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発達障害の異世界転生  作者: 運動出来ないSASUKE
犠牲者達は足掻き苦しむ
2/4

ふざけるな

 青年はハッと目を見開く。先程までボンヤリとしていた意識と視界がクリアになり、感覚が健康な時に戻っていた。


 上体をムクリと起こし、立ち上がっても貧血を起こさない。飢餓感も無い。


 辺りを見渡すと、そこは綺麗な青空、正しくは空の上に青年はいた。


「死んだのか・・・」

「死んだよ。みっともなくね」


 振り向くとそこに今ドキの格好をした十代前半くらいの少年がいた。俗に云う原宿系のファッションで上下は勿論、靴下すらも左右別でカラフルで目が痛い。金髪のマッシュアップに左目尻にDestroyと記されたタトゥー。青年は警戒しながら聞く。


「誰、ですか?」

「ハハッ!僕の見た目って結構幼くしてある筈なのに敬語使うんだね‼︎ダメ人間の癖に」


 いきなりの罵倒に青年はムッと眉を顰めたが、少年は構わず続ける。


「僕は破壊神マアル。最低で最悪な神様だよ」


 マアルはお茶目に両頬に人差し指を刺してニコニコしている。


「その、破壊神マアル様が、俺に、何か用ですか」


 目を合わせず、辿々しい敬語の青年。マアルはそんな青年につまんなそうにする。


「何で片言なの?治せるとこ治した筈なのに。あ、元から人付き合い出来ないタイプだったねゴメ〜ン⭐︎素で会話しちゃったら周りから浮いて腫れ物扱いされちゃうの嫌だもんね」


 マアルは青年に対して煽る言動が多い。しかし、青年は何も言い返そうとはしなかった。そんな青年の反応にマアルは苛立ちながら青年の頬を叩く。


「羽柴優助、君ホントつまらないね。負け犬根性染み付き過ぎでしょ」


 優助は何度も叩かれても無反応。それが更にマアルを逆上させた。


「魂ごと破壊して二度と生まれ変わらせないようにしようと思ったけど、やーめた。嫌がらせしまーす」

「は?」


 優助は初めてマアルの嫌がらせに反応した。そんな優助を見て、マアルはニヤリと笑う。


「消えたかったよね?地獄に落ちても良かったよね?けどダメ〜!羽柴優助クンは生き返らせる事にします‼︎」


 本心がバレてたのか焦りを隠せない優助。


「おい、なんだよ生き返らせるって!迷惑だからやめてくれ‼︎」

「安心して、生き返らせる場所は君がいた世界じゃなくて異世界だから。あ、でも君の発達障害は治さないよ」

「いい加減にしろ!・・・俺が発達⁉︎は?」

「うん、発達障害。神様として調べたから本当だよ。ちなみに君が大人になってもイジメられたり周りから浮いてたり親兄弟から見限られたのも全部発達障害が原因だね。成人しても気づかない人は多いからね。周りからクズのレッテル貼られて無様に死んじゃったね、ドンマイ」


 初めて聞かされた真実に優助は膝をつく。


「発達・・・?なんだよそれ・・・、障害者だったのかよ俺・・・」

「うん、しかも合併症。君が転生する世界はネットも携帯も無い剣と魔法の世界だけど、頑張って調べなよ。ま、発達障害の人は興味無い事は知ろうともしないからどうでもいいけど」

「・・・」


 ショックが大きい優助は言葉を失った。


「そんな君にこの余り物の最弱の力を上げよう」


 そう言って、マアルは一枚のトランプを取り出す。


「最後の一枚だ。能力は『ハートの2』」


 ハートの2のカードは青白い光を放ちながら優助の胸から体内に入って行く。


「なんだよこれ・・・」

「ハートの2だよ」

「どういう能力かって聞いてんだよ!このスカポンタンがっ‼︎」


 泣きべそを掻きながらも優助が怒りを露わにする。そんな優助にマアルは神経を逆撫でする。


「破壊神相手にスカポンタンはユーモアあるね〜。さっきよりは面白いよ」

「何度でも言ってやるよ!日本語通じねぇスカポンタンがっ‼︎異世界転生ならチート能力の説明するだろチン◯スポンタン神がよぉ‼︎‼︎」

「アッハッハッハッハッハッ‼︎チン◯スポンタン神って、ちょっと語呂がいいのは何⁉︎ヒーッ、お腹痛い」


 ひとしきり笑った後、マアルは満足したのかニコニコする。


「ごめんけど、能力の詳細は教えられないかなぁ」

「はぁ?なんで・・・」

「だってそっちの方が面白そうだから」


 食い気味で答えるマアルの目は笑っていない。優助はマアルの不気味な目にたじろいだ。


「でも、笑わせてもらったから少しヒントは上げようかな」


 嫌な知らせでは無さそうだ。優助は片唾を飲み込む。


「異世界に行ったら優助クンにはちょっとしたゲームをしてもらう」

「ゲーム?」

「そ。今絶賛ゲーム中でね。君には途中参加で破壊神マアル陣営として相手陣営の転生者を皆殺しにして欲しいんだよね」

「皆殺しって、人を殺せって言ってんのか?」

「イエスイエス。24対24の壮絶なチームバトル。それも周りの人間や由緒ある建造物なんかもぶっ壊しまくりのエキサイティングなやつ」

「そんなの出来ねーよ・・・人殺しなんて無理だ」

「別にやらなくていいよ」


 予想打にしていない返事に優助は疑問を持つ。


「優助クンには期待してないからね。だって発達障害だし、最弱の『ハートの2』だしね。どうせ適当なとこで死ぬでしょ」


 唖然とする優助。


「だけど、もし生きたいと願うようになったら、自分の能力と障害を知って、ルールも同類から聞いてよ」

「マジでこんなクソみたいな事に巻き込んで説明一切無しかよ・・・」


 白状なマアルに優助は怒りで震える。


「言ったでしょ?期待してないって。じゃあ、早速送ろうか」

「待ってくれ!なんで俺なんだ⁉︎転生とかどうでもいいから放って置いてくれよ‼︎」

「理由は無い。誰でも良かった。あ、最後に呪いの言葉を一言」


 閃いたようにマアルは告げる。


「もっと苦しめ」


 その言葉と共に、優助は浮いていた空の上から落下する。


 落ちて行く優助を嫌味な笑みで見下ろすマアル。かつて母から言われた言葉。それを聞いて優助の体内でわなわなと黒い感情が湧き上がる。


「ふざけるな・・・。ふざけるなあああああああああああああああああああああああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎」


 ここから羽柴優助の報われない地獄のような日々が始まった。

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