高峰洸哉4.ハラが鳴っては何も出来ん
かなり前に書いたものですが、
データが出て来たので、
手直しして投稿していきます。
翌日、オレが自分の席で、クラスメートと話しをしているときに、いつもより少し遅れて美乃が登校してきた。
「よう、美乃おはよう」
オレは美乃に声を掛け、美乃の返事を待ってから、クラスメートとの話しに戻った。
クラスのヤツらも美乃のことは気にはなるのだが、やっぱり話しかけるのを踏み止まる。
美乃も学校では、ポーカーフェイスを崩さない。
どうしたもんかな....。
オレは誰にも気づかれないように、ため息をひとつついた。
予鈴がなり、みんな自分の席へと戻り始める。
オレは美乃の方に顔を向け、
「昨日サンキューな、アイツらメチャメチャ喜んでたしな」
まっ、アイツらよりも美乃が楽しめたみたいだから、そっちの方が大きいかな。
オレの心情的には。
美乃は首を横に振って言った。
「私こそありがとね。家まで送ってくれて」
はぁ、オレに対してはこんなに素直なのに、なんで他の人には、あぁなのかね。
オレは何も言わずに、少しだけ笑った。
美乃は少しの間の後に、そういえばと言葉を続けた。
「今、玄関でカズキ君と会ったよ」
「あっマジ?なんか言ってた?」
実は昨日の真夜中に近い時間に一樹から電話が来ていた。
話題は主に美乃のことだった。
もちろんアイツらは、美乃に対してもう何のこだわりもない。
“氷の美人”と言われてるほどに冷たくもないし、怖くもない美乃のことを自分たちの友達として、認識してくれている。
ただひとつ問題なのは、一樹が相変わらずオレが美乃を好きだと思っている、ということだった。
まさか、一樹のヤツ美乃に変なこと言ってねーだろうな。
そんなオレの危惧は必要なかった。
「またライブ来てよって言われた、今度の時も洸哉誘ってよ。昨日もすごく楽しかったし」
と、美乃は笑っていた。
「おう、じゃあまた行くか」
ホッとしてそう言ったと同時に担任が教室に現れた。
あっやべぇ。
思った瞬間にハラが鳴った。
さっきから気にしている時計の針は、まだ昼休みの時間を指さない。
早く授業終わってくれよぉ、マジで.....。
「ハラ減ったぁ」
オレのハラが鳴った時点で、美乃はくすくすと笑っている。
聞こえたらしい、ちぇっ。
「美乃、昼メシ何?」
一応授業中なので、小声で聞く。
「私?今日は学食行くつもりだけど?」
おぅ、そりゃ好都合だ。
「じゃあさ、一緒しねぇ?アイツらも一緒だけど」
「いーの?嬉しいけど、私が行くとしらけるんじゃない?昨日はみんなハイだったから普通にしてくれてたけど」
やっぱりまだ気にしてんのか、そんな必要ねぇんだけどな。
「気にすんなって、そーなったらフォローしてやるから。なんてな、ホント言うと今日もアイツらの要望だから大丈夫なんだけど」
オレがそう言うと、美乃はあからさまにホッとした。
こいつが本当の意味で、人と向き合うのはもう少し時間がかかりそうだな。
頭ではそんなことを考えているにも拘わらず、その間中ずっとオレのハラの虫は盛大に鳴き続けた。
ツライぜ.....。
ようやく授業を終えたオレ達は、教室をあとにし、学食へと足を運んだ。
しっかし、いつも思うけどオレの教室から学食って遠いよなぁ。
学食に着く頃には、いつも席がないんだよ。
まぁ今日はアイツらがいるから大丈夫だろうけど。
学食へ着くと、予想通り人が溢れていた。空いてる席なんかあったもんじゃない。
一樹達はどこだ?
キョロキョロしていると、向こうで手を振っている一樹を発見した。
オレは美乃を座らせて、メシを買いに人ごみをムリヤリ突破した。
掻き分けた先に、すっかり顔なじみになったおばちゃんがいた。
昼メシを頼んだオレにおばちゃんは、あら、いつもより多いわね、なんて笑いながら話しかけてきた。
まさか、これ全部オレ一人で食うと思ってんじゃないだろうな?
