表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DEARーestー  作者: トーヤ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/4

野宮美乃3.ライブに行きました

かなり前に書いたものですが、

データが出て来たので、

手直しして投稿していきます。

駅の時計はたった今16時55分を指したところだった。


ジャスト5分前。


洸哉(こうや)との約束には遅れるわけにはいかない。

洸哉は時間にすごくうるさくて厳しい、もちろん洸哉自身が遅れてくることは絶対にない。


それは今までの付き合いのなかで簡単に分かる事だった。


私が来てから、少しもしないうちに改札を抜ける洸哉の姿が目に入った。

何と言うか、人ごみでもしっかり目立つヤツだなぁ。

しかも、何をキョロキョロしてるんだか…..。


「洸哉」


声を掛けると、振り向いた顔が驚いている。


「おっ、まえ、美乃(みの)かぁ?」


と、人を珍しいモノでも見るみたいに、上から下までマジマジと見ている。


「ちょっと、何よ。ジロジロ見ないでよ」

「だって…おまえ、学校とも普段とも全然違うじゃんか……」

「人のこと言えてんの?」


洸哉には華がある。

制服のときよりも私服の時の方が、数段に華やかだ。

服のセンスが良いのも、その要因だろう。

普段のジーンズもキレイに穿きこなしてるけど、今日のような皮パンも魅力的だ。


「なぁ?コレってもしかしなくてもパーマ?」


と、腰まである私の髪を摘んでいる。


「そーだよぉ?中学の時からネ。学校じゃうるさいから編んでるけど….」

「やっぱ、おまえってすごいなっ」

「何が?」


それには答えずに洸哉は話を逸らした。


「なぁ、知ってるか?さっきからあっちのヤツらおまえのことずっと見てんだゼ!?オレすげー優越感だよ」


なぁんて、嬉しいこと言ってくれちゃって、けど鼻が高いのは私の方も同じ。


女の子達が羨ましそうにこっちを見てる、でもそれは内緒。

図に乗るから。


私達は人波に流されるように電車に乗り込み、今日の目的であるライブハウスへと足を向けた。



ライブハウスは熱に浮かされている、そんな印象だ。

女の子も男の子もみんな本当に楽しそうに笑いながらリズムをとってる。


何かのきっかけで狂い出しそうな、そんな雰囲気の中で…..。


洸哉の友達のバンドもイイ具合に壊れていた。


私は久しぶりに優等生じゃない自分で、楽しい時間を過ごしている。

そんな余韻をどっぷりと引きずったまま、ライブは終わりを迎えた。

出口へと流れていく人の波で、


「楽屋行くだろ?」


と、耳元で聞こえた洸哉の声に頷くと、迷子にならないように、と笑って私の手を掴み、関係者入口へと向かった。


こんなさりげなさも好きなうちのひとつであるのだけれど。

そのたびにドキドキさせられるのよね…。



ライブホールから一歩抜け出すと、そこは違う空間のように冷たいイメージだった。

楽屋に近づくとハイテンションの話し声が聞こえてくる。


洸哉は私の手を放し、開いている「FENCE」と書かれた楽屋のドアをノックしながら、誰の返事も待たずにさっさと楽屋の中へ足を踏み入れた。


「よぉ、お疲れ。良かったゼ」


の、洸哉のセリフに、洸哉、とか、サンキューの声が飛んでいる。

洸哉の横顔がニッと笑って言った。


「連れてきたゼ」


私を見て、手招きする。

3歩も進むと楽屋の中が一望できた。


私は、私が顔を出した時点で、きっとみんなが引くだろうと思っていた。

多分普通の時なら、その予想は正確な判断だと言えた。が、ハイテンションの彼らの反応は凄かった。


野宮(のみや)さんだ」

「氷の美人だ」

「イェーイ」


っておい。


盛り上がってる、ナンデ!?


面食らった私を洸哉が隣で笑っている。


「おまえの顔、ハトが豆鉄砲だよ」


それってまぬけな顔じゃないの?もしかしなくても…..。


「2人ともそんなところにいないで、入んなよ」


そう言ったのは、確かヴォーカルの人だったはずだ。

洸哉が簡単に一人ずつ紹介してくれた。


ヴォーカルのカズキ君。

ドラムのトシヤ君。

ギターのライ君。

ベースのマナト君。

キーボードのシゲル君。


全員K高の一年生ということだった。

ちなみにクラスはバラバラ。


へぇ、うちの学校にこんなバンドやってる人がいたんだ…。

なんて関心してたら、洸哉が、


「ホラ、美乃も挨拶くらいすれば?」


だなんて……。

いきなり振らないでよぉ~~~~。

ど、どどどうしよう!?

