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第五話 恋はしないと決めたのに

「おはようです! 透くん!」

元気いっぱいに挨拶してきたのは

弥高友里乃さんだ。サラサラの髪がかぜに靡く。


「おはよう。今日も元気だな」

「はい! 透くんを肉眼で見られるだけで私幸せなんです!」

いやもう発想が謎すぎる。

「…ねぇ、弥高さんは僕に告白してきた割には普通だよね? 僕のおかげで引きこもりから脱出できたって聞いてたけどそれぐらい好きになったんだよね?」


弥高さんはキョトンとする。

え、僕変なこといったかな?


「確かに透くんのお陰で私は元気になれました! 透くんに会ってなかったらって思うと怖くて寝れません…!」

手のひらを両頬にあてて顔を覆っている。

「僕、なんもしてないよ?」

弥高さんはクスッと笑う。

「何もしてなくないですよ! ちゃんと存在してるじゃないですか! 生きてるじゃないですか!」

驚いた顔で僕をみる。愛が重いけどなんか照れる。僕の存在理由が認められた気がした。

「私は透くんの幸せを1番に願います! だから透くんが本当に好きになった運命の人が現れたら私は全力でサポートします!!」


いやいや、矛盾してないか?

「まって、弥高さんは僕のこと好きじゃないのか?!」

「はい! 好きですよ! でも違う好きです!」


僕は、ハッとして周りを見渡す。

登校中の学生たちがくすくす笑っている。

いやいやまてまて、これじゃまるで僕が弥高さんのこと好きだって思われる!!

「透くんは、アイドルとか好きな女優さんとかアニメキャラとかいますか?」

僕は周りのひそひそくすくす笑い声が気になりすぎて焦っている。待ってくれ違うんだ!

早く訂正しないと、僕が本当に弥高さんのことを意識していることになってしまう…!

「私にとって透くんはそういう類なのです!」

弥高さんは大きな声で叫ぶように言った。

その声で我に返る。え、そういう類ってなに??

「つまり…弥高さんは僕のことを……?」


「推しです!!」

弥高さんは万歳の姿で、笑顔で、大声でいった。


…………は?

「何を元気に愛を叫んでるんだよ、友里乃」

弥高さんの後ろから頭をこつんとチョップしたのは大あくびをした富井だった。

「トミー! 私やっと伝えられたよ!」

いや愛の告白しましたよてきな感じで言われましても…にしても推しってなんだ?

「そうか、そりゃよかったな」

富井はさらに弥高さんの頭を撫でた。…なんかそれは違わないか?

「なんだそれ。推しってなんだよ。……僕のコト好きとか言ったくせに」

二人のイチャつきを見ていたら無意識にぼそっとつぶやいてしまったのが富井に聞こえたらしい。

「なんだよ、お前、恋はしないってずっといってたのに、意識してんの?」

「はぁ? んなわけねーし。恋だの愛だのしてる暇があったら勉強するっつーの」

「ふーん。じゃそんなに怒るなよ。お前のこと好きだって言ってる人がいんだから」

今度は富井は僕の頭に手を当てて撫でまわす。なんだよ、僕は犬じゃない!

「お、怒ってねぇし。つか、犬扱いすんなっ!」

富井はクスクス笑う。弥高さんは目を輝かせてスマホを僕に向けてきた。


朝一からよくわからない感情の顔をした僕の写真は撮ってほしくないと思った。



教室につき、席に着いた途端僕は「推し」とは何なんだろうとスマホを取り出しググった。


検索ワード: 推し 勝たん


いや、勝たんってなんだよ。勝たないのか、勝つのかどっちだよ。

「なーに難しい顔してスマホみてんの?」

僕の前に座ってのぞき込んできたのは中学からの友人の黒崎豊(くろさきゆたか)だ。

「ユタはさ、推しってなんかわかる?」

「あれだろ? 応援する対象? だっけ?」

「弥高さんは僕を推しだっていうんだけど……」

「ふーーん。なるほど、そういうことだったんね」

「何がなるほどなんだよ~。こっちは好きですってみんなの前で言われて、真剣に断る理由考えて、実はその好きは違う好きでしたって言われた今朝、僕の心境わかる?」

一言も噛まずにいうほど、僕はなんかモヤモヤしていた。

「ん? なんだよ、あんだけ恋愛しないっていってたのに、好きになりかけてんの?」

「ちっげーよ。そうじゃないけど、今までの女子の中ではインパクトある告白だったから…」

あ、推しの意味見つけた。


【推し】

人に勧めたいぐらい好き。

応援したい対象のもの。



「私は透くんの幸せを1番に願います! だから透くんが本当に好きになった運命の人が現れたら私は全力でサポートします!!」


さっきそう言っていた弥高さんの言葉を思い出した。

そういう好きってこと? 僕には未知すぎる。

「確かに~透はアイドルみたいだしな、実は隠れファンがいるのもしれないよ?」

「………は?」

「自分だとわかりにくいからなー。例えていうならば~~~あ、身近にいるじゃん」

ほれほれみてみと言わんばかりにユタは僕の顔を横に向けさせた。


「大丈夫? 立てる?」

「………はい!」

躓いてた女子にイケメンが手を差し伸べる。まわりには赤い薔薇が散らばっているように見えた。

「足元には気を付けてね」

イケメンの放つ言葉のすべてからキラキラ光るものがみえる。

それに対して躓いた女子は目をキラキラさせて頬を赤らめている。


「…かっこよすぎるんですけど!」

琉衣(るい)様尊い…!」

その一部始終を見ていたのは僕以外にクラスの女子たちが見ていて黄色の声が響く。


「相変わらずかっけーなー、有城(あまぎ)は」

ユタは先ほどのイケメンに手を上げてこっちへ招いた。

「おはよう。今日もかわいいね、透くん…」

そいつは僕に近づいてきて、僕を覆うように左手は椅子のもたれるところに右手は机において、おでこがくっつきそうな距離で口説く。そんなことするから女子の黄色い声がさらにボリュームを上げていく。


「きゃーーーーー!!!!」

「めちゃ絵になるんですけど!!」

「琉衣様のサービスショットよ!!」

うるせぇわい。何がサービスショットだよ。


「何? 透、まさかワタシに惚れたの? ごめん。私にはたくさんの子猫ちゃんがいるから」

自分から近づいておいてなんで僕が振られた感じになっちゃってんの?

