高峰洸哉6.今日は何の日だよ?
かなり前に書いたものですが、
データが出て来たので、
手直しして投稿していきます。
「おーい、何買うんだよ。いいかげんに教えろよ」
さんざん歩き回って、未だ何ひとつ買い物をしない美乃に、オレはシビレをきらした。
ホントに見てるだけで買おうとしないのだ。
何を買うのか聞いても、この後に及んで美乃はまだ教えようとはしない。
3時間も歩けば、いいかげんオレだって勘弁してくれって気持ちにもなるさ。
それなのに、美乃の言った一言で事態は更に悪化した。
「ゴメン、実はまだ決まってないんだ」
「ナニィー!?」
思わず人の目なんか忘れて声をあげた。
「じゃあ、なにか?ただウロウロ歩き回ってただけかよ」
と、オレがキレてもおかしくない。
「ゴメン、色々見てるうちに決まると思ってたんだけど、全然反応ないし.....」
美乃の声は、申し訳なさそうに小さくなっている。
「反応ってなんだよったく」
まだ全然納得のいかないオレは、文句を並べていた。
きっと顔も思いっきり不機嫌ヅラに違いない。
そんなオレに向かって、美乃はまるで関係のない質問をふってきた。
「さて、ここで問題です。今日は何の日でしょう?」
「何だよ、イキナリ。今度はクイズかよ。えーっと?今日は何日だよ!?」
すり替わった話題の先の意外さに、毒気を抜かれて答えると、美乃はため息をついて言った。
って、おまえがため息つくなよっ、オレがつきたいよっ。
「今日は10月28日だよ」
ふぅ~ん、10月28日ねぇ…って、10月28日!?
「もしかして、オレの誕生日!?」
「そうだよ、忘れてたんでしょ?」
「キレイさっぱりっ」
もののみごとに忘れてた。
「やっぱりねぇ.....」
って、ことは....?
「もしかして、買い物ってオレのプレゼントだったりするんだ?ちゃんとオレの誕生日覚えててくれたんだ。オレは嬉しいっ」
ホント、美乃っていいヤツだよなぁ、けどそうならそうと言ってくれればいいのにな。
そしたら仏頂面なんかしないで、3時間だろうが歩いたのに。
.....かなりわかりやすいヤツだなぁ、オレって...。
自分で苦笑いを浮かべたのは言うまでもない。
オレ達はもう1度アチコチを見て回った。さっきよりはかなり楽しい気分で。
結局、Tシャツをプレゼントしてもらった。
まっ、それに落ち着くまでに、オレは何度美乃にツッコまれたことだろう、マジメに選べと....。
そんなことも楽しみながら、オレ達はそのあとかなり遅めのランチを取った。
いつものことだけど、美乃と出掛けた時オレは家の前まで送ることにしている。
美乃は大丈夫一人で帰れると言うが、オレは送ることを止めなかった。
それは昼間でも夜でも同じことだった。
今日も同じように家まで送り、じゃあなと来た道を戻ろうとした時、美乃に呼び止められた。
こんなことは、初めてのことだった。
「何?」
と、オレが振り向くのを待って、
「ちょっと寄っていかない?」
美乃は家を指差し、言った。
今までにない事態に、オレは焦った。
かなり焦って言った。
「イヤ、でも.....。やっぱ帰るよ」
逃げたもん勝ちだ、ふとそう思った。
何から逃げるのかなんてわからなかったけど、このままここにいたら危険だと思った。
危険!?
何が?美乃が....?
わからない...でも...このままここにいちゃダメだ、何かがそう告げる。
走り出そうとするオレに美乃の声が重なる。
「待って、お願いだから。見せたいものがあるんだ、だから上がっていって」
そんなセリフの後、美乃に“ねっ”なんて可愛くお願いされちゃった日には、この世の中の男に、それを振りきるだけの根性はねぇだろう。
そして、それはオレにも言えることだった。
あの笑顔には、きっと誰も勝てないぜ.....。
「......じゃあ、少しだけ......」
と、頷いてしまったオレの背中を美乃は押す。
美乃の部屋の前で、オレの足は止まった。理由なんか知らない。
だけど、足は動かなくなった。
そんなオレに、
「何やってるのよ、早く入って、その辺に座ってて」
と、美乃は無理矢理オレを部屋に押し込んで、すぐ戻ると言って部屋から出ていった。
部屋に残されたオレは、正直困った。
だって、そうだろう!?
女の子の部屋なんか入ったことないんだから。
それにココは普段美乃が生活してる部屋だろう!?
そう思うと何となく、どこを見ていいのかわからないし、落ち着かない。
ジロジロ人の部屋を見るのは、失礼だろ!?
しかも女の子の部屋を....。
だけど心のどこかで、じっくり見たがってる、知りたがってるオレがいるのも本当だった。
気にならないと言えばウソになる。
ただこれが美乃の部屋だからなのか、それとも他の女の子の部屋でも、そう思うのかはわからなかった。
でもたぶん、美乃以外の女の子の部屋には、入らないだろうなという気は、漠然と持っていた。
突然、ガチャっとドアが開き、美乃が何かを抱えて戻ってきた。
オレは思わず呟いていた。
「なぁ、おまえの部屋ってなんかかわいいなぁ、やっぱ女の子だなぁ」
結局、部屋を見回してしまったからこその呟きだった。
「何よ、突然。それよりハイこれ。開けてみてよ」
と、オレに箱を手渡してくれた。
首を捻りながら、オレが箱を開けるとそこからチョコレートケーキが顔を覗かせた。
「改めて、ハッピーバースディ洸哉洸哉」
美乃はそう言って微笑む、オレの中に美乃の笑顔が広がった。
「もしかして、コレっておまえの手作りなワケ?」
「そうだよ」
と、別にたいしたことじゃないと言わんばかりの口調で言う。
美乃にとっては実際たいしたことじゃないのかも知れないけど、オレはどこかでオレだけが特別だと思いたがってる、そんな自分がいることに気がついた。
「なんか、オレすごく嬉しいよ。サンキューな美乃」
色んな感情が沸き起こる心を隠して、オレは美乃の家を出た後、そのまま一樹のところへと直行した。
とてもこのまま家に帰る気にはなれなかった....。
毎日更新予定です。
よろしくお願いします。