いくらなんでも、こんなに食えるか。
おばちゃんに、2人分だと説明して、みんなのいる席へと戻った。
途中で、アイツらと美乃が楽しそうに話してるが見えた。
オレはそれを見て嬉しい気持ちと、それ以外の気持ちに気づき、それ以外の気持ちが何なのか、その時のオレにはわからなかった。
だから、オレはそんな気持ちに気づかなかったフリをして、勢いよく声を掛けた。
「なぁーにオレ抜きで盛り上がってんだよ」
振り向いた美乃に、ほらっと、うどんの載ったおぼんを渡してやる。
オレは自分のおぼんをテーブルに置きながら、美乃の隣に座った。
美乃はおぼんを見て、次にオレの顔を見て、目をまんまるにして言った。
「お昼からそんなに食べるの!?」
そんなにって、たかがカレーライスにラーメンにサラダじゃねぇかよ。普通だろ!?
一樹達は驚く美乃を面白がって、色々入れ知恵をしている。
「信じられない....」
美乃は無意識っぽい感じでポツリと言葉を落とした。
失礼なヤツだな、信じられないとか言うなよっ。
「いーんだ、オレはまだ成長期なんだ」
そうだ、だからこれくらいは普通だ、そう言いたかっただけのオレに、美乃はあぁそうか、とポンと手をひとつ叩いて、なんて言ったと思う!?
こともあろうに、
「横に成長期ってこと?」
って言いやがった。
オレの動きがその一言で止まった。気にしてることを.....。
最近ちょっと縦に伸びなくなってきたなとは、オレも思ってはいたんだ。
あとは、横に....なのかって....。
それをよくも.....。
美乃のセリフのあと、一瞬の沈黙が流れ、そのあとにやってきたのは、大爆笑だった。
もちろんオレ以外全員の。
なんだよ、昨日からオレこんな役回りばっかりじゃねぇかっ。
おもしろくねぇ、すっげーおもしろくねぇ。
くだらない話しをしながら、駅までの帰り道をオレは美乃と歩いていた。
特に約束があるわけでもないけれど、当たり前のようにいつも並んで歩いている。
すれ違う男どもが美乃に見惚れるのも同じ。
横にいるオレを見て、ため息をつくのも同じ。
ただなんで、オレを見てため息をつくのかが、いまいち不明なんだけどな。
あっもしかして、美乃の彼氏だと思われてるってことか?
しかもオレ、カッコよくねぇしな。
なんで、おまえみたいなヤツがってことなのか?それなら何となく納得いくかな。
バカみたいなことを考えながら、歩いていたら、突然美乃が声をあげた。
いや、別に悲鳴とかじゃなくて、言葉をオレに投げかけてきた。
「そうだ、明後日の日曜日って、洸哉なんか予定ある?」
美乃はオレを見上げながら、唐突に聞いてきた。
「オレ?ヒマヒマ」
めずらしいなぁ。美乃がオレの予定を聞いてくるなんて。
普段はオレが美乃を連れ出して、遊びに行くというパターンだからだ。
美乃はオレのヒマの言葉をきいて、少し嬉しそう(これはあくまでオレの判断ってこと)に、
「買い物、付き合ってくれないかなぁ?」
いつもと違って、少し弱気な美乃がなんか可愛く見えて、思わず、
「別にいいけど?昼メシ奢ってくれんなら」
と、オチャラケてしまった。
美乃は少し脱力気味に、ため息をついて、
「O.K。ご馳走しましょう」
と、笑った。
言ってみるもんだなぁ、なんて思いながら、オレはガッツポーズをしてみせた。
「ケド、オレより女の子の方がいいんじゃないのか?買い物って」
オレじゃ役に立たないだろう、そう思っているオレに美乃は、
「いーのいーの、別に自分のもの買いに行くわけじゃないから」
って、んっ!?あっ!?
「そーなの?何買うの?誰の買うの?」
からかい気味に顔を覗き込むオレに対して、美乃は、
「ナイショ」
その一言で済ませやがった。
そのあと、オレが何を聞いても、その話題には笑うだけで答えてくれなかった。
ちぇっなんだよ。教えてくれたっていーじゃねーか。
毎日更新予定です。
よろしくお願いします。