僕はずっと無言でいたらイケメンは大きなため息をついた。

「んもーーいつもノリが悪いな~透は~そんなんだと子猫ちゃんからもてないよ?」

もてたくないし、そもそもドン引きしてるんだが、僕は。

「透、つまりこういうことだよ。今さっきの女子たちの反応みた? たぶん有城を推している奴らなんだよ。推してるってああいうこと」

ニコニコしながらユタは僕のことを見る。

「なになに? 豊、なんの話?」

「なんでもねーよ」

「透が推しってなんだって難しい顔で考えてたから、有城のまわりを教えてやったわけ」

「あー。なるほど~そうだね。ワタシの子猫ちゃんは私のこと応援してくれてるもんね」

クラスの女子たちを見渡しながら投げキッスをした。やべ、鳥肌が立つ。

「それよりもさ、昨日、転校生に告られたんでしょ? 返事したの?」

「あー、したというか【推しです】ってさっき言われた」

「………なんだ透もワタシと同じになったのか!」

「ちっげーよ!!!」

いちいち王子のようなふるまいをするこいつ有城琉衣(あまぎるい)はユタと同じ中学からの『女』友達だ。周りから付き合わないのかと中学時代言われたけど、僕はそもそもそんな気はなかったし、有城にときめいたこともない。それに、こいつは……。


「透くんの友達さんだ……!」

目をキラキラさせながら僕の近くまでやってきたのは噂の弥高さんだった。

……まずい。そんな顔でここに来たら。

「どうしたんだい? 透に何かされたのかい?」

有城は弥高さんの腰を自分に近づけて右手で顎をぐいっとあげた。

「お、おおおおお応援しているってつたえましたたたたたた」

弥高さんが混乱している。有城が王子モードになると女子は誰もがそういう症状になるのだ。

「それは偉いね。よしよし」

今度はその右手で弥高さんの頭を撫でた。

「ひへぇぁ……ううぅぅ」

弥高さん言葉になってませんよ? それよりこいつら紹介していなかったなと思いこの空気をさえぎるようにゴホンと咳をした。

「あーえーっと、そいつは有城琉衣(あまぎるい)、一応女な。時々そうやって王子モードになるから気を付けて。で、こいつが黒崎豊(くろさきゆたか)、背がちっこいのがコンプレックスだけど、洞察力はやばいから気を付けて」

…気を付けることしかいってない。僕の友達は危険人物だったっけ?

「初めまして、弥高友里乃です。透くんを幸せにするために編入してきました!」

やめい! 語弊を生む言い方するなー!

「黒崎っす! 友里乃ちゃんはこんなやつでいいの? 圭吾のほうがかっこいいじゃん?」

「トミーは、お兄ちゃんみたいな存在なので…へへ」

ん? そうなのか?

「ご紹介遅くなったね、姫。ワタシが有城琉衣だ。アリーでも、琉衣ちゃんでも、琉衣くんでもなんでもいいよ。姫の好きな呼び方でよんで」

また顔を近づけていう。弥高さんの顔は真っ赤になっている。やめてやれ、本気になったらどうする。

「えーと…それでは、ユタくんと琉衣くんて呼ばせていただきます、へへ」

さっきから照れ笑いをする弥高さん。なんか嬉しそうだな。

「あー来た来た。圭吾ーーおっせーよ。何してんの?」

「先生につかまってた」

「圭、ワタシと昼デートしない? 君と歩くと子猫ちゃんたちが喜ぶんだよ」

「やだよ。俺は平和主義なんだ」

「有城、お前の存在だけで女子たちたくさんくるだろ?」

「あながち間違ってないけどね。ていうか、そろそろ女子の制服、ズボン許可でないだろうか」

「有城がズボンスタイルになったらそれこそ俺たちと見分けがつかなくなるぞ」

「こうなったら生徒会長にでも立候補するしかないか……」

「やめてくれ、有城王国が出来上がるのだけは勘弁してくれ………」

「中学の時のやってたしな! 琉衣ならいけるって! 立候補するなら俺一票いれてやんよ!」

「さすが豊。もし生徒会長になったら食堂のメニュー提案してあげるよ」

「めちゃ職権乱用…」


クスっ


「ん? 弥高さん、どうした?」

「ううん、すごく楽しいなって思って。透くんがいつも笑って過ごせているのは、友達のおかげなんですね。私はそれが嬉しいです。楽しい時間をすごしている透くんが間近で見れるなんて…私編入してきてよかったって思います。ありがとう透くん」

顔を赤くして笑いかけてくる。なんだ、なんだろう、かわいいって思ってしまった。

「おーーー? 透が顔が赤くなってんぞ?」

「ほんとだー、珍しい~。ワタシが口説いてもこんな顔にならないのに~」

「やかましいわ、バカ」


不覚にも、本当に不覚にも僕は弥高さんのことを

すごくかわいい女性(ひと)だと思ってしまった。

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