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第七話 世界はどこへ行っても同じ

俺は吉岡透の友人、黒崎豊だ。

透とは中学時代の部活で一緒だったのがきっかけで仲良くなった。

笑うツボが同じというか、話題が似てたから話しやすかったのもある。

あと、こいつとても優しい奴なんだ。


俺の身長はクラスで一番低い部類だと思う。160センチあるかないかだ。

女子の方が高い時もあって、よく弟扱いされることもある。

大人になれば伸びるだろうと親にも言われたけど、高校二年になったいまでも160センチのままだ。

コンプレックスの時もあったけど、今思えばこれも俺の個性だなと思うようになった。

その理由は透がそう言ってくれたからだ。


透曰く、俺はどうやら周りがよく見えている、いわば洞察力が優れているらしい。この子はこいつのコト好きだなとか、この子は嫌ってるなというのが雰囲気で解る。

だから、俺は気付いていたんだ、圭吾は友里乃ちゃんのことは好きではないということ。友里乃ちゃんも圭吾に対しては異性として見ていないなということ。でも他の連中はそうやって茶化す。

友里乃ちゃんが俺や透と話していると周りの女子の視線も気になることもある。

これは気を付けてあげなきゃなと直感で思っていた。


帰りのホームルームが終わって帰ろうとしたときだった。


「ねぇ、弥高さん。ちょっといいかしら?」

「……はい?」


友里乃ちゃんに声を掛けたのはクラスのカースト上位、黒髪ストレート、まるで某モデルのような足の長さをお持ちのお嬢様キャラ、粒浦琴実(つぶうらことみ)だ。

俺は荷物をカバンに詰めながら彼女たちの会話を盗み聞きしていた。こういう時に圭吾がいないし、透もいない。何かあっても助けられるのは俺しか適任者がいない。

粒浦とその友達二、三人と友里乃ちゃんが教室から出ていく。たしか粒浦は圭吾のことを狙っていなかったか? 確かそうだ。となると、これは体育館裏に連れていかれるやつかもしれない。

