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樹海

西村瑞穂は単に、バイきんぐの西村瑞樹さんに憧れがあったからです。まあ、あとせっかく名前西村だし。内さまでのツイストとか最高に面白かったし。

SUVの車内から外の砂漠を眺めていると、まるでダカールラリーのようだった。いや知らないんだけど。イメージ。で、柄にもなく少し興奮した。

「んで、改めて聞くけどどこから来たの?」

運転席の男が運転しながらバックミラー越しに聞いてきた。彼の名前は五代といった。五代弥。ひさしというらしい。へー。

「いやあ、それがわからないんですよおー」

後部座席、隣に座っていた佐々木が愛想よく答えている。ほんとこいつマジで。外面が。外面大将がよお。なんでその外面を私には向けない?少しも。これっぽっちも。ほんのこれっぽっちだって。


「じゃあ・・・むぐむぐ・・・私達と同じですねえ、五代さん」

佐々木のその更に隣、反対側の窓側、そこには私達と同年代くらいの女性がいた。こっちは小国分薫という名前だったはず。さっき砂漠の中のコインランドリーに居たらSUVが来て、それで救助来たみたいな感じになって、で、その時色々と言われたから、多分。確か。いや、それにしても後部座席に三人座るってことあるか?助手席空いてるじゃんよ。誰かそこに座ればよかったじゃん。ああ、いやでも、佐々木が、

「この真ん中のこのもっこりの所がいい!」

って言ったんだよな。


当然私は、何言ってやがるーお前ー!って思ったけど。


「むぐ。私達も気が付いたらなんかこの変な世界に居てですね。むぐ」

「いやあ、全然わからないんだけどさあ」

なんか急に休暇が出来たから、ちょっと温泉かあるいは山にでも行ってキャンプしようと思って車走らせてて、それで気が付いたらいつの間にかこの世界に居たらしい。

あとちなみに、小国分薫嬢はさっきからずっとがんもどきを食べてる。むぐっていうのはその効果音。


「それにしても、むぐ、五代さん。これだと奴等の攻撃という事ではないみたい、むぐ、ですね」

「ああ、そうねえー、たまたま近くに居たとかっていう訳でもないみたいだし」

五代さんと、薫さんは時々なにやらわからない話をしていた。私はそういう時聞こえないみたいな顔をする。窓の外を見て知らぬ顔をする。そういうのが得意だ。だって何か変な事して車降りることになっても困るし。


「なんか原因に身に覚えでもあるんですか?」

しかし、佐々木はそんなの関係ない。佐々木はもう小島よしおばりだ。まあ、むしろ今回は我慢した方だと思う。何度かスルーしてたもん。だから後で褒めてあげてもいいくらい。いつもは大体初手で行くもんな。先制攻撃と言わんばかりに。召喚酔いに影響されないにもほどがあるもんな。山だしてすぐ怒り狂うゴブリン出してアタックみたいなそういう感じだもんな佐々木って。


「あー」

運転している五代さんは困ったような声を発した。そんでバックミラー越しにチラリと私を見た。

「どうなの?」

みたいな。これもまあよくある。そういう時私はクシャって顔になって笑顔を作る。ギャグマンガ日和の一寸法師の話みたいにクシャって。それだと笑顔を相手に向けれて印象もいいし、クシャってなってるから相手の事も見えないし。重宝する。あと、仕方ないんですこういう奴なんですっていうのもなんとなく伝わる。


「えーっとねえ・・・」

今回もそれが正しく作用したのか、五代さんはどうしたもんかーみたいな感じになった。

「何か原因の一端でも知れると、こっちはメンタル的にもありがたいんですけど」

何がメンタルか。佐々木この野郎。お前何もメンタルに来てないでしょう?さっきだってセクシーパロディウスみたいに寝てたでしょ?クラクション慣らされてもちっとも気が付かずにグーグー寝てたでしょうによ。グースカみたいに。馬鹿みたいに。馬鹿みたいな顔で。よだれ垂らして。


「むぐ、実は私・・・」

そしたら五代さんではなく佐々木の隣の薫さんがなんか、

「誰にも秘密にしてほしいんですけど、むぐ、私あれなんです。変身ヒーローなんです」

と言った。


は?

