天上 瑞樹
日本で最初にモンスターが溢れ出したのは人口密集地の東京23区や横浜、大阪や名古屋といった大都市だった。
天上優姫が住んでいるのは東京西部であり、モンスターが出現し始めたのは午前4時ごろだった。
春休みだったこともあり、優姫はその日小学校の近くに住んでいる学校の友人の家に泊まっていた。
目が覚めると髪の色が変わっており混乱したが、午前7時ごろになってモンスターが溢れたため、小学校が避難所に指定されたため、友人一家とともに避難していた。
小学校で歳の離れた姉である瑞樹と会った。兄である優がいなかったことには動揺したが、家にいて無事だとメールが来て瑞樹と2人で安堵した。
そして、現在ーーーー
「瑞姉、これ見て」
優姫は姉である瑞樹に優からのメールを見せていた。
「『今小学校についた』って……家からここまで歩いて10分はかかる……ただでさえモンスターのせいで危険なのに、1人で……!?」
「だけど、優兄が嘘をつくとは思えない」
「そうね、でも……あの子1人じゃどんな危険があるか……」
「もしかしたら、優兄も私や瑞姉みたいに〝固有スキル〟持ってるかもよ?」
「だと、いいのだけれど……」
「おっ、ここが保健室だっけな。懐かしいな、もう10年近く前になるのか」
優は体育館へと向かうために校舎の一階を歩いていた。
「ここを抜けると……体育館に出るんだよな」
開けっ放しの扉から出ると、体育館は目の前である。体育館は正門とは真逆の位置にあるため、校舎を迂回するより校舎の中を通った方が近いのだ。
「お、結構人がいるな……」
体育館に入ると、50人ほどの人がいた。モンスターが溢れているのにこれだけの人数が避難できたのか。
優が体育館に入ると、人々の視線を一身に集めた。
「何だあの子……めちゃくちゃ可愛くないか?」
「お前ロリコンかよ?」
「でも見ろよ、二次元から飛び出してきたみたいだろ」
「俺声かけてこよっかな……」
「馬鹿、あの子の持っている斧、ありゃゴブリンロードの斧だぞ」
「ゴブリンロード?ゴブリンの親玉ってことか?見たことないけど、どうせ大したことないんだろ?」
「いや、俺の仲間で【解析】スキル取ってるやつ曰く、〝総合〟が150超えてたらしい」
「マジかよ……俺の2倍じゃないか」
優の容姿と、持っている斧によって体育館中がザワザワとし出す。
「うーん、2人ともどこにいるんだ……って、あれは瑞姉?」
端っこに見覚えのある顔を発見した。黒髪のポニーテールの美人。間違いなく、瑞樹である。
「お〜い、瑞姉!」
優はその場所に走ってかけていく。〝敏捷〟が100に迫っているため、あっという間に着いてしまった。
「瑞姉、無事でよかった。って、あれ?この銀髪の子誰?」
瑞樹は優を見ると目を見開いて驚いていた。そして、瑞樹の隣には優より少し背の高い銀髪の美少女がいた。
(あ、そういえば……見た目の説明してなかった)
「え……優兄?」
銀髪の少女が優を見た目ながら呟いた。
「お前まさか……優姫か?」
「……貴方、本当に優なの?」
「ああ……目が覚めたらこんな感じになってたんだ」
優がそう言うと、瑞樹は額に手を当てて溜息をついた。
「はあ……正直、信じられないわ。でも、喋り方に動きが完全に優と同じだし……それに、その服、優姫のものよね?」
「あー、それはちょっと俺の服じゃ合わなかったから借りた。緊急だったから許してくれ。」
「別に気にしてないから大丈夫……」
「それで、優姫は髪の色が変わったのか」
「優兄と同じで、目が覚めたら変わってた。他にも変わってる人はいる。でも、優兄みたいに性別が変わるのは見たことも、聞いたこともない」
「そっか。でも、2人が無事でよかった」
「それはこっちの台詞よ……本当に、心配したんだから」
そう言う瑞樹の目の端には、涙が溜まっていた。
「心配かけて、ごめん」
「ところで優兄、その斧は?」
「これか?ゴブリンロードってモンスターが持ってたやつを持ってきた」
「……ゴブリン、ロード?」
「強かったぞ。結構危なかった。もしかしたら死んでたかも。」
優が思い出すようにそう語ると、瑞樹が震え声で言った。
「優、貴方……」
「どうしたんだよ、瑞姉?」
「今、気になって、貴方を【解析】してみたの……貴方のそのステータス、はっきり言って異常よ」
(ん、【解析】って固有スキルじゃなかったのか。もしかして、俺は【強化解析】を持ってたからスキル獲得の画面に出てこなかったのか?)
「そんなもんか?俺が倒したのはゴブリン二匹ゴブリンロード一匹だけだぞ」
「それが、異常なのよ……この避難所で、ゴブリンを倒すと言って外に出ていった人は何人かいるわ……でも、その大半が帰ってこなかった。生き残った人によると、『ゴブリンを倒していたら、ゴブリンロードに襲われた』と言ってたの……ゴブリンロードを倒せたのは、この避難所の中では貴方を除くと私だけよ」
「そんなに強いのか……って、瑞姉もゴブリンロードを倒してたんだ」
「私の〝固有スキル〟のおかげよ……奇襲で何とか倒せたわ」
(成る程な、〝固有スキル〟か。見させてもらうよ、瑞姉。【強化解析】)
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名前 天上 瑞樹
性別 女 Lv.12
体力 38
魔力 64
筋力 38
耐力 42
敏捷 71
総合 253
SP 0
スキル
固有 【雷鳴の支配者】
派生 『電熱無効』『麻痺無効』
『雷鳴の太刀』『雷鳴閃』
主要 【身体強化Lv.1】
【解析Lv.1】
【魔力強化Lv.1】
【敏捷強化Lv.1】
情報
・〝敏捷〟特化の速攻アタッカー。
・所持武器【雷鳴の支配者】により『雷鳴の太刀』(補正:筋力+25 敏捷+35)
・キルする時は電気や麻痺への耐性をつけて挑むのが定石だ。ただし、電気系統や熱系統は通用しないので注意すること。
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次は多分8時ごろ投稿します。次で今日の投稿は終わりです。