高峰洸哉9.願わくばハッピーエンドで
かなり前に書いたものですが、
データが出て来たので、
手直しして投稿していきます。
昨日の雨が嘘のように、キレイに晴れた今日、間違いなく遊園地日和だろう。
普通の恋人同士なら、もしくはこの間までのオレならば....。
だけど、今日のオレにはきっと、楽しむ余裕なんて少しもないに違いない。
もうすぐオレの時計は、7時40分を示そうとしている。
待ち合わせの時間まで、あと20分程度。
オレは今からこんな状態で、1日正常を保てるのだろうか....。
ふぅ~。
大きな深呼吸をした、その時、
「おはよう、天気よくて良かったね」
突然掛けられた声に驚いて振り返ると、美乃が笑っていた。
「おはよう、普段の行いがいいからな」
動揺を隠すために、オレは笑ってそう答えた。
どちらからともなく、歩き始めると、
「早かったね、だいぶ待ってたの?」
と、触れて欲しくないところを美乃に突つかれた。
「あ、いや、美乃の2分くらい前かな」
本当は15分くらい前からいたんだけどな。
「そっかぁ、私時間、間違えたのかと思っちゃった」
と、笑う美乃に、
「おまえも早かったじゃないか?」
と、訊ねられる側から訊ねる側へと回った。
どうして早かったのかと、聞かれるのが一番キツイからだ。
そう聞かれたら、オレは何て答えたらいい?
“緊張して”でも“落ち着かなくて”でもおかしいじゃないか。
なんで緊張してるの?とか深みにハマるのは、目に見えている。
それなら話題を美乃に振ったほうがいい。
話題を振られた美乃が困っていたことなど、オレは知る由もなかった。
「天気がいいから、待ってるのもいいかなぁって思って....。遊園地混んでそうだね、天気いーから」
オレは待ち合わせの話題から遊園地の話題になったことにホッとして、
「多分、混んでるだろうな」
と、答えた。
果たして、その予想には少しの狂いもなかった。
どのアトラクションも30分以上は軽く待つほどの混みようだ。
それでもオレ達はジェットコースターに乗り、キャアキャア叫ぶ美乃を見て、かわいいなぁなんて思ったり、コーヒーカップでは、目一杯目を回して楽しんでいる自分がいた。
朝の時点では、今日は絶対に楽しめないとふんでいた。
けれど考えてみれば、楽しめるのは当たり前だった。
好きな子と、美乃と一緒にいるのだから、楽しくて当たり前だと思った。
「ねぇ」
美乃に袖を引っ張られ、振り向くと、
「ちょっと休まない?並び疲れちゃった」
と、言われてここに来てからほとんど休憩してないことに気づいた。
「そーだな」
やっぱオレは精神が普通じゃないらしい。
いつもなら気づくハズのことなのに...。
オレ達は少し行ったところのベンチに座り、休憩にした。
とりあえず、美乃を座らせておいて、オレは飲み物を買いに走った。
自分用にコーラと美乃用にオレンジジュース(これは美乃が好きな銘柄だ)を買い、美乃のところへと戻った。
「美乃、ホラ。オレンジでいいよな?」
美乃の手にジュースを乗せてやると、
「ありがとう。お金...」
と、財布を出そうとする。
「いいよ、オレのおごり」
「ありがとう」
美乃はもう1度そう言って、ジュースを開けた。
二人でジュースを飲みながら、ぼんやり通りすぎる人を眺めていた。
