急襲
すみませんサブタイトル変更しました。
ーーー2022年 4月4日 午前6時半
「思ったよりも早く起きちゃったし……外にレベル上げに行こうかな」
優は目を覚ますと、保健室のベッドの上で伸びをしてそう言った。未だ怪我が治っていないので、保健室で寝泊まりさせてもらっていたのだ。
左肩は多少は動かせるようにになったが、まだ万全とは程遠い。
レベル上げを当面の目標にして、【自然治癒】や【刀術】のスキルレベルを上げたい。
そして、昨日もやったが、家でシャワーを浴びたい。幸い、未だに水道は通っているのだ。
(グレイスパイダーを倒して、40くらいまではレベルを上げたいな)
何かが起きた時、対処できる力は絶対に必要だ。
(というか、そもそも何で魔族ってのは人類に宣戦布告してきたんだ?)
ネットニュースで見た、突如魔族とやらが人類に宣戦布告して、モンスターが溢れ出した。そこに、優は疑問を覚えた。
何故、魔族は人類に宣戦布告したのか。そして、魔族達モンスターはどこから来ているのか。
ファンタジー的に言えば、異世界のような場所から来ているのか?そもそも、俺の固有スキル【世界を渡る者】は並行世界へと俺の魂を移すものである(確証はないが)。
となると、魔族の住む異世界、ありきたりに言えば、『魔界』のような場所が存在している可能性がある。
(とは言っても、それが分かったから何だという話ではあるんだが……)
魔族がどこから来ていようと関係はあまりない。結局、このままでは人類は滅亡するだろう。
それよりも、重要なのはーーーー生き残ること。この崩壊した世界で、とにかく生き残ることが大切である。
(それともう一つ、俺たちに〝スキル〟や〝ステータス〟が与えられた原因は何だ?)
〝ステータス〟の言葉に反応して表示された画面を右手で消しながら、優は考える。
まず、考えられるのは魔族が与えた可能性。
だが、これは殆どないと言っていいだろう。戦争をするというのに、敵を強くするようなやつがいるだろうか。
次に、魔族がこの世界に来たから、という可能性。
これが一番確率が高いのではないだろうか。だが、これはないことを祈りたい。これが本当ならば、モンスター達も〝スキル〟を持っている可能性が出てくる。
そして三つ目、魔族以外の何者かが与えた可能性。
これも、なくはないだろう。魔族と対立しているやつらが、という可能性もある。がーーーー個人的には、あのゲームマスターというやつが、俺たちに〝ステータス〟や〝スキル〟を与えたのではないかと思っている。
『天壊の太刀』のような強力な武器を軽く与えることができ、〝通知〟などというものを自由に(確証はないがあのふざけた文章からして恐らくそうだろう)送れて、『ゲームマスター』を自称している人物。
十分にあり得る。だが、『ゲームマスター』と言うのが本当なのならば、この世界がゲームのようになっているのだろうか。
ゲームのようになっているのならば、魔族と人類の〝勝利条件〟もあるかもしれない。
(〝勝利条件〟……恐らくーーー)
その時。目の前に、見慣れない白い画面が表示された。
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現時点での勝利条件
人類側:全ボスの討伐(達成度:0%)
魔族側:全人類の殲滅(達成度:21%)
これらの条件は変化する可能性があります。
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(っ!〝勝利条件〟、本当にあったとはな……!それにしても、人類側の勝利条件『全ボスの討伐』って、何だよそれ!?)
