高峰洸哉5.イベントじゃなくてハプニングだろ?
かなり前に書いたものですが、
データが出て来たので、
手直しして投稿していきます。
翌日、つまり美乃との約束の前日。
オレにちょっとしたイベントが起こった。
いや、ハプニングの方が正解かも?
いつもなら、土曜日だから午前授業で終わりだし、美乃とメシでも食いに行くところなのだが、イヤ、オレは今日もそのつもりでいたんだけど、美乃のヤツ、今日は用事があるとかで速攻で帰っていった。
「どうするかなぁ、一人でメシ食いに行くのもなんだしなぁ....。あっ一樹...はダメか、バンドの練習だもんな」
オレはブツブツ独り言を呟きながら、教室を出た。
「しゃーねぇ、帰るか」
学校を出て、駅に向かう途中で、オレは不意に呼び止められた。
「高峰くん」
と....。
声の方へ振り返ると、見知らぬだけど、明らかに同じ学校の美乃よりも10cmは背の低い、美人というよりは、かわいいという感じの女の子が一人でそこに立っていた。
「えっと....?」
誰だっけ?知り合いじゃねぇよな?
戸惑うオレに、相手は、
「はじめまして、笠井美佐子です」
と、名乗った。
あっ、やっぱ初対面だよな、良かった。忘れてたわけじゃなくて....。
けど、なんで初対面なのに、オレに声を掛けたんだ?この子は...?
わからなくたって、しょうがないだろ?
オレの今までの人生で、こういうシチュエーションは存在しなかったんだから。
オレが黙ったままでいると、彼女は真っ赤な顔をして言ったんだ。
「好きです」
と…。
はぁ!?
オレは驚きのあまり、考えるよりも先に、
「なんで!?」
という、告白のあとには、似つかわしくない言葉を発していた。
なんで!?という、非常にも冷たく感じる、その言葉を告げられた彼女は泣きそうな顔になっている。
やべぇ...泣かれたら困る。
「いや、だから何でオレなの?」
さっきよりはかなり柔らかい口調で聞いた。
彼女は俯いてしまっていた顔を何とか上げ、オレを見た。
「....なんでって、高峰くんカッコイイし....」
何言ってんだ!?
「はぁ!?オレがカッコイイって!?聞いたことねぇなぁ」
思わず笑っちゃったオレに、彼女はすごい勢いで反撃してきた。
「高峰くんはカッコイイですっ。1年生の女の子の間ではすごい人気あるんですっ」
「ウっソだろ!?オレが女の子に人気あるだなんて、モテたことないよ、オレ」
はなから本気にしてないオレに、彼女が小さく何かを言った。
聞き取れなかったオレが、もう一度促すと、
「野宮さんがいるから....」
と、今度はわりとハッキリと聞こえた。
「美乃!?美乃がいるから何!?」
全然さっきから話しの見えないオレに、彼女は説明を付け加えた。
「みんな、高峰くんと野宮さんが付き合ってると思ってるから....だから誰もアクションを起こさないんです。野宮さんじゃ敵わないから」
んっ!?
これってこの間、雷が言ってたな、有名とかなんとか....。
あれがこのことか?
それじゃ、何でこの子はオレに告白なんかしてきたんだろう....?
オレがその疑問を、そのまま口にすると、
「この間、偶然聞いちゃったんです。高峰くんと佐久間くんが話してるのを....。高峰くんが野宮さんとは、親友だって話してるのを......。だから....」
そういうことか....。
「ダメですか?私と付き合ってもらえませんか?」
ハッキリと決断を迫られて、オレは困った。
別に返事を迷ったわけじゃない。
ただ初めてオレを好きだと言ってくれた相手だったから、不用意に傷つけたくなかった。
だけど、ここで返事を濁してもしょうがないんだ。
正直に告げることが、優しさの場合もある、たぶん....。
オレは、彼女の目を見て、
「好きだって言ってくれてありがとう。だけどオレ、今は美乃のことほっとけないから」
深く考えずにこぼれ落ちた言葉が、何よりも真実であることにオレは気づいてなかった。
オレがどれだけ美乃のことを大事に思っているか、オレはまだ、自分でわかってなかった。
ただ、オレのこの想いに、オレを好きだと言った彼女だけが気づいていた。
そして、彼女は黙ったまま笑顔で、オレに背を向けて歩き出した。
毎日更新予定です。
よろしくお願いします。