なんか言わなきゃ……。


「えっと、美乃です。ライブすごく楽しかった、呼んでくれてありがとう」


コレ以上ないっていうくらい、普通のコメントしか口から出なかった、から取り合えずニッコリ笑ってみた。


なぜか沈黙が起こった。

あらっ!?やっちゃいましたか?


どうしよぉ?って洸哉に助けを求めようと見上げたその時、


「かわい~~~~っ」


という、思いがけない一言。


えっ!?

ナニ!?


「カワイすぎる、美乃ちゃん」


美乃ちゃん!?


「美乃ちゃん、一緒に打ち上げ行こうよ」


カズキ君たちが口々に誘ってくれている。

何で歓迎されてるの私!?


戸惑う私をおもしろそうに見ていたのは、言うまでもなく洸哉ただ一人だった。


何だか、よく分からないままズルズルと打ち上げに引きずられていった。




「なぁ、美乃ちゃんって、いつから洸哉と付きあってんの?」


FENCE(さっきのバンドの名前)のメンバーのライ君がそう言った。


ここはライブハウスから10分くらいの所にあるファミレスである。


テーブルの上には大量の料理が乗っている。


よく洸哉とご飯を食べに行くから男の子がたくさん食べるのは分かっている、分かってはいたんだけど、ハンパじゃない。


しかもどんどん空になっていく。

すごいなぁ、なんて関心している所へそんな質問をされたのだ。


「えっ?なんで?」

「いやぁ、学校じゃ有名じゃん、洸哉と美乃ちゃんって」


えっ?有名なの?


「そーだよなぁ、コレくらい見栄えのいいカップルってちょっと他にはいないよなぁ」


と、シゲル君が頷く。


「洸哉はテレちゃって、親友だぁなんて言い張ってるけど」


と、ライ君は洸哉をからかいの眼差しで見ている。


「ちゃんと言ってくれよ、美乃。オレ達親友だってさ」


と、一生懸命な洸哉。


ちょっとそこまでムキになって否定しなくてもいいんじゃないの!?


まったく面白くないわ、なんて思いながらも、


「うん、私、洸哉と付き合ってないよ。洸哉の言う通り親友だよ」


今のところはね、と心の中で呟いたのを誰も知らない。


「なっ!だろ!?」


洸哉は勝ち誇ったように話している。

それでもみんなは納得がいかないらしく、


「洸哉、おまえ変なんじゃないの?」

「そーだよ、美乃ちゃんほどの美人ってちょっといないゼ!?」


そーだそーだ、もっと言ってやって、なんて私も心の中で思ってたりして…..。


みんなにイジられて、


「うるせーな、ほっとけよ」


と、横を向いてしまったのは洸哉だった。

そんな洸哉をみんなが楽しそうに、かわいいなぁなんて笑っていた。


「あのさ、全然話し変わるんだけどさ」


と、口を開いたのはトシヤ君だった。


「美乃ちゃんってそーゆーカッコもするんだねぇ」

「あっオレも思った」


とマナト君も私を見て言った。


「なんか美乃ちゃんってバリバリの優等生だからライブなんかに来るわけないって思ってたし、ましてや皮のジャケットにミニスカート、それにブーツなんて姿想像も出来なかったし…..」


そう、今日の私はそんな格好をしている。


「変?」


自分の服装を見下ろして言うと、


「イヤ、メチャメチャ似合ってる、ついでにその髪も」


手放しホメてもらうのもちょっとテレくさくて、小さくお礼を言った。


「オレ、これから学校で会ったら、美乃ちゃん見る目変わっちゃうかも」

「あっ、オレも。なんか親しみ覚えちゃうな」

「美乃ちゃ~~ん、とか言って話しかけちゃおうかな」


もうすっかり“美乃ちゃん”である。


そんなやり取りを聞いている洸哉が、嬉しそうに笑っていたのを誰も知りはしなかった。

楽しかった時間も時計の針が10時を回った時に終わりを告げた。


帰り道、私一人が反対方向だ。

駅で手を振って別れたつもりだったのに、隣には洸哉がいた。


「どうしたの?」

「何が?」


こっちが聞いたのに、聞き返されてしまった。


「何でこっちのホームにいるの?」

「バカか?おまえ送ってくに決まってんじゃん」

「えっ、いいよ。大丈夫だよ」


瞬間、頭をひとつ叩かれ、


「大丈夫なわけないだろっ、もう21時過ぎてんだゾ。こんな遅くに女の子一人で歩かせるわけにはいかねーだろうがっ」


と、怒鳴られてしまった。


「イヤ、でも反対方向なのに…..」


小さい声で呟くと、


「おまえはいいから、黙ってなさい」


命令口調の洸哉はぶっきらぼうの優しさをくれた。

私の中で洸哉への想いが少し大きくなった気がした。

毎日更新予定です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