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プロローグ

チート―それはある種の中毒性をもった甘美な誘惑である。

By ナ・ゲキ



 この世に無限に増え続けるチートたち。


 彼らはあらゆる場所、あらゆる時代に無数に発生し続けていた。


 非常識なほど圧倒的な暴力で他者を蹂躙する快感。


 相手からしたら理不尽としかいいようがない事がおこりまくる幸運。


 よくよく考えたら自らの行動にもかなり問題があるのだがそんな事は棚に上げて、その世界の実力者を逆恨みして、罠にハメて屈服させる喜悦。


 その時代にはそぐわない知識を持ち込んで、本来なら全く大したことのない知識(自分が元いたところでは常識ともいえる知識)にも関わらずそれを知らない者たちに対して、さも自分が偉いかのようにふるまい、内心ではバカにして、見下す快感。


 明らかに自分が過ごした地域よりも戦力レベルが低い地域に赴いて、「え?これが普通ですけど」とか言いながら、お山の大将になる悦楽。


 そんなチートに魅せられる者は多い。


 しかし、たいていの者は憧れるだけで自分自身がチートになりたいとは思わない。


 それが正解だ。傍から見ている分にはいいが、もしチートに一歩足を踏み入れてしまったらその時点で即まともな人生を歩めないのだ


 チートによって一時の万能感は得られるだろうが、それは所詮、幻、虚像のようなものだ。周りの人とは違い過ぎる力を楽に得てしまったら、それは不幸でしかない。


 人はそれを化け物と呼ぶのだ。


 どんな偉業を成し遂げたとしてもチートの力を借りていては、それは借り物の実績にすぎないのだ。


 どんな分野でもチートを使わなかった〔本物〕の残したモノには及ばないだろう。


 チートに頼らなくても自らの能力と努力だけでチートの偉業を超える者はいる。


 しかし、能力と努力だけで地道に頑張っていた奴があと少しで何かを成し遂げる直前にチートで増幅された力に不条理に吹き飛ばされる事があるもの事実だ。


 もし、そこでチートが現れなかったら得ていた名声を横から現れたチートに無双され簡単に奪われるのだ。


 これは不幸だがそれは運命なのかもしれない。冷たいようだがチートに負けないだけの圧倒的な力をつけておくべきだったのだ。


 しかし、これらの事は所詮は雲の上の者達のことで大多数の一般人には関係ない事だ。

 

 人は安定した生活を求める。目立つ事や危険な事は他の者がしているのを見たり聞いたりするくらいがちょうどいい。危ない事は他人にやってもらう方がいいのだ。


 だから偉業を成し遂げたチートたちを賞賛しながらも(自分はああいうふうになりたくない)と思うのだ。


 そして(どうせなろうと思っても自分のような普通の者はなれないけどね)と警戒心を緩める。


 だが、それは大きな勘違いで彼らはチートの危険性について気が付いていないだけなのだ。


 チートへの誘惑はどこにでもあるのだ。そして、チートは自らをチートではない安全な存在のように思わせて近づいてくる。


 『安全安心だよ~。健康にだって悪くないよ~。世界のためだよ~。あと、確実に儲かるよ~』


 そして彼らをチートに変えていく。


 中にはチートの危険な中毒性に気付いて、一度チートから離れていくものもいる。


 チートの力に頼らない。自分の意思をもってしっかりと、チートを使わないで地道に頑張っていく。そう決意して。


 しかし、多くの者は再びチートの誘惑に勝てずに再びチートに戻ってしまう。


 もしくはチートを遠ざけた健全な生活をしていたにも関わらず、いつの間にかチートにハマった生活に戻されてしまう。


 そう、チートとは一度ハマってしまうとなかなか抜け出せない危険な存在なのだ。


 かなり意志の強い者でも一度味わったチートの万能感と多幸感にそれを使わずにいられなくなっていく。


 そしてチートは一度ハマった者にその正体を隠して巧みに近づいていく。その味を知っている者を落とすことが簡単だとわかっているからだ。


 更生していた者が忘れていたチートの無双感に溺れ、再びチートに染まっていく例は後を絶たない。


 そしてチートを増やす事によって世界を混沌に陥れていく。


 そんなチート化から世界を守っている者たちがいる。


 チトリ―それはチート取締官の俗称である。


 チート取締官はそんな世界中に発生するチートたち(外れスキル、転生、引退、転移etc.)を取り締まって、平和裏に解決するために働いている。


 そんなチート取締官の一人、ナ・ゲキ。


 この物語はナ・ゲキがチートを(できるだけ)穏便な手段で取り締まる記録の一部である。


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