野宮美乃4.なんかバレました
かなり前に書いたものですが、
データが出て来たので、
手直しして投稿していきます。
翌日、何となくテレくさい気持ちを隠しながら登校した。
玄関で昨日知り合いになったばかりの顔を見つけた。
「おはよう、カズキ君」
振り向いたカズキ君は、
「美乃ちゃん、おはよう」
朝から爽やかな笑顔と挨拶をくれた。
何となく連れ立って歩き出すと、ふいにカズキ君は言った。
「あのさ、違ってたらゴメンなんだけど、ひとつ聞いてもイイかな?」
「ナニ?」
「美乃ちゃんって、洸哉のこと好きでしょ」
突然、他人に隠してた自分の心の中を言い当てられて、さすがの氷の美人も動揺を隠せなかった。
「突然、ナニ!?」
カズキ君は小さく笑って、
「イヤ、ごめん。美乃ちゃん素直だね。でもアイツ全然気づいてないよ?バカなヤツだよなぁ」
なんで!?
なんで、昨日会ったばかりの人にバレてるんだろう?
「どうして分かったの?もしかしてバレバレなワケ?」
諦めて降参した。
何となくこの人に繕って誤魔化すのはムダな気がした。
「たぶん、他のメンバーとかは気づいてないと思うよ。オレも何となく感じただけだから」
って、カンが鋭いのか、人間観察が得意なのか…..。
「うーん、とりあえずコレはオフレコね。カズキ君以外誰も知らないから」
「O.K。その代わりと言っちゃなんだけど、またライブ見に来てよ、アイツらも喜ぶし」
と、ウインク一つ飛ばしてくれる。
私は、もちろん行くことを約束して廊下で別れた。
教室の私の席の隣には、すでに洸哉がクラスメートと固まって話をしていた。
「よう、美乃おはよう」
「おはよう」
洸哉は必ず私を見つけると、声を掛けてくれる。
昨日の今日で少しテレくさい私の気持ちなどお構いなしの至って普通の態度で。
そうなのだ、昨日のああいう行動も洸哉にしてみれば当たり前のことなのだ。
あれが私ではなくて、他の女の子でも変わらないのだ、ということは容易に予測できた。
考えるとすごーくイヤな気分になる、つまり私は特別でいたいのだ。
だからこそ、今は親友という位置に甘んじているとも言える。
チャイムが鳴り、みんな散り散りに自分の席へと戻っていく。
「昨日サンキューな、アイツらメチャメチャ喜んでたしな」
洸哉はそんな言葉をくれる。
「私こそありがとね。家まで送ってくれて」
洸哉はニッと笑っただけで何も言わない。
そういうヤツなのだ。
ちょっと困って、話題を変えてみた。
「今、玄関でカズキ君と会ったよ」
「あっマジ?なんか言ってた?」
もちろん、さっきの会話は内緒だ。
「またライブ来てよって言われた、今度の時も洸哉誘ってよ。昨日もすごく楽しかったし」
「おぅ、じゃあまた行くか」
その時、担任が教室のドアを開けて入ってきた。
その瞬間から、また今日も外せない優等生の仮面を被ることになるのだった。
4時間目の授業が終わりに近づいた頃、洸哉のお腹の虫が鳴いた。
「ハラ減ったぁ」
少々情けない声を出している。
それくらいお腹が空いているということだろうか…..?
「美乃、昼メシ何?」
「私?今日は学食に行くつもりだけど?」
「じゃあさ、一緒しねぇ?アイツらも一緒だけど」
「いーの?嬉しいけど、私が行くとしらけるんじゃない?昨日はみんなハイだったから普通にしてくれてたけど」
ちょっと遠慮がちに言ってみると、
「気にすんなって、そうなったらフォローしてやるから。なんてな、ホント言うと今日もアイツらの要望だから大丈夫なんだけど」
そう言うと、その後洸哉はお腹の虫と時間との戦いに苦戦を強いられていた。
チャイムが鳴り、長かった戦いに終止符が打たれた、戦いに勝った?らしい洸哉と共に学食へと足を運んだ。
うちのクラスは教室から学食まで少し距離があるため、学食はすでに人で溢れていた。
洸哉はみんなを探し出し、私をテーブルまで連れて行き座らせると、さっさと私の分と2人分の昼食を買いに行った。
私達の座っている席は他のどの席よりも華やかに見えた。
FENCEのみんなも結構爽やかなモテるタイプの男の子たちだからだ。
「美乃ちゃん、ゴメンね。無理言ったんじゃない?」
と、シゲル君。
「ううん、どうせ学食のつもりだったし、一人よりみんなでわいわいやりながらの方が、楽しいしおいしいよね」
と、笑って見せる。
「ねぇねぇ、ところで私、昨日から思ってたんだけど、みんなモテるでしょ!?バンドやってるし」
素朴な疑問を口にすると、全員一斉に首を横に振って言った。
「ぜぇーんぜん」
と…..。
「うっ、そでしょう?」
「ホントホント」
と、カズキ君が促すと、
「バンドやってるのナイショだし」
と、ライ君は少し声を潜めて言う。
「えっそうなの?」
「そうなの。うち、進学校だからうるさいでしょ、そーゆーの」
と、マナト君がうんざりって顔で説明をくれた。
「確かに….勉強だけやってれば文句ナシ。いい大学に入れば問題ナシってことかな?」
「そうそう、だからオレたちも美乃ちゃんと同じ、学校ではおとなしくネ」
と、トシヤ君はイジワルそうな笑顔一つ。
なぁーんか引っかかるなぁ。
「なぁーにオレ抜きで盛り上がってんだよ」
と、突然後ろからお盆二つと洸哉が現れた。
「ほら、美乃」
ありがとうの言葉と交換でうどんの載ったお盆を受け取った。
もう一つの洸哉のお盆の上にはカレーライスとラーメン、サラダまで載っていた。
「お昼からそんなに食べるの!?」
驚く私に、いつものことだ、とみんなが教えてくれた。
信じられない…..ポツリとこぼした呟きに、
「いーんだ、オレはまだ成長期なんだ」
と、182センチもあるのに、まだ成長期だと言うのだろうか…..?
あぁ、そっか。ポンと一つ手を叩いて、
「横に成長期ってこと?」
私がそう言うと、洸哉の箸が止まり、一瞬の沈黙。
その後にやってきたのは大爆笑だった。
もちろん洸哉を除いた全員の笑い声だった。
放課後、駅までの帰り道、私はだいだい洸哉と一緒になる。
約束をしているわけでもないのだけれど、何となくいつも一緒だ。
すれ違う人たちの囁きが今日も聞こえる、それもいつもと同じだ。
オレンジ色に染まる夕焼けの中、影だけが寄り添って見えた。
「そうだ、明後日の日曜日って洸哉なんか予定ある?」
見上げた洸哉の顔は、夕日と重なって眩しく見えた。
「オレ?ヒマヒマ」
「買い物、付き合ってくれないかなぁ?」
「別にいいけど?昼メシ奢ってくれんなら」
あんたはいつも食うことばかりですかい。
まっ、初めからそのつもりだから、いいんだけどね。
「O.K。ご馳走しましょう」
やりぃー、とガッツポーズと満面の笑み。
「ケド、オレより女の子の方がいいんじゃないのか?買い物って」
「いーのいーの、別に自分のもの買いに行くわけじゃないから」
「あっ、そーなの?何買うの?誰の買うの?」
何やら興味津々の洸哉なのである。
「ナイショ」
一言だけで後は何を聞かれても、笑うだけでノーコメントを通した。
毎日更新予定です。
よろしくお願いします。




