ヤンキー
あれはたしか中学2年のときだったかな。
僕のことをからかってくるヤンキーがいたんだよね。
そいつは野球部に入っててさ、身長も185近くあってガタイもいいから周りもビビってて誰も反抗できないんだ。
それでさ、俺が学校帰りに多摩川沿いを歩いてるとそいつが身長150もないようなハムスターみたいな小動物系女の子と手繋いで花火を見てたんだ。
えー!って思って。
僕はそれを見てね、まず驚いたのとバレたら冗談抜きで殺されると思ったわけ。
でもそいつにからかわれてる陰キャ仲間の奴らにLINEで送ってやろうと思ってそいつの写真を撮ったわけよ。
そしたら、
「パシャッ」
ってシャッター音が鳴っちゃったんだ。
やばい。
逃げようと身体が動く前にそいつとは目が合ってたんだ。
僕をネズミで例えるならそいつはネコ科の頂点ライオン。ハムスターをたくましい体で優しく包み込んであげる百獣の王。
そんな人のことをコソコソ盗撮するドブネズミのような僕が窮鼠猫を噛むなんてわけにはいかず。
何もできずただ震えて怯えてると、ヤンキーが僕の目を見てこう言った。
「許してくれ、今までのことは謝るから写真を消してくれ。」
なんと、ここでドブネズミがカピバラに、ライオンがマンチカンになったじゃないか。
立場逆転だ。これは行くしかない。今までそいつにいじめられてた僕はそいつにある条件を飲むように言った。
「これを消す代わりに明日から僕はお前にいじめってほどでもないけど嫌なことをしてやる。」って伝えたんだ。
その翌日から僕は、そいつの新品の消しゴムをその角を削るように使ったり、上履きを霧吹きで湿らせたり、そいつが部活で使う汗拭きタオルをクラスのカバみたいな顔してる柔道部の女子に使わせたりして、そいつの精神を日に日にすり減らすようなことをしていったんだ。
すると1か月ぐらい経ったある日、ヤンキーが俺のところに来て、こう言ったんだ。
「実は、俺彼女と別れたんだ。お前に嫌なことしてたような俺の性格がダメだったみたい。本当にすまなかった。」
って言ってきたんだ。
俺は心の中で「よっしゃーー!!」って叫び散らかしたい気分だったが、さすがに落ち込んでるようだったのでもう陰湿な嫌がらせはやめようと思ったんだ。そしてその子との思い出の写真を燃やすから付き合えって言って、今のデジタル時代にどんな失恋の吹っ切れ方だよと思ったんだけどまあ口にしなかった。
放課後、写真を燃やしに近所の公園まで行ってヤンキーが写真をカバンから取り出したとき、
そこにはなんと、
柔道部のカバ女が映ってたんだ。
「え、嘘だろ」って思わず口に出しちまったんだ。
そしたらどうした?って聞かれたからこいつが彼女なのかよって聞いたら、何の変哲もないみたいな顔でうなずいたんだ。
じゃあ、あの花火のときの女の子は誰なんだよって聞いたら、妹って答えたんだ。
すべては繋がったって感じがしたね。
ヤンキーがカバ女の汗が染み込んだ汗拭きタオルをためらわないどころか、ちょっと嬉しそうに使ってたのも。




