失楽園 1
「ちょっと!?どういうつもりですか!?」
吉田さんが土村に大きな声で尋ねる。
「我々は今、とある任務で二人の人物を探しています。こうした方が早いかと思いまして」
「だからってーーー」
バキッ
そんな音とともに、吉田さんが尻餅をつく。どうやら、土村が吉田さんを殴ったようだ。
(……この人、強いな)
恐らく力を入れてないであろう状態で、何とか見えるといった速度。それだけで強者だと理解できる。
もしかして、奥多摩のボスを倒したのって、この人か?
なら、なるべく協力したいところではある。この人達がどんな要求をしたのか、俺は知らないしな。けどーーー
「すみません、本当に急いでるんで。我々の行動に、国民のーーーいや、全世界の人の命が掛かっていると言っても過言じゃないんでね」
土村は、吉田さんに向かって腰から拳銃を取り出し、銃口を向ける。
そして、その引き金に指をかけた。
「これ以上邪魔をするなら……死んでもらいます」
(ーーーこんなやり方は、俺には認められない)
足に力をこめ、地面を蹴って俺に銃を向けている人に肉薄する。
「ッ!?」
構えていた小銃を下から右の拳で殴りつける。すると、小銃が男の手から落ちる。
(この人達に向けている銃の照準を俺に当てさせる……!仲間が近くにいるんだ、撃てないはずっ!)
取り敢えず、みんなに銃を向けている人達の銃を壊すか、奪うことにしよう。
「ふぅっ!」
男の左手を掴み、思いっきり地面に投げ飛ばした。
なるべく投げ技ーーー技と言えるようなものではないがーーーを使っておきたい。こんなことをしておいて言うのもなんだが、人間同士で傷つけ合うのが一番良くないからな。
「速ーーー」
隣にいた男の腕を掴んで、小銃を蹴り飛ばす。そして、近くにいたもう一人の男に向かって投げつけた。
(これで三人……銃が当たると、果たしてどうなるか……気になるところではあるが、当たらない方がいいだろうな。だけど、もっと問題なのはーーー)
周りの隊員が、俺に銃を向ける。すると、先程木更津と呼ばれていた男が前に出てきた。
「土村一佐、こいつは俺に任せて下さい」
「……危なくなったら呼べ。お前らは他の奴らにそのまま銃を向けていろ」
周りの隊員は、再びみんなに銃を向けた。止めたいが……木更津って人がいる以上、下手には動けないな。
「……なるべく、子供は傷つけたくないんだが……投降してくれそうにもないな……」
「……銃を降ろしてくれるんなら、話を聞きますが?それに、そうした方が話も早いのでは?」
木更津は、眼鏡を人差し指でクイ、と上げた。
「まあ……確かに君の言う通りなんだけど……ウチの副団長の命令なんでね」
木更津は拳を構える。それに合わせて、俺も素人なりに感覚で構える。
(護身術くらいなら多少はやってたけど……どうなるか……)
俺が足に力を込めて駆け出す、と同時に、木更津も駆け出した。
「はっ!」
ガッ
拳と拳がぶつかる。多分、〝筋力〟で言えば俺の方が上、押し切れるはずーーーが。
スルッ
木更津が拳を回らしたことで、いなされてしまった。
「ふっ!」
ゴッ!
「ッ!」
木更津の左足が、俺の脇腹に入る。ただ、やはり軽い。俺の〝耐力〟が、木更津の〝筋力〟を大きく上回っているのだろう。
「硬いな……!」
木更津の左足を、脇腹と右手で挟み動きを封じる。木更津は特に抵抗するといった様子もない。いや、抵抗できないのか。
(【強化解析】)
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名前 木更津 蓮夜
性別 男 Lv.42
体力 155
筋力 206
耐力 210
敏捷 205
SP 2
スキル
固有 【徒手戦闘術】
主要 【身体強化Lv.3】
【解析Lv.1】
情報
・非常に身体能力が高い。
・主に徒手や小型の武器による近接戦闘を行うと想定される。
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やはり、ステータスが異様に高い。固有スキルの恩恵か?取り敢えず、無力化するしかないな。
「らぁっ!」
腰を捻って、軽めのハイキック。ステータス差からして、全力でやれば殺してしまうかもしれないからな。
「ぐっ!」
とはいえ、それでも木更津にとってはそれなりのダメージがあるようで。一瞬動きが止まる。
挟んでいた木更津の左足を離し、両手で掴む。そして、地面に向かってぶん投げた。
が、木更津は空中で体を捻ると、地面に片手をついて、右足で俺に蹴りを入れようとする。
(まあ、当たるわけないんだけどな)
軽く身を引いて、かわそうと思ったーーーその時。
「ッ!?」
カシュン、という音とともに、木更津の靴の踵の部分から刃が伸びた。
(仕込みの靴かよ!?)
すぐさま飛び退く。何かが当たった感触がして、チラリと右肩を見ると、服が切られていた。ただ、ステータス差からか血は出ていない。
「チッ、これでもダメか」
「靴に仕込みだなんて、映画みたいだな」
「まあ、なんだかんだ言って便利だからな」
互いに軽口を言い合う。そして、再びかまえようとした時、土村が動いた。
「木更津……時間をかけ過ぎだ。俺がやる。お前は解析を使っておいてくれ」
「土村一佐……」
土村が前へと出る。その一挙手一投足から、達人だと理解できる。一歩一歩自分へと近づいてくるのが、ゆっくり見える。自然と、息が荒くなる。
「ふーっ」
目を閉じて、息を吐き深呼吸する。目を開けると、土村が俺の正面に立っていた。この圧迫感、ボス並みだな。さて、勝てるか?
「なあ、あんた。自衛隊ってのは国を、国民を守るもんじゃないのか?」
「ああ、だからこうしてるんだよ」
「意味がわからないな」
土村は後頭部をガリガリと掻くと、ため息をついて、言った。
「俺は自分の上司の強さ、人間性を信頼している。そして、その上司が自分よりも遥かに強いと、そう認める人が、この任務を達成すれば、この国を救うために協力してくれる。そういう手筈だ。だから、俺は……いや、俺たちは邪魔をする人間が誰であろうと殺す覚悟で、ここに来ている。悪いことは言わん、投降しろ」
そこまで言って、土村から殺気が発せられる。ヤバいな、これは。間違いなく、ボスを倒したのはこの人だろう。この殺気、ボスと同等か、それ以上のものかもしれない。
「じゃなきゃ、死ぬことになるぞ?ガキ」
この人は本気だ。必要であれば殺すと、そう本気で言っている。ぶっちゃっけ、死ぬのは怖いし……まあ、【世界を渡る者】があるから、終わりではないが……それでも、死にたくはない。
だけど。
「断る。俺は投降しない。そっちこそ、話を聞いてーーー」
瞬間。土村の姿がブレた。
「ッ!!」
(あれ……?)
既に、土村の姿は視界から消えていた。ふと、後ろから声が聞こえた。
「……物分かりの悪い奴は嫌いだな」
振り返ろうとした、次の瞬間。俺の左肩から、血が吹き出した。と同時に、激痛が俺を襲う。
「がっ……!」
「なあ、だから言ったろ?死ぬぞ、って」
で、結局なんで銃向けたんだ??ってなってる人もいると思うので、一応言っておきます。
次回、説明します!!
追記:二週間後から定期試験のため、二週間ほど更新お休みします。




