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第二話 好きの形

「あいつな、実は引きこもりで学校に行ってなかったんだよ」

学校の帰り道、僕は富井と一緒に帰る。

帰る方向が同じで1年の時に声をかけられたことが富井との出会いだった。


富井の家にも行ったことあるし

泊まったことさえもある。

だけど【幼なじみ】がいるなんて言う情報はこれっぽっちも聞いていなかった。


「で、お前の写真見せたら顔色変えてさ~お前に会いたいから学校いく!っていいだして。めちゃ単純じゃね?」

普段あまり笑わない富井がクスッと笑った。

え、富井もしかして弥高さんのこと好きなんじゃ?

僕は自分の恋愛事情に関してはわからないことだらけだけど、人様の(友人の)恋愛事情に関しては鋭い。だからそのクスッと笑った顔、お前さては好きだな?

「だからお前には感謝してる。友里乃が学校に行く理由になってくれて」

富井が僕の頭をぽんっとたたく。

「よかねーよ、お陰でクラスのやつらにいじられまくったじゃねーか」

僕はその手を払い除けた。


「で、その幼なじみは? 一人で帰ったの?」

「は? 気になる? あいつのこと」

「じゃ、ねーよ! ひきこもりって、なんかそのー、イジメとかあってたんじゃねーの?」

「優しいなトオルくんは。まぁ、うん。軽めの。といっても本人にとっては重いものかもしれないけど」

弥高さんの第一印象はとても可愛らしい笑顔をする女性だなと思った。清楚できっと成績もいいんだろうなと思う高嶺の花といってもおかしくない人だと思った。

でも昨日のあの発言で僕の思っていた弥高さんのイメージが真逆になった。

お淑やかな高嶺の花が、まさかの大胆な女子高生だとは、本当に思わなかったから余計に驚いたんだ。

でもそんな彼女がなんでひきこもりになんてなってしまっていたんだろうか。


「で、弥高さんは一人で帰ったん?」

「そんなに心配か? さては、告られて意識し始めた?」

「っなわけねーよ。僕に恋愛なんて、以ての外」

「健全な男子高生がそんな事言うなよ」

富井は僕の肩をぽんっと叩いて小さなため息をついた。

「そんなことより、お前の方が……」

僕の肩に置かれた手を払い除けようとしたら前方から何やら目線を感じた。


「…やっぱかっこいい」


電信柱から覗き込むように僕たちのことを見ているのはあの綺麗な長髪で分かった。


「友里乃じゃん」

「ちょ! ばれるじゃない! いわないでよ!」

「…まさか待ってたとか」

「そ、そんな! 手を繋いで帰りたいだなんてそんな! 滅相もないですよ!」

妄想がダダ漏れだ。

そしてなぜかさっきから弥高さんが僕を拝んでいる。

両手を絡ませて、まるで僕は聖母様か何かのように。

「ついでだからどっか寄ってく?」

「は! あそこの喫茶店でパフェデート!」

いやいや僕の意見は聞かないんかい、2人とも。

「お前も行くよな? おれあそこのチョコパフェ好きなんだよ」

「私いちごパフェー!」

なんか2人に嵌められたかのような気分だが、弥高さんはすっごく嬉しそうにしっぽをふる犬のように見えるし、富井は何時になく楽しそうに見えたから、仕方ないと思い、小さなため息をついた。


カランカラン



扉を開けると昭和漂う昔ながらの喫茶店だった

中は薄暗くてピアノのクラシックが流れている。コーヒーの匂いと豆を挽く音がしていた。

僕達は窓際の端の席に座った。

高校生が来るようなところではなさそうだけど、2人ともパフェを食べたいという意欲で周りが見えてなかった。


見えていなかったからだろうか。


「で、え? なんでこの席順?」

僕の横に弥高さんが座って、富井は向かいに一人で座っている。

「透くんはどれにする? 私このいちごパフェにする!」

「ちょ、お前ら、俺にもメニューみせろや」

「トミーはいつものチョコパフェでしょ?」


いつもの……?


