眼孔
ようやく展開がまとまりました……
「ん……」
目を覚ますと、浜野さんと血月さんの顔が目に入ってきた。
「おお、起きた」
「やった、起きなかったらどうしようかと……」
二人の表情が明るくなる。心配していてくれたのか。嬉しいな。
そう思って、上半身を起こそうとすると、頭に激痛が走った。
「ッ……!」
「大丈夫ですか!?」
「ああ、大丈夫です。ちょっと頭痛がしただけですから」
そう言ったはいいものの、痛い。結構痛い。頭を手で抑えようとすると、右手が動かないことに気がついた。
(?……何だ?さっきの戦いのせいで……ッ!そうだ、アイツはッ!?)
辺りを見回す。しかし、エレクトロンの姿は見つからない。
「それにしても、あんな強そうなモンスターを倒すなんて凄いです」
「ああ、私も同感だよ」
浜野さんと血月さんが、そう言う。
倒した?俺が?記憶が曖昧だが、倒した覚えなんてないが……アイツの電撃のせいか??
そういえば、瑞姉は【麻痺無効】を持っていたが……俺は持っていないから、麻痺効果が発生したのか?
(ん、やっぱり俺が倒したのか?)
ボスの討伐と、レベルアップの通知が表示されている。
(そういえば、エレクトロンの解析結果はまだ全部見たなかったな。確か、情報欄で誰に殺されたかわかったような……)
そう思い、横目で解析結果の表示された画面を見る。戦闘中だったので、画面を消す余裕さえなかったので、まだ表示されたままだ。
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名前 エレクトロン モンスターランク:D
性別 男 Lv.91
体力 606
魔力 928
筋力 669
耐力 637
敏捷 1111(固有スキル【魔雷】により+300)
総合 3615
SP 90
スキル
固有 【魔雷】
派生 『雷牙天撃』『魔雷鎚』
情報
・東京都昭島市エリアのボス。
・魔神軍の少尉。
・中尉以上の階級の魔族に従う。
・基本的に、雷撃を使い敵を葬る。
・プレイヤーキル数:10025
・プレイヤーによるキル数:1
・2時間前、繝励Ξ繧、繝、繝シ縲主、ゥ逾槭?によってキル。
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何だこの変な文字化け。偶に見ることがあるが、どういう条件で文字化けするのかはわからない。今のところ、何の影響もないため、無視しても大して問題はない……のか?
そして。エレクトロンのスキル欄。そこに、視線が釘付けになった。
(あいつの言っていた通り、やはりスキルか……クソッ、最悪だ。ただでさえステータスに差があるってのに……!!)
優は苦虫を噛み潰したような表情になる。
モンスターと人の間に存在する圧倒的なステータス差。それを大きく埋めることができるのが、スキルであった。
しかし、それをモンスターが使ってくる。
…………これは、本当に俺たちが勝てるようになっているのか?俺たちが強くなろうが、奴らは強くなった俺たちよりも遥かに強い。しかも、確認できているやつでD級。この先、戦い続けたとして……仮に勝ったとして……先はあるのか?崩壊した世界で、人類は生き残っていけるのか?
都市部は壊滅、通信も麻痺。恐らく無事なのは衛星くらいか……
それに、食料も問題だ。生産しなければ、いつか必ず無くなる。
「あの、天上さん、どうしたんですか?そんな難しい顔をして」
考え込む俺を見て、不思議に思ったのだろう。血月さんが心配そうに話しかけて来た。
「ああ、何でもないですよ。戻りましょうか」
小さく手を振って、笑いかける。浜野さんはもう少し先を歩いている。
俺も立ち上がり、小学校へと歩み始めた。
(レベルアップで獲得したポイントの使い道は……戻ってから決めるか?いや、念のため今やっておいた方がいいかもな)
優は歩きながら自身のステータス画面を開く。
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名前 天上 優 〝ボス〟討伐回数:3
性別 男 Lv.71
称号 黒と白の混濁者
効果 獲得時、体力、筋力、耐性、敏捷を5倍にする。又、レベルUP時の全ステータスの上昇値と獲得SPを2倍にする。
称号 対魔の解放者
効果 魔族に対する攻撃+15%
何処にいても、ボスに認知・敵視される。
体力 636(69↑)
魔力 264(69↑)
筋力 609(69↑)
耐力 694(69↑)
敏捷 636(119↑)
総合 2759(395↑)
SP 84
BP 2
スキル
固有 【世界を渡る者】
【覚醒】
【強化解析】
【弁慶の加護】
派生 『金剛力』『金剛弁慶』『剛腕弁慶』
【ダブルディフェンス】
【雷電の覇者】
【狂魔帝の寵愛】
上位 【身体強化・上Lv.1】
主要 【身体強化Lv.4】
【耐力強化Lv.5】
【体力強化Lv.5】
【電熱無効】
【刀術】
【刺斬耐性・弱】
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(【覚醒】……?何だこれは。こんなものを獲得した覚えはないが……いや、そういえばエレクトロンの固有スキルによる攻撃を受けた時……条件を満たしたとか何とか言ってたな)
取り敢えず、詳細を見てみるか。
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【覚醒】
特定の条件を満たした時、全ステータスを2倍し、身体の負傷・スキル効果などを全てリセットする。
現在の条件:ーーーerrorーーー エラーコード:aac00215
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……条件がわからない?これじゃあ、今のところはどうしようもないじゃないか。