「どんどん混んでくるなぁ、あと幾つアトラクション乗れるかな?美乃は何かコレだけは乗りたいっていうのあるか?」
美乃の希望を聞きつつ、オレの希望もプラスするつもりだった。
だから美乃の乗りたいものを聞いて驚いた。
「うーん、最後にのんびり、観覧車とか乗りたいかも」
と、言ったからだ。
オレの希望も観覧車だったからだ。
ベタだけど、そこで決めるつもりでいた。
美乃が観覧車って言うなら....。
オレは…あるアトラクションを指で差して言った。
「観覧車の前にアレに乗らない?」
と....どんなアトラクションかと言えば、フリーフォールの逆バージョンで、下から上にすごいスピードで昇るヤツだ。
「アレ乗ったら、観覧車乗ろーぜ。いいか?」
そう聞いたオレに美乃は頷いた。
並んだ行列には40分待ちの札が出ていた。
「40分待ちだって」
美乃はオレを見上げ、首を傾げて笑った。
「もしかして洸哉?自分で乗るって言ったのに怖いんじゃないの?」
「うるさいっ」
当たり前だろ!?オレは高所恐怖症なんだよっ。
えっ?じゃあなんで乗るって言ったかって?そりゃアレよ、アレ。
度胸付けみたいなもんだよ。
でも近くに来たら、ものすげー高ぇんだよ....失敗したかも....。
そんなオレを見て、美乃は、
「あっ、やっぱり怖いんだ。洸哉の弱虫くん」
と、楽しそうにオレをからかう。
オレは美乃を軽く睨んで、
「弱虫なんかじゃないぞっ、そういうこと言うのはこの口か?んっ?」
と言いながら、美乃の口を指で摘んだ。
美乃はイヤイヤをしながら、
「ん~~~~~~~~ん」
声にならない声を出している。
「もう言わないなら、しょうがないから放してやる」
オレのその言葉に美乃がコクコク頷いたので、指を放した。
その途端に、
「もぉ、何すんのよっ」
と、今にもオレを突き飛ばしそうな勢いで、半分マジで怒っている。
オレはそれを聞く耳持たずって顔を決めこんだら、オレ達の周りの人が笑っていた。
美乃は恥ずかしそうに、口を尖らせていた。
口には出せないけれど、やっぱりかわいいなぁと、笑ってしまいたくなった。
40分並んだアトラクションは、度胸付けどころか度肝を抜かれる速さだった。
もう二度と、オレが乗らないことは言うまでもないな。
それから、オレ達はゆっくりと、観覧車乗り場へと向かった。
観覧車は比較的空いていて、20分程度待てば乗ることが出来た。
ここからが、勝負だった。
ここからが、ある意味今日のメインだからだ。
オレ達は赤い観覧車に乗り込んだ。
今までのようにオレも、もう平静を保てきれなくなってきている。
それは3分という短い限られた時間の中で、決めなければいけないという思いが強くあるからだ。
そんなオレよりも先に、美乃が口を開いた。
「楽しかったね、今日はありがとう」
美乃の口から楽しかったという言葉を聞いて、オレはかなりホッとしていたし、背中を押してもらった気持ちにもなっていた。
「オレも楽しかったから、また一緒に来れたらいいな」
これはかなり、本音だった。
出来ることならば、最悪の結果だけは避けたかった。
これから先、口も聞けなくなるような結果だけは....。
美乃は、オレの言葉に対しての笑顔なのか、とにかく笑いながら、
「そうだね、来れたらいいね」
と、オレに微かな光りを与える言葉をくれた。
今、この瞬間を逃したら、オレはいつ美乃に言うんだ?
