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チート監視官・チコ

 今回のマルチ(チート化対象者)は『外れスキル』か。

 

 俺はチート監視官のチコから渡された資料を確認しながら現場に向かっていた。


 「たいしたことなさそうだな」


 俺は誰に言うでもなくつぶやくが、さっそくチコから通信魔法でツッコミが入る。


 (ちょっと、ゲキ。油断しないでよ。まだチート化していないって言っても、いずれは凶悪なチートになる存在には違いないんだからね)


 (わかってるよ)


 俺は面倒くさそうに通信魔法で答える。


 どうも俺の相棒は歳の割には口うるさい。お前は俺のオカンかよ。


 (聞こえてるわよ?!)


 おっと、通信したままだったな。上手く使わないと考えていることが勝手に伝わるから厄介だな。


 どうもこの通信魔法っていうのは便利だが融通が利かない。まあ、魔法は開発者の性格が出るって言うからなあ。


 (どういう意味よ!)


 (いや、こんな便利な魔法を開発したチコさんはとても素晴らしいということですよ)


 (ふふん、それほどでもあるけどね!)


 ・・・単純なヤツ。


 (なんですって!だから聞こえてるって言ってるでしょ!)


 うーん、俺のような純真な人間はこういう魔法に向いていないんだなあ。どうも切り替えが難しい。つい、本音を伝えちゃうぜ。


 (誰が純真よ、誰が!)


 (俺だよ。本気で思ってるからこそ、こうやって伝わってるんだろう?俺はチコみたいにうまく心の声と建て前を切り替えられないんだよ)


 (あたしだって別に心の声と通信を切り替えてるわけじゃないわよ。いつも本音で話してるわよ。本音で言っても問題ないってことなのよ)


 勝ち誇ったように言うチコに俺は苦笑いする。こういうところは年相応に子供っぽい。

 と、まあこれも伝わっているんだろうな。


 (・・・伝わってるわよ。あたし、ゲキの相手をすると他の人の倍は疲れるわ)


 (それなら思ってることが筒抜けにならないような魔法にすればよかっただろう。この魔法チコが作ったんだろ?)


 (しょうがないでしょ。もともとは一方的に相手の本音を聴く盗聴用だった魔法を改造したんだから。その名残で通信中は心で思っている事がそのまま伝わってくるのよ。改造するのは結構大変だったのよ?術式組み替えたりしてお互いの意思疎通ができるようにしたんだから。しかもそれが対象者以外には傍受できないようにしてるんだからね)


 チコは簡単に言ってるが魔法の術式を変えるなんて普通はできない。

 何十年も研究を重ねた名高い賢者が一生のうちで一つの魔法の術式を変える事できるかどうかで、少なくとも「結構大変」くらいでできるものではない。 


 それができるって事はこいつもある意味チートだよな。


 もしかして取り締まった方がいいのか?


 俺はチート取締官としての職務を意識するが・・・。

 

 ・・・まあ、チコは引きこもりだから大丈夫か。


 世の中に影響を及ぼすようなチートになりようがないな。なにせこいつは部屋から一歩も出ないからな。


 (誰が引きこもりよ!ちょっと部屋の外に出るのが面倒なだけじゃない!)


 (いや、それが引きこもりだぞ?)

 

 もしかしてこいつ部屋から出るのが嫌でこの通信魔法を開発したんじゃないのか?


 (ぎくっ。そ、そんなわけないでしょう!)


 なんか語尾がめっちゃ高い声になってるぞ。この通信魔法はちゃんと声の質まで再現しているから相手の感情もよくわかる。

 

 (とにかく!あたしはインドア派なだけで引きこもりじゃないからね!たったの3年間部屋から一歩もでていないだけで引きこもりって失礼しちゃうわ!)


 まったく説得力がないんだが。


 (どこがよ!説得力の塊よ!説得チコちゃんとはあたしの事よ!)


 もはや完全にキャラ崩壊してるな。誰だよ、お前は。ていうかもう俺が通信魔法をつかってなくても普通に会話してるじゃないか。


 (とにかく、仕事はちゃんとしてよね!そうしないとあたしの責任になっちゃうでしょ!)   


 うん、やっと本音が出たな。説得チコちゃん。


 (ゲキは腕はいいけど性格は最悪よね。ほんと腕だけはいいんだから唯一の取り柄である仕事を頑張らないとただのクズ野郎なんだから)


  チコちゃん、本音がだだ漏れなんだけど・・・。


 (冗談よ。とにかく頑張ってね!)

 

 プツン。


 チコは笑いながら激励して通信魔法を一方的に切る。


 まあ俺の腕は信用してくれているのだろう。俺もチコの管理官としての能力は信用している。今回もうまくサポートしてくれることだろう。


 チコとのいつものやり取り(お約束)を終えて俺は再び資料を確認する事にした。


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