ただ、スキルの効果としてはすごく強力だ。条件さえ分かれば……
「ーーさん、天上さん!聴こえてますか?」
そんなことを考えていたら、どうやら血月さんに話しかけられていたようだ。
「っ、ああ、すみません」
「ボスを倒した後で、ステータス画面が気になるのはわかりますが、話を聞いて下さい」
「えっと、何の話でしたっけ?」
「天上さんが気絶している間に、『奥多摩町のボスが討伐された』って画面が表示されたんです」
「そ、それは本当ですか?」
思わず大きな声を出してしまい、少し前を歩いていた浜野さんが振り返った。
「見てなかったんですか?」
自身のステータス画面と、エレクトロンの解析結果画面を消すと、血月さんが言っていた通りの画面が表示されていた。
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:ボスが討伐されました。これにより、アジア区域日本国関東地方東京都奥多摩町エリアにおけるモンスターの増加が停止します。
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本当に、討伐されたのか。俺以外にも、ボスを討伐できる人がいる。もしその人と協力できれば、他のボスの討伐も今よりは容易になるかもな。
「ああ……気がつきませんでした」
「画面を開きすぎてると、見えなくなるんですかね?」
「さあ?どうなんでしょうか。分かりませんが……ボスが討伐されたのは、嬉しいですね」
ただ、奥多摩なので、少し遠いところが残念ではある。山奥なので行きにくいということもあるが。
「そうですね……あっ、先、行っててもらえますか?靴紐が解けてしまったので」
「離れたら危ないんじゃ?」
「直ぐに済ませるから大丈夫ですよ」
「……わかりました」
血月さんがしゃがんで靴紐を結び始める。俺は少し前を歩いていた浜野さんに話しかけた。
「浜野さん」
「む、ああ……どうした?血月君と話していたのではなかったのか?」
浜野さんが不思議そうに尋ねる。
「血月さんは靴紐が解けたらしくて……先に行っていてくれ、と言われまして」
「そういうことか……丁度いい、天上君」
浜野さんの表情が真剣なものに変わる。
「君の父の名前は何と言うのだ?」
「えっ……ああ、優作、だったと思いますが」
俺がそう言うと、浜野さんは少し天を仰いだ。そして、再び視線を俺に向ける。
「そうか……やはり、そうだったか」
「え〜っと、どういうことですか?」
「実は……私の社長職は、私の父から継いだものでな。私の父が、優作君のお父上……つまり、君の祖父に助けられたことがあったようだ。自分が社長になれたのも、君の祖父のおかけだと言っていた」
そんな話、俺は聞いたことがないが……あの祖父なら、普通にやりそうだ。
「本来なら君の祖父に言うべきなのだろうが、世界がこうなってしまった以上、まずは君に礼を言わせてくれ」
浜野さんはそう言って俺に深く頭を下げた。
自分がしていないことで感謝されるのは、なんとも言えない気分ではある。ただ、相手は誠意を持って頭を下げているので、それを無視するというのも失礼だろう。
「いや、俺は何もしてないので、その言葉は、祖父に言ってあげて下さい。ーーーいや、祖父に会えるように、強くなりましょう」
「……ああ、そうだな」
浜野さんは、一瞬驚いたような表情をしたが、直ぐに小さく頷いた。
その時。
(ッ!!?)
視線を感じ、思わずバッと振り返ってしまった。
「天上さん?どうかしましたか?」
振り返るとそこには、靴紐を結び終わったであろう血月さんが立っていた。
「?天上君、どうした?」
「……いや、何でもありません。早めに戻りましょう」
ねっとりとしていて、纏わりつくような、君の悪い視線だった。
だが、それよりも問題なのは……
(〝死〟を感じた。サイクロプスやキリスホッパー、エレクトロンと対面した時よりも強い死の予感。一体何だったんだ……?)
嫌な予感を感じつつも、俺たちは小学校に戻った。
「〜〜!〜〜〜!!」
外から聞こえる喧騒で、目が覚めた。
「何だ……?」
目を擦りながら、部屋を見回す。
「あれ、瑞姉と優姫がいないな……二人とも外にいるのか?」
カーテンを開けてみると、どうやら日が上り始めたばかりのようだ。
何やら吉田さんと、真鱈模様の服を着た数人とが言い争っているようだ。その周りには、優姫や瑞姉以外にも、体育館にいる全員が集まっている。
校庭には30mほどの大きなヘリが一つ置かれている。自衛隊だろうか?
(起こしてくれてもよかったのになぁ……)
そう思いつつ、窓を開けて校庭に出る。
「ーーだから、それは現状では無理だと言っているでしょう!!」
「そんなことは、我々には関係ないんですよ。いいから早く、立ち退いていただけませんか?」
吉田さんは語気を強め捲し立てるが、眼鏡をかけている自衛隊と思われる男は、特に気にした様子もなく言う。
「瑞姉、これはどういうこと?」
俺が後ろから瑞姉に尋ねてみると、瑞姉は少し驚いたような顔をした後、首を横に振った。
「わからないわ……」
「そっか」
一体何の話をしているのだろうか。俺がそう思っていると、自衛隊と思しき男が俺を見た。
「そこの少女が君の言っていたまだ来てない一人ですか?」
「……はい、そうです」
「では、まずーーー」
眼鏡をかけた自衛官の男がそう言いかけた時、背後にいた身長180cm以上はある体格の良い男がそれを制し、前へと出た。
「木更津。そんなまどろっこしいことしてる時間ないでしょ」
「……土村一佐。わかりました、土村さんに任せます」
眼鏡をかけた自衛官がそう言うと、土村と呼ばれた男が右手を上げた。
「!?」
すると、後ろにいた十人ほどの自衛官が、俺たちに銃を向けた。