美乃のくれた一言で、突然オレは決心した。
...言うぞ、言う。
言えよ、思いきって早く...何やってんだよ、言えよっ。
「あのさ」
美乃がふっと、顔を上げた。
「あのさ、オレさ....実は......」
怖ぇーよぉ。
絶対、今オレの脈拍とかおかしいぞ。
っていうか、思考回路もおかしいって、脈拍なんて何の脈絡もないことを.....。
一瞬の沈黙が落ちる。
「えっ!?ナニ?どうしたの?」
「あ、うん。オレ、おまえのこと....」
美乃の瞳が、オレから1度外れて、もう1度オレの目を見たときに、視線がもう外れないように美乃を見つめたオレは、覚悟を決めて告げた。
「好きだ」
という、すべてを崩してしまうかも知れない、たった3文字の言葉を.....。
瞬間、美乃の動きが止まった。
それは、何を意味するのか、オレにはわからない。
今はただ待つしかない.....。
どのくらいの時間をオレは、息を詰めていたのか....。
美乃が瞬きをして、時間が動き出した気がした。
オレの時間が動き出して、だけどまだ美乃だけが止まったままでいる気がした。
オレは思わず、美乃が息もしていないように思えて、声を掛けた。
「美乃?聞こえてる?」
美乃はぎこちなく頷いて、口を開いた。
「......洸哉」
オレの名前を呼んだ美乃の声は、少し掠れていた。
「私、ね。ずっと、洸哉のことだけ見てきたんだよ、ずっと。洸哉………好きだよ」
何が起きたのかすぐにはわからなくて、だけど瞳にいっぱいの涙を溜めている美乃を見て、美乃のくれた好きの言葉が、胸の中で渦巻いて、やっとオレ達が親友から卒業できたことに、気がついた。
オレは嬉しくて、美乃が愛おしくてたまらなくて、どうしても美乃に触れたくて....。
少しだけ、微かに触れるだけのキスを美乃にした。
オレの中で、それは誓いのキスだった。
ずっとずっと、美乃を守っていけるように、支えていけるように....。
月曜日、学校へ着くなり一樹が現れた。
「よぉ、アレは役に立ったか?」
と、いつもいきなり本題に入るやつだよなぁ、せめて前フリをくれ、前フリを...。
「あぁ、まぁな」
オレが一樹の顔も見ずに答えた。
これはもちろん照れくさいからに他ならないのだけど...。
一樹はつまらなさそうに呟いて、おはようと手を振っている。
誰に振ってるんだろうと思って、すぐに美乃だと気づいた。
オレ達二人が揃ったところで、一樹は口を開いて、こんなことを言った。
「洸哉も美乃ちゃんも約束守ったかい?」
と.....。
「美乃も?」
「洸哉もって?」
オレの声に美乃の声が重なって、思わず顔を見合わせた。
お互いに少しイヤぁな顔をして、一樹を睨んだ。
一樹はイタズラが成功した時の子供みたいに笑って、美乃にウインクをしている。
そんな一樹を見て、
「あっ?もしかして私のことハメた?」
と聞く美乃に、ニッと笑った一樹が言う。
「半分正解。美乃ちゃんだけじゃなく、洸哉のこともハメたから」
......やられた。オレの心情はそうだった。
美乃は一樹にどういうことか説明を求めている。
「つまり、二人ともお互いのこと好きなのに、相手は自分のこと親友としか思ってない、なんて思ってるから気の毒というか、鈍いというか、とにかくじれったくて......ここはひとつオレが一肌脱いでやろうと、色々考えたワケよ。それでどっちかが、賭けに負けてくれれば、上手くいくのは分かってたからさ。けど、二人とも負けてくれるとはねぇ」
と、オレ達二人を見比べて笑っている。
ちぇっ、やっぱり一樹の方が1枚も2枚も上手なんじゃねぇかよっ。
おもしろくねぇなぁ。
「おまえら、ホント似てるよ。似合いのカップルだよ」
と、笑ったまま、一樹は教室から消えていった。
オレは一樹の消えていったドアから、視線を外さないまま、
「じゃあ、何?オレ達一樹に踊らされてたワケ?」
と、ため息をついた。
ポロッとこぼれ落ちた独り言のような呟きに、美乃が言葉を続けた。
「そういうことになるのかな?ケド感謝だよね?アレがなかったら、きっとずっと親友でごまかしてたよね」
その声に反応して美乃を見ると、美乃もオレを見ていた。
あぁ、それはかなりの確率で頷けるな。
「んっ、そのうち身動き取れなくなって、最悪の状態に陥ってたかもな」
「そうだねぇ、最近すでにちょっとそんなカンジだったしねぇ」
確かに.....。
原因の8割はオレにあるような気がするけどな。
それにしても、一樹に感謝しなくちゃいけないんだよなぁ...。
でもすっげー悔しくもあるんだよなぁ。
いつもいつもアイツには、やられっぱなしだし....。
だけどまぁ、今回のことは、
「とりあえずは、終わりよければすべて良しってことにしておくか」
「うん」
オレ達に笑顔がこぼれた。
大切な誰かのために、何かを自分がしてあげられる幸せ。
押しつけない想いの優しさ。
一番大切だと思える人に、巡り逢えた奇跡。
上手く言えないけれど、君だけが、いつも輝く.....。
fin
最後までお付き合いありがとうございました。




