狂気の予兆
ちょっと読みづらいかな、と思ったので少し書き方を変えました。
「ふぅ、終わったか」
数多の砂埃が舞い、煙がたち込める抉れた地面を見ながら、エレクトロンはそう呟いた。
「あぁ?んだよ、こいつのレベル、思ったよりも低かったのか?つまんねーーーー」
そこまで言いかけて、エレクトロンの動きが止まった。目の前に立つ、優を見つめたまま。
「テメェ、何で生きてやがる?」
「さあな、俺にもよくわからん」
見ると、優の腹の傷だけでなく、全身の負傷が治っているようだった。そのかわり、紅い瞳が煌めいている。
「ッ!その目、まさかッ!」
「あ?どうした?人の顔ジロジロ見やがって」
エレクトロンが、優の瞳を見て、驚いたような表情で後ずさる。
ーーーーあの時。電撃が迫った優の目の前に、ある画面が表示された。
ーーーーーーーーーーーー
条件を満たしたため、
固有スキル【覚醒】が発動します。
現在発動しているスキル、負傷などの状態異常は全てリセットされます。
ーーーーーーーーーーーー
その瞬間、体が軽くなって、腹部から発されていた灼けるような痛みがなくなっていた。そして、電撃が遅く見えた。
(【覚醒】、か……何だかわからないが、助かった。それと、スキルをリセットってことはーーー!!)
「……【加速】」
そう呟いた瞬間、急激に優の体が加速した。先程とはか比べ物にならない速度で。
「なっーーーー」
エレクトロンはなんとか応戦のために構えようとするが、優の方が遥かに早い。
「遅えッ!」
「がッーーー」
顔面に優の拳がめり込み、エレクトロンは家の壁を突き破り吹き飛ばされ、更に庭を突き破って隣の家の地面に転がった。
「ガブッ……アガッ……」
「なあ、どうした?その程度か?立てよ……」
仰向けに倒れ、吐血するエレクトロンを、優はその紅く煌めく瞳で冷たく見下ろす。
「グ、ルアアッ」
バチバチバチッ!!
エレクトロンはフラフラの状態で立ち上がり、優に電撃を浴びせる。
「あっは、そう、それでいいんだよ。やればできるじゃん?」
優はそれを正面から受ける。
「【雷鳴天】ッ!!」
エレクトロンが加速し拳を繰り出すが、優はそれを軽く躱す。
「ーーーっでもさ、やる気ないよね?真面目にやんなきゃ……死ぬよッ!?」
「グギッ」
優の右足が、エレクトロンの左脇腹に突き刺さり、吹き飛ばされそうになるが、優がエレクトロンの胸ぐらを左手で掴み、引き寄せる。
ベキィッ!!
再び優の右手がエレクトロンの顔面にめり込む。エレクトロンはまた吹き飛ばされそうになるが、優が胸ぐらを掴んでいるので離れられない。
ゴッ、バキッ、グギャッ!!
優は何度も何度も、エレクトロンの顔面を殴りつける。
「あっはは、抵抗が弱くなってきてないかなぁ??」
そう笑う優は別人のようで、まるで一方的な暴力を楽しんでいるようにも見えた。
優の表情には狂気が、瞳には何に向けているのかはわからないが、隠しきれない程の憎悪が浮かんでいた。
「あれぇ、壊れちゃった?」
「ガ、ブッ……」
「うーん、簡単に壊れてくれちゃって……つまんな」
優はエレクトロンを放り捨てるように地面に投げつけた。
「それにしても、相も変わらずゴミが溢れているなぁ……ゴミは掃除しなきゃ、ね?君もそう思うでしょ、ゴミ君??」
優の右手に、黒い稲妻が走る。
「【黒雷】」
優が右手を振りかざすと、黒い稲妻はより激しくなる。
「こんがり焼いてあげる……」
優はそう呟くと、右手を振り下ろした。
ドオオンッッ!!
轟音が住宅街に木霊し、エレクトロンは跡形もなく消え去った。
ーーーーーーーーーーーーー
BPを1獲得しました。
初めてD級モンスター:エレクトロンを討伐しました。
SPを50獲得しました。
ミッション:電撃戦
達成報酬:敏捷+50
レベルアップしました。
称号【白と黒の混濁者】の効果により、SPを34獲得しました。
:ボスが討伐されました。これにより、アジア区域日本国関東地方東京都昭島市エリアにおけるモンスターの増加が停止しました:
ボスの討伐により、BPが1与えられました。
ーーーーーーーーーーーーー
「何、これ?」
優はーーー否、『それ』はまるで初めて見ると言ったようにまじまじとその画面を見つめた。
「あー、そんな感じになってるんだ。成る程ねぇ……こんな下らないことをやりそうなのは一人しか思い浮かばないけど……」
そこまで言って、『それ』の紅く煌めく瞳が、より憎悪に塗れる。そして、その憎悪に塗れた瞳で、『それ』は遠くを見つめる。
「待っててね、皆んな……私が……必ずーーーー」
『それ』は、静かに目を閉じると、自身の胸倉ををぎゅうとにぎりしめる。
「必ず、全部終わらせてみせるから」
そう呟いて、『それ』は再び目を開ける。
「さて、まずはこの辺りのゴミを掃除することから始めーーーー」
ゴプッ
そう言いかけた時、『それ』の口から血が溢れ出した。
「ーーっ、はや、すぎない……?あー、クソッ、何でこいつ……こんなに……」
そこまで言って、『それ』は気を失った。
優の体は横向きに倒れた。
東京都 奥多摩市某所
「ふい〜〜、初めてだからどんなもんかと思いきや、意外にあっさりしてたなァ」
「土村一佐、司令部から命令が来てます」
土村と呼ばれた男は、そう聞くと、不快そうに顔を歪めた。
「え〜今終わったばっかじゃん」
「ですが、何やら超重要任務だと……」
「んー?確か天皇陛下は『別班』が既に救出したって聞いたたけど……」
「いや、別のようです」
そう聞いて、土村は首を傾げた。
「何故我々だけで……?団長は何処にいるんだ?」
「え〜っと、団長は……今回の任務のランデブーポイントで待機してるみたいです」
「ふーむ……尚更よくわからんなァ、超重要任務なら、我々でなくても『特戦群』がいるじゃないか」
「何やら『特戦群』は今関西にいるみたいで……」
部下の言葉に、土村はため息を吐いた。
「っはぁ〜、仕方ないな……で、具体的な内容は?」
「ちょっと今確認します……時間は明日一杯……あーなんか、凄い人の御子息の回収依頼だそうです」
「財閥の御曹司ってところか?それにしても、我々を動かす必要はあるのか……」
「総理や官房長官と親交があった、とか」
「二人とももう死んでるでしょ」
土村はまたため息を吐いた。
(ふぅ〜、相変わらずこの仕事、ここ最近ずっと休みがないねぇ。今回の対象は、本当に財閥の御曹司か……?まあ、それはいいとして……『回収』とはどういうことだ?救出ではなく回収??どうにも、きな臭いなぁ)
「面倒臭い任務押し付けてくれちゃって、全くさァ」
「まあ、仕方ないですよ。『別班』や『特戦群』が活躍してるんです、我々『第一空挺団』も活躍する時ですよ」
「まあ、確かにそうかもね。『別班』と『特戦群』いなきゃ自衛隊で最強だしねぇ」
「いても最強ですよ、ウチは」
部下の威勢のいい言葉に、土村は苦笑いした。
「それもそうか。ほいじゃあ団員に知らせて、明日に備えるとしましょ」
「了解」