全てのボスを倒すなど、不可能に近い。そして、これには勝利報酬がない。いや、条件の達成=報酬なのだろう。
そして、魔族側の勝利条件、『全人類の殲滅』……達成率21%ということは、モンスターの出現から数日で既に全世界で30億人以上が死んでいることになる。
「今は保留、だな……」
優は画面を消しながらそう呟く。
(よし、行こう。まあ〜、一人でも大丈夫だろう。食料は適当にスーパーで調達するか。というか、そもそも瑞姉とか優姫はどこにいるんだ?今は気にするようなことじゃないか)
これは、左肩の調子にもよるな。右手で『天壊の太刀』を持つことができないのは困る。
今のステータスなら『天壊の太刀』がなくても十分この町のモンスターは倒せるが……一人で行く分、危険はなるべく減らしておきたい。
(やっぱり誰かと行くべきか……?いや、変に足を引っ張られても困るか。それに、もし強いモンスターが出てきたら守りきれる自信はあまりないし)
そう考えると、優はベッドから降り、保健室の校庭側の扉を開けると、校庭へと出た。
「先に【遠視】で確認だけはしておくか」
【遠視】で付近にモンスターがいないか探す。
(特にいないな……昨日もそれなりに倒したし、生き残りの人が倒したってのも大きいのかな)
正門を開き、学校の外へと出る。
「『天壊の太刀』」
優がそう唱えると、光輝く球体が目の前に出現し、黄金の鞘に収まった刀が出てきた。
「よっし、これでいいかな」
(戻ってきたら、優姫達のところに行くとするか)
この2日間見ていないことが少し心配になったが、瑞姉が何も言っていなかったし、特にいつもと変わった様子はなかったので大丈夫だろう。
「ふぅーっ、今回も勝てたな」
グレイスパイダーを倒し、額の汗を拭った。
(今回倒したことで、俺のレベルは37になった……後三つで40だな)
取り敢えずの目標であるレベル40を達成できそうだ。
(次は……向こう側の廃墟にいたかな)
今は廃墟になっている駅前の四階建ての雑居ビル。そこに、グレイスパイダーが巣を作っていたはずだ。
駅前までは歩いて大体5分ほどなので、比較的近い。
歩き出そうとした時、腹が鳴った。
「……飯を食ってからにするか」
腹が減っては戦はできぬというやつだ。近くにあったコンビニを見つけ、パンを食べた。
そして、改めて駅前へと向かうのだった。
「あれ……いないな……」
駅前に到着したはいいものの、モンスターがいない。
雑居ビルに着いても、大きな破壊の跡のようなものがあったが、グレイスパイダーがいなかった。
(破壊の跡があるってことは……俺以外にも倒してる人がいたのか?いや、この大規模な破壊は……人間とは思えないが……)
そう、雑居ビルの四階部分が、上半分を斜めに切られたように崩れている。
相当な強さの人がいたのだろうか。それとも、自然に崩れて、それでグレイスパイダーが巣の位置を変えたのだろうか。
(ま、調査だけはしておくか)
念のため、雑居ビルに入り、探索してみる。
しかし、特にこれといったものはなく、ただ物が散乱し、血が地面に付着しているだけで、モンスターはいなかった。
「うーん、四階にも何もいないか……本当に何があったんだ?」
階段を登り、四階まできたものの、何もいなかった。そして、戻ろうと階段の方へ振り向いたその時。
ピロン
「え?」
スマホの通知音のような音と共に、白い画面が目の前に表示された。
ーーーーーーーーーーーー
:緊急通知:
ごめんねぇ、びっくりさせちゃったかな?
若干緊急性があるかなー、って思ったからさあ、緊急用の通知使ったんだけど……
君、そこにいると2秒後に死ぬよ
ーーーーーーーーーーーー
(は……?)
謎の通知に困惑した次の瞬間。背筋に悪寒が走った。
「ッ!?」
半ば本能的に横に飛び退く。すると、先ほどまで背にしていた柱が両断された。
「キリキリィィ……イマノデ、シトメルツモリ、ダッタ、ンダガナ」
黒い包帯のようなもので全身を包み、両手が剣になっている身長180cmほどの細身の男がいた。
男の頭部と思われる部分からは、触覚のような長く細い刃が伸びていて、まるでキリギリスのようだった。
(何だこいつは……!?人間か?いや、モンスターなのか!?取り敢えずーーー【強化解析】)
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名前 キリスホッパー モンスターランク:D
性別 男 Lv.77
体力 506
魔力 684
筋力 571
耐力 574
敏捷 486
総合 2921
SP 76
スキル
情報
・東京都立川市エリアのボス。
・魔神軍の准尉。
・少尉以上の階級の魔族に従う。
・基本的に、両手の刃と、触覚刃を使い対象を切り刻む。
・プレイヤーのキル数:2508
・プレイヤーによるキル数:0
・1時間前、『グレイスパイダー』をキル。
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ちなみに、モンスターのランクは、〝総合〟によって決められています。
G級 1〜100
F級 100〜500
E級 500〜1000
D級 1000〜????
次話「キリスホッパー」は1月6日8時投稿予定です。




