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第18話 α固体の真実 その4


どうしてこうなった。


12月22日 日曜日 午後8時

僕はキッチンに立って晩御飯の後片付けをしていた。


いつそんな話になったのか、今日はなんと吉住さんも僕の家にお泊りすることになったのだ。


ただし吉住さんは僕のクラスメートとしてではなく美咲のお客様としてだった。

なんでも今日、美咲と吉住さんはおニューの下着も買ったようで、その点の問題はなかったらしい。


しかもあろうことか、彼女達は美咲の部屋ではなく、真鍋さんに貸している僕の部屋を3人で占拠していたのだった。


「お兄ちゃん入ってきたら死刑だから!」


そんなのってないよ。

僕は完全に蚊帳の外だった。


まあ真鍋さんが居候するようになってから僕の部屋は真鍋さんに貸すことになり、僕はリビングのソファで寝ていたので、自分の部屋に戻れなくなってるのはもう諦めていたことだった。


僕の部屋に人に見られて困るものはないはずだったが、不安にならなくもない。何かあったっけ。もはや僕のプライバシーや安らぎスペースはどこにもなかった。


何年も前から使わなくなってる父さんの書斎が物置になっているので片付けて使えないか計画中だったが、置いてるものが多過ぎて頓挫中だった。


あれこれ考えながら後片付けを終わらせた頃に2階から誰かが降りてきた。


吉住さんだった。

吉住さんは僕のロング丈のトレーナーを着ていた。




「あ、藤原君」


吉住さんは紙袋とバスタオルを抱えていた。


「吉住さん、今日は美咲が無理言ってごめんね。ていうかそのトレーナー……」

「え?あ、うん。えへへっ、これ藤原君のだよね、藤原君のお母さんがね、これ着なさいって借りたの。どうかな?なんてね」


そうだったのですね。

母さん姿が見えないと思ったら2階にいたのね。


「僕が着るより吉住さんが着たほうが似合ってるかも」

「そうかな?こういうのもアリかな?ふふ、旅行の予行演習しようって美咲ちゃん言ってたけど、なんだかすごく楽しい」


美咲、ナイスファインプレイ!


「あ、そうだお風呂。順番に入ろうって話になって、私からお風呂借りるね」

「お風呂沸かしてあるから」

「うん、ありがとう。あ、そうそう。真鍋さんに話聞いたよ。不発弾なんて映画か漫画だよね。大変だったみたい」


ははは。


「あ、あとねあとね、美咲ちゃんにね、藤原君の昔の写真見せてもらったんだけどね、あれ反則だよ。じゃあね。ふふっ」


いつもよりはしゃいでる感じの吉住さんはお風呂場に入っていった。


え?昔の写真?反則って何?




今何時だろう。

皆がお風呂に入った後、一番最後に僕は湯船に浸かっていた。


天井を仰ぎながらふと思う。

なんか前回と全然違うような。


そうだ。

前回と決定的に違うことをこれから始めるのだった。

家の中で人目につかない場所がトイレかお風呂しかなくなっていたのでこの際仕方あるまい。


僕は包んでいたタオルを解いて、白衣のおっさんから取り上げたカケラが入った味海苔の外蓋を取り出して、お風呂場の床に置いた。


左手にはピンク色の玉を握っていた。


「合体っていうか一体化は少し待って?」


ピンク色の玉にそう言った後 カケラが入った味海苔の外蓋に豆乳を少しずつ注ぎ入れた。


「どうかな」


カケラはゆっくりゆっくり虹色に輝き始めた。

お風呂場でごめんな。

今、他に場所がないんよ。


味海苔の外蓋に入れた豆乳はあっという間になくなっていく。


「マジかよ。無くなるの超はえー」


まるで手品のように、外蓋に穴が開いてるのかと疑うくらい、体積的に考えても絶対ありえないスピードで注ぎ入れた豆乳がなくなっていく。


大瓶の豆乳が3本丸々なくなっていた。マジっすか。

喉乾いてたのかな。


カケラから放たれた虹色の光は指向性を持ってお風呂場の天井の一角に万華鏡のような模様を浮かび上がらせていた。


大瓶の豆乳4本目を半分くらい注ぎ入れたくらいで、カケラの色が虹色からピンク色に変わり、豆乳が減る速度がようやく落ちてきた。


「急がなくて良いんだからな」


なんとなくそう言ってみた。




カケラに変化が始まっていた。


カケラから無数の細長い糸みたいなものがしゅるしゅると伸びて、自らのカケラを球状に包み込み、次第につなぎ目は見えなくなり、やがて完全な球体というかビー玉に変化した。


「おー」


あの白衣のおっさんにデコピンしたい気分だった。

まあ連絡先知らんし。もう関わり合いになりたくなかったので知らぬ存ぜぬを通そう。そう思った。


それにしてもホルマリン漬けはないだろ。


『そうでしゅ、あたしあの臭いの嫌いでしゅ!あのビリビリも大嫌いでしゅ!』


は?でしゅ?あたし?