「えー!すごいですねえー!」

いや、ちょっと待って佐々木。受け入れ早すぎ。まだだよそういうのは。まだ先よそれは。まだまだ先よ。異世界に来て、最初に会ったのがオークとかで、もう完全に違う世界だってビジュアル的に分かったとしたらさ、いいけど、そういうリアクションでも。で、耳が三角定規みたいになってるエルフの人とかに助けられたらいいけど、そういうのでも。受け入れれるけど。受け入れなきゃしょうがないけど。


「だからそのー、むぐ、敵の組織によってこういう世界にワープさせられたんじゃないかと、むぐ、思ったんです」

「あー」

あーじゃなくてさ。佐々木さん!

「でも、君たちの話を聞く限りそういう訳でもないみたいでね」

五代さん!?

「お二人を巻き込んでこういうことになってしまったとしたら、それは申し訳ないじゃないですか」

薫さん!


「それは無いですねえ」

佐々木は、そういってその時自分と私がどこにいたのかを説明した。確かに遠い。全然遠い。同じ北緯とか緯度とかでもない。私達に関係性はない。皆無だ。


って、

「じゃあ、原因わからないですねえ」

「そうなんですよお。むぐ」

「うーん参ったなー」

さっきから何話してるのこの人達?


車はなおも砂漠を走っていた。しかし目の前には明らかに砂漠の終わりが近づいてきていた。というのもある地点を境にしてそっから向こう側には木々が生えているのだ。


そんでそれがあまりにも緑。ずっと砂とかしか見てなかったからか目がチカチカした。それにしてもそっから先あまりにも緑だった。砂漠がこんな風になるか?こんな急に緑になるか?私の視力がすごく回復しそうなほど緑。真緑。

「砂豚死んじゃう」

佐々木は緑が見えた段階でぼそっとそう言っていた。


それは知らないけど、でも私もこうして見るとナウシカの腐海の入り口のようだと思った。


「あ、でもじゃあ、どうして私達の事を見つけれたんですか?」

お!佐々木さんいいですよその質問!左中間!

「それはですね、むぐ、私の力で感知しました」

薫さんがもう何個目かもわからないがんもを食べながらどや顔をして言った。

「へー、そんなことも出来るんですねー!すごーい!」

いやだから受け入れ早いって。佐々木女史。


「遮蔽物もなかったからね。すぐわかったんだろうと思うよ」

いくら遮蔽物が無いからって、すぐにわかるものなの?砂漠って。いや知らないけどさ。でもすぐわかるんだとしたら絶対にスターク社長だってもっとはやく救出出来てたと思うけど。1で砂漠の中歩いてたけどあの人。タンクトップで。


「感知だってかっこよくない?」

私に振るな。

「いや、すごいねえ」

「むぐ、頑張りましたあ」

そんなことを話しているうちにSUVは砂漠を終え、木々の中に入り、更に少し行くとどう考えてもジャングル然としたその只中に、不自然なガソリンスタンドと、並んで豆腐屋があった。


「我々はここで気が付いたんだよ」

五代さんはそういって慣れた感じでガソリンスタンドに車をつけ、停車させた。


「あ、私と西村でガソリン入れるのとか窓ふきとかします!」

車が停車した瞬間佐々木がそう叫んだ。


何言ってんだお前ええ!


「ここまで送ってもらいましたし、そのお礼にやらせてください!」

「じゃあ・・・お願いします」

ほら見なさいよ。五代さんだってびっくりしてるじゃないよ。声がでけんだよ。あと突然なんだよ。あまりにも。佐々木この野郎。


「さあ、降りな!」

そして、真ん中の佐々木に押し出される形で私側のドアが開き、私がまず下ろされ、その後すぐに佐々木が下りた。


五代さんと薫さんも降りて、それぞれガソスタの店内に行ったり、隣の豆腐屋さんに行ったりしている。


まあ、言うまでもない事だけど、どちらも無人の様相だ。


私達が目覚めた銭湯やらコインランドリーと変わらない。


そんな光景を眺めながら、私は佐々木に言われるがままSUVにガソリンを入れたり、ガソスタの黄色いタオルでもって、フロントガラスを拭いたりした。しかしそれにしても、

「おめえ、何にもしてねえな」

佐々木さんよ。私にさせてばっかりだなあんた。おめえ。


「私は西村がさぼらないかどうかチェックしてます」

きいいいい。憎たらしい。こいつ。


車内で率先して社交的にやってくれたから我慢するものの。それが無かったらもう。お前もう。ほんとに。


私がオニドリルだったら迷うことなくドリルくちばしこいつ。穴開くまで。貫通するまで。


「それにしてもやっぱりちょっと違うね。気温」

「そうですねえ!」

さっきの砂漠に比べたら全然違いますね。ヒートアイランド現象の中の新宿御苑みたいな感じですね!オニドリル、ドリルくちばし!

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