考察と現状 1
長くなった為、二話に分割します。
「A級やS級でも勝てる気がしないが……SSS級か……なければいいが……」
優は保健室のベッドの上で、一人そう呟く。
D級のサイクロプスでさえ、あの強さだった。仮にD級より上のランクのモンスターがいるエリアの人間は全滅していてもおかしくはない。
自分たちだけ助かっても、食糧を作る人がいなくなっては意味がない。ここは住宅街だ。農地や漁港など存在しない。
(まあ、全世界には75億人以上人がいるんだ、俺以外にもボスを倒せる人はいるだろう)
そう思い、一旦考えを食料の問題へと変える。
「今のところ、食糧は……空き家とかから取ってくればいいか」
現在、食料問題というのは深刻である。非常食をかき集めれば、数ヶ月は持つかもしれないが、それ以上は絶望的であろう。
それに、水も問題である。浄水施設に、それを動かす電気も回復させなくてはならない。しかし、モンスターがいる状態でそれは無理だろう。つまり、その区域のモンスターを全て倒す……その為には〝ボス〟を倒さなくてはならない。
ゲームマスターとやらは、これを理解して言っていたのだろう。
「つっても、どうしようもねぇよな」
(日本の全土どころか、本州や関東……いや、東京都だけでも全てのボスを倒すのはかなり難しい)
命がいくつあってみ足りないだろう。俺のスキル【世界を渡る者】であれば可能かもしれないが、そもそも死んだら本当に発動するのかすらまともに分かっていない。
そんな状態で、大量のボスを倒すなど、正気の沙汰ではない。
(だがそれをしなかったら、今のままだと食糧不足で死ぬだろうな……)
先のことを考えれば考えるほど、気が滅入ってくる。
「農業関連のスキルでもあればいいんだが……」
スキルというのは、戦闘に偏っている気がするが、食糧に関連する固有スキルを持っている人がいるかもしれない。
それに、【気配遮断】などの隠密系スキルを使えば、バレずにボスを後ろから奇襲で倒せるかもしれない。
(けど、そう上手くは行かないよな……)
サイクロプスとの戦闘で獲得した称号【対魔の解放者】は、魔族に対する攻撃+20%とという効果とは別に、何処にいてもボスに認知・敵視されるという副作用のような効果を持っている。
どの程度かはわからないが、認知されるならば隠密に行動しても意味がないだろう。
「まあ、今は考えるだけ無駄だな」
そう呟くと、ベッドに再び横になった。そして、目を閉じて寝ようと思った時、声がした。
「優、声が聞こえたのだけれど……起きたの?」
どうやら声から判断して、瑞樹のようだ。ベッドの周りにはは薄い水色のカーテンが張られている為、向こう側の様子を見ることができないのだ。
優は左腕を庇いながら、右手でカーテンをシャッと開ける。
「うわ、眩しっ」
保健室の窓から入り込んできた光に思わず目を細める。空が赤く、どうやら、夕方のようだ。
「良かった、目を覚ましたのね……」
どうやら保健室には、優と瑞樹以外には誰もいないようだった。
「瑞姉、心配してくれてありがと……あー、瑞姉、髪の色変わった?」
瑞樹はいつも通りポニーテールだが、髪の色が地毛の黒から黄色に変わっている。
念を押しておくが、金色ではなく、黄色である。
「この髪は……昨日サイクロプスを貴方が倒した時、私の固有スキル【雷鳴の支配者】が、【雷鳴の理王】に進化したって表示されて、目が覚めたら髪の色が変わってたの」
「成る程……そんなことがあるんだな」
ということは、俺の固有スキルも進化すれば、もしかしたら元の姿に戻れるかもしれない。まあ、ないとは思うが。
そんな淡い期待を抱きつつ、優はもう一つの気になっていたことを聞いた。
「瑞姉、俺ってどれくらい寝てた?」
「昨日の夕方からだから……丸一日寝てたわね」
丸一日……そんなに寝ていたのは人生で初めてだ。それに、丸一日経ったのなら、何か変化でもあるんじゃないだろうか。
「マジか。そんなに?」
「頭から結構出血してたみたいだからね……それと、左肩が完全に砕かれていたみたいだから、あんまり動かない方がいいわ」
「ああ、ごめん。瑞姉、この1日の状況、教えてもらってもいいかな?」
「そうね、貴方は知らないものね。いいわ、まず……」
瑞樹の説明は以下のようなものだった。
①サイクロプスの襲撃から生き残ったのは優や瑞樹、優姫を含めて12人。
②この町のボスが討伐されたことは、現在生き残っている全ての人々に通知されたと思われる。
③サイクロプスがいなくなった為、現状この町で確認されているモンスターの中で、1番強いモンスターは〝グレイスパイダー〟となった。
④現在、瑞樹、優姫を含め5人がこのエリアに残ったモンスター(主にゴブリン)の討伐に参加している。
⑤この街に残っているモンスターの数は、大体200体ほどである。その内、ゴブリンが150体以上、ゴブリンロードが30体ほど、グレイスパイダーが20体弱と思われる。
「ーーーーと、こんな感じよ」
「ありがと。残ったモンスターの討伐って、全員でやらないの?」
「あまり大人数で行っても、混乱が生じるだろうし、戦いたくない人、戦いに向いていない人もいるのよ。特に、サイクロプスを見た後だと、ね……」
瑞樹は気不味そうな表情でそう言う。同時に、少し重たい空気が流れ始めた。
空気を変えるため、優は話を進める。
「ああ……それで、モンスターの討伐ってどんくらい進んでるの?」
「今日一日で……ゴブリンロード5体、ゴブリンを30匹ほど倒したわね」
「意外に進んでるんだね。でも、グレイスパイダーはどうするの?」
「グレイスパイダーとまともに戦えるのは、今のところ優と、私だけね」
「あれ、瑞姉そんなに強くなってたの?」
「サイクロプスとの戦いで、アシスト判定でももらったのか、レベルが20に上がったのよ」
「ちょっと、見させてもらってもいいかな?」
「いいわよ」
「ーーー【強化解析】」
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名前 天上 瑞樹
性別 女 Lv.23
体力 80
魔力 86
筋力 80
耐力 84
敏捷 143
総合 473
SP 5
スキル
固有 【雷鳴の理王】
派生 『電熱無効』『麻痺無効』
『天使の雷霆』『雷鳴の太刀』『雷鳴閃』
主要 【身体強化Lv.2】
【解析Lv.1】
【魔力強化Lv.1】
【敏捷強化Lv.2】
情報
・〝敏捷〟特化の速攻アタッカー。
・所持武器【雷鳴の理王】により『雷天の太刀』(補正:筋力+45 敏捷+55)
・キルする時は電気や麻痺への耐性をつけて挑むのが定石だ。ただし、電気系統や熱系統は通用しないので注意すること。
・このプレイヤーは『雷の理』に干渉する力を所持しています。キルすれば【世界を渡る者】で奪うことができます。
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次話「考察と現状 2」は15時投稿予定です。