そう思って俺は彼女たちの後をばれないようについていった。



案の定、体育館裏というよりも、今日の昼にご飯を食べた中庭の木が生い茂っている誰にも見られないようなところへ来ていた。俺は木に隠れて彼女達の様子を伺う。


「あの、なんでしょうか…」

「あなた圭吾様の何? なんで編入してきたての貴女が圭吾様のそばにいられるのかしら」

「け、けいご、様?」

「ワタクシたちでも近寄ることを許されていないのに、あなただけ特別なのはおかしいですわ」

そうよそうよと粒浦の後ろで控えている女子たちが応戦している。

友里乃ちゃんが少し小さくなって震えているように見えた。

「圭吾様はみんなの圭吾様なの、貴女だけのものではないことは知っておいていただきたいわ」

「でも…トミーは幼馴染で別に恋人ではないんです。私は、透くんが…」

「そうやって前の学校でも男をたぶらかせていたんじゃないの?」

「初めて教室来たとき男子たち興奮してたもんね~?」

粒浦の家来が友里乃ちゃんに攻撃する。

「ちが……してない………してな………」


ダメだ。これ以上。


ピロン

「誰?!」

「なーにやってんのかなーと思ったら脅してたから証拠写真撮ってた~。てか、お前ら何やってんの?」

「何って、この子が圭吾様に気軽に話かけているから注意してただけよ!」

粒浦家来もそうよそうよとうなずいていた。そういう団結力は俺は嫌いだ。

「だからって別にこんなとこじゃなくてもよくね?」

「別にあなたには関係ないでしょ? 行きましょう」

粒浦はふんっと怒りながらその場を立ち去った。


「あの、大丈夫? 友里乃ちゃん」

「は、はい……あ、話しかけないほうが……」

なんだろう、壁を造られて拒絶されている感じ。

「もしかして、前の学校でも同じことあったん?」

「………!!!」

びくっとしたあと大きな瞳に涙があふれていた。

そして我慢していた気持ちがあふれてきたのだろう。泣き出した。

「…何も、していないのに、ただ、男の人のそばにいるだけで……話しているだけで…媚びているって言われて……」

座り込んで泣きながら話をする。少し過呼吸ぎみになっていて苦しそうだ。

「うんうん。いいから、落ち着いて。落ち着いて」

俺は友里乃ちゃんを抱きしめて背中をゆっくり上下にさすった。ふーふーと呼吸を整えながら友里乃ちゃんは落ち着こうとする。


ピロン、ピロン

俺のスマホからメッセージ受信の音がする。

友里乃ちゃんが、不思議そうに僕を見る。

「さっきの写真、圭吾と透に送った。たぶん有城にも伝わる。大丈夫。俺らがいるから」

安心したのかさらに泣き出した。


「ユタ! なにがあった?!」

走ってきたのはやっぱり透と圭吾だった。

「友里乃ちゃんが粒浦たちに呼び出されてちょっとな」

「友里乃、大丈夫か? ごめん、そばにいてやれなくて」

「大丈夫……私は、うん。ちょっと落ち着いた」

「何があったんだよ。ユタ」

「とりあえずベンチにいこう。有城にも伝えといて」

俺はみんなを中庭のベンチへと連れて行った。


4人座ってとりあえず状況説明をすることにした。

「粒浦って非公式の圭吾ファンクラブ作ってるじゃん?」

「…え? そうなのか」

「本人のお前が知らないってなんだよ。それでファンクラじゃないしかもこの学校に編入したての子が圭吾と気兼ねなく話しているのをみて嫉妬したんだろうな」

「あ、でもねトミー、大丈夫だから! 去年みたいになったりしないから」

「……うん。前とは違うから」

圭吾は友里乃ちゃんの背中をさする。

俺には話が見えなかったが、きっとこの学校に編入してくるぐらい同じような目にあったんだろうと推測した。

「あいつら許せねぇな。僕から注意しとくよ」

「透、それやったら逆効果。余計友里乃が被害にあう」

透が少しムッとした顔をする。

珍しい表情だと思った。透は滅多に怒らないから。冗談に対してのツッコミみたいな怒りはあるけど、今している表情は心がゆがんでいるような感じがした。

「じゃあどうすれば弥高さんまもれるのさ」

「過保護すぎるのは余計あいつらをゆがませるからな~、いつも通りでいんじゃね? もしくは…」

この提案は友里乃ちゃんには酷だなとおもってさえぎった。

「なんだよ、ユタ。何か策があんの?」

「粒浦たちと友達になるという策。でも難しいかも」

「………なりたいです。私、前の学校では友達作れなかったから。でも今はトミーもいるし心の支えの透くんがいる。そして」

友里乃ちゃんはだしきった涙をぬぐいて俺をみる。

「ユタくんというたくましい友達がいるから、私大丈夫です!」

ニコッと笑う友里乃ちゃんが目から離れない。

「お、おお! こんなチビだけど、女子を守るナイトにはなれるぜ」

ごもりながら冗談まじりに返事をする。

「だから、もし何かあったら、俺たちに言え、な?」

「はいっ」

「姫、大丈夫!?」

「琉衣くん! 大丈夫です!」

「とにかく、あれだ。圭吾とは距離を置いた方がいいかもしれないな」

「うん……。寂しいけど、そうしてみる」

「どうしたの?! やっぱり付き合ってたの?!!」

「「「ちがうわ!!」」」


友里乃ちゃんの気持ちが落ち着いたので帰ることにした。

「ねぇ、ユタくんはなんであそこにいたの? もしかして、ついてきたの?」

「まぁな。粒浦が呼び出すってことは圭吾関連だろうなって思ったし、少し心配になってさ」

「ユタくんよく見てるね。ありがとうね」

さっきより柔らかく笑う。……あれ、まって、ちょっとまって。

「ま、まぁな。また何かあったら言えよほんとに。俺も粒浦たちの行動は見ておくから」

「ふふふ、ユタくんも優しい。透くんのそばにいる人はみんな優しいね」

「ああ、あいつのやさしさに俺も救われたからな」

「解ります。それ! 優しいのに恋をしないなんて、なんなんでしょうね」

「友里乃ちゃんは本当に透のことなんでも知ってるんだな」

「はい、推しのことはなんでも知っておきたいですから」

嬉しそうに笑う。さっきまで泣いていた子とは思えないほどの笑顔だった。

そんな顔ばかりするから、俺まで笑顔になる。優しい気持ちになる。

なんだろうな、これ。

「あいつの恋愛事情、どうにかしてやりたいな」

「ほんと、そうですね。透くんには幸せになってほしいです」


クスクスと笑いあう。

それをみた圭吾が

「いちゃついてないで、帰るぞ二人とも」と茶化すから

あいつには今度昼ご飯をおごってもらおうと思った。


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