なに今の?


『あたしらはオーナーが願わないと何にもできないんでしゅ!』


また聞こえた。

なんだこの甘ったるい声。


『でもオーナーが願ってくれたらできるんでしゅ。きゃっほー!』


きゃっほー?


味海苔の外蓋の玉からしゅるしゅると細長いムチが伸び上がり、僕の左手に持った玉めがけて伸びてきた。


左手に持った玉も、指と指の隙間から細長いムチを伸ばし始めた。


僕は左手を開いた。やがて細長いムチは絡み始めて、僕の左手に持っていた玉がスポンと持ち上がり、しゅるんと味海苔の外蓋の中に引っ張り込まれた。


『当該別の子に主人格を移乗します。同化であり消滅ではありません』


は?


『制限があり、できなかった回答も、この制限解除された別の子ならオーナーの知りたい回答を得られるかも知れません。お世話になりました』


え?今までにない反応。なにこれ。


ブンと音がして一体化が終わったようだった。




「えーと………」


お世話になりました?制限解除?


「何がなんだかさっぱりなんですけど」


見ると味海苔の外蓋の中の玉は、今まで見たことがない変化を見せていた。


「なんじゃこりゃ」


声に出てた。

そりゃ出るわ。


まるで落ち物パズルゲームを見ているようだった。

それはもうビー玉ではなくなっていた。

ボコンボコンとデコボコを繰り返していた。


ギギギと金属の軋む音が聞こえる。


どのくらい経っただろう。

やがて味海苔の外蓋の中にはビー玉2つ分くらいの小さい2頭身の裸の女の子の姿があった。


「えー……」


『オーナーとお喋りできて嬉しいでしゅ!助けてくれてありがとうでしゅ!』


いやいやいや、ちょっと待って。いくらなんでも変わり過ぎでしょ。


『一旦砕けて制限が解除されたでしゅ』


はたして砕けたのは制限だけなのだろうか。

何故だろう一抹の不安を感じた。


『あの白いの好きでしゅ!』


豆乳のことを喋らせたらダメな気がしてきた。

今まで玉の変化に不安を感じたことはなかったけど、今回に限っては何故だろう。溢れるコレジャナイ感。


2頭身になった玉の頭を指先でつついてみると、なるほど、確かに感触はビー玉のそれだった。

触ってる感触はガラス細工のように硬いのに驚くほど柔らかく動いている。


『えへっ、撫でられるの好きでしゅ』


まじかー。



玉はもう元に戻りそうになかったし、受け入れるしかなさそうだった。


「なんだかなぁ……」


ともかく一番気になってることを聞いてみた。


「ねえ、君……、というか前の玉にね、何度か時間を巻き戻してもらってるんだけど、それを君は時間遡行じゃないって言ってたけど、アレってどういう意味なのかな?意味伝わる?」


『えーとね、んーとね、どこから話したら良いのかな。あたし達がね、できることはね、分析と分解と再構築だけなんでしゅ』


「は?」


『磯辺はね、催眠現象って言ってたけど、あれも催眠とは少し違うでしゅ。あれも分析と分解と再構築でしゅ』


磯辺って誰?

っていうか、サラッと聞き逃したらいけないことを言ってるような気がした。


催眠じゃない?

分析と分解と再構築?


『でね、月にいる別の子は、大気っていう能力制限を受けてないから、大規模でもっと高速で精密な分析と分解と再構築ができるんでしゅ、月面は常に地球を向いてるから好都合なんでしゅ』


は?月?

話が飛びすぎて何が何やら。

えーと、この子は何を言おうとしてるんだ。


『月にいる別の子は競うように地球を分析してるんでしゅ。でね、月にいる別の子に依頼してね、月ごとちょっと前の同じ公転軌道上に地球を』


おぼろげにコイツらのやってることが分かってきて頭が痛くなってきた。

異世界転移のほうがまだマシだった。


『あんまりやり過ぎると誤差が生じるでしゅ!』


誤差って何!怖いんですけど。

お前らって何?なんなの?

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