待って、お願いだから。見せたいものがあるんだ、だから上がっていって」
ねっ、とダメ押しの笑顔も付け加えてもう一度、お願いしてみた。
洸哉はたっぷりとためらった後に、
「…….じゃあ、少しだけ……」
と呟いたのだ。私の勝ちだわ、って何に勝ったんだか…..。
背中を押して、私の部屋まで連れて行くと、洸哉はなぜか部屋に入るのをためらった。
「何やってるのよ、早く入って、その辺に座ってて」
何とか洸哉を座らせて、すぐ戻るからと言い残し、私は部屋を出た。
この時、私の部屋で一人になった洸哉が何を見て、何を考えていたか、それは私には分かるハズのないことだった。
さっき私が洸哉に見せたいものがあると言ったのは本当のことで、決して洸哉を家に上げるためのウソではない。
そのものを持って部屋に戻った私に、
「なぁ、おまえの部屋ってなんかかわいいなぁ、やっぱ女の子だなぁ」
「何よ、突然。それよりハイこれ。開けてみてよ」
渡した箱を洸哉が開けると同時に、
「改めて、ハッピーバースディ洸哉」
ニッコリ微笑むと、
「もしかして、コレっておまえの手作りなワケ?」
そう、洸哉に渡した箱の中身は、昨日の夜に作ったチョコレートケーキなのだ。
「そうだよ」
「なんか、オレすごく嬉しいよ。サンキューな美乃」
そう言って、珍しくテレた洸哉はなんだかカワイく見えた。
そんな些細な一瞬が私にはタカラモノの時間になった。
とてもとても大切な瞬間に思えた。
「美乃、サンキューな」
そんな言葉を残して走り去る洸哉の後ろ姿をずっと見つめていた。
毎日更新予定です。
よろしくお願いします。