「富井はよくこの店来るのか?」

「んーー、まぁ友里乃の付き合いでだけど、どした?」

「いや…別に」

僕は富井と長い付き合いだし親友だと思ってる。でもここへ来たのは初めてだった。

「透くんは決まった?」

「僕はこれでいいよ」

僕が選んだのは抹茶パフェだ。苦渋のものが食べたい年頃なのだ。

元気よく弥高さんが店員を呼び、注文をする。

「そうそう、こいつが友里乃のこと心配してたぞ」

「え?!」

「… いや、こいつから引きこもりだったって聞いたから…別に深い意味では……」

僕はごもりながら水を飲む。

「心配してくれたの? うれしい…!」

目をうるうるさせながらまた両手を絡ませて拝んでいる。僕は一体なんなんだ?

「実は、女子たちからたらしだの他の男に出す卑怯な女とか言われてて、挙句の果てにクラスのみんなに無視されてシカトされて…ま、そんな空気の中には居られないよね」

クスッと笑いながらコップに入ってる氷をころころ転がしながら弥高さんは話し始めた。

「聞いてよ透くん! 私、他の男に手なんてだしてないのに、可愛いからってだけでそんなこといわれるんだよ?! ひどいよね?!」

弥高さん、そういう所なのではないだろうか?

僕は同情できなくて、曖昧な返事をする。

「苦しくなって学校行くのやめたのね。で、そんな私を気にかけてちょくちょくトミーが私んちに来てくれて」

やっぱり付き合ってるんじゃないか?

僕じゃなくて富井のことが好きなんじゃないのか?

ていうか富井も、弥高さんのこと、好きなんじゃないのか?

僕の中で疑問符が何個も浮かんできている。

「その時に、この写真みて、私の世界は薔薇色に変わったんだよ……! はぁ! 尊い!」

スマホを取りだし操作をし始めたあと、弥高さんは僕の目の前に画面を向けてきた。


その画面には体育祭で勝ち取った時の嬉しそうな楽しそうな顔をした僕だった。

え……なにこの写真、僕知らないんだけど。


「この髪型、まるい後頭部、それに巻かれているハチマキ、そしてこの可愛らしい笑顔…! 最アンド高です…!」

「…まって、なんで君がその画像持ってるの?」

「だから、私の様子見にトミーが来てくれた時だよ?」

んーーーー、待ってくれ?

「おい、お前この写真持ってたのか?」

「友里乃が欲しいゆうから」

いやまてまてまてまて、ん? ん??

僕がおかしいのか? その写真って僕は撮られたことを知らない、つまりは盗撮されたものじゃないのか??

「去年の1年の時のだよね? これみて透くんと話してみたいって思ったの!」

「だからお前のお陰で友里乃は学校に通いたいってなったわけ。まぁ編入試験とかで時間かかって2年になってからの編入になったけどな」

「頭良くてよかったなとこういう時に思うよ~」

弥高さんはさらにスマホを操作しながらカメラロールの写真を見ている。

「ちょっとまって、色々整理したい」

「は? 今話したことが全部だぞ?」

「透くんが悩んでる……! 尊い!」

パシャと音がする。 盗撮された。

「つまり、僕は弥高さんを直接的に救ってないってことだよね?」

「ん? そうだね! 昨日初めて実物を拝見したよ!」

そんな自信ありげに話されても…。

どこかで会ってたのかと思ってたけど、ただこの盗撮された僕の写真をみて一目惚れしたと言うことなのだ。僕の横で弥高さんがニンマリしていると注文したパフェ達が運ばれてきた。

「まぁ、そういう訳だから、まずは友達から仲良くしてやって」

富井がこの話に終止符をうった。

まぁ友達からなら全然ほかの女子たちとは変わらないけど、弥高さんは大告白してきているわけで。

ちょっと意識してしまう僕がいる。


でも僕の中で恋愛はほぼない。


だから弥高さんには本当に申し訳ないと思ってしまう。

彼女の気持ちには答えられないから。受け入れる気持ちにはならないから。

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