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北上さんの話によると、キャンプ場並びにスーパーはもう、ここからすぐ先のところにあるらしかった。

「これでしょ?」

北上さんの持っていたスーパーの袋には、マミーマートと確かに書いてある。

「マミーなんだ」

五代さんやら薫さんが言ってたスーパーって。マミーマートなんだ。いや、別にいいけどもなんでも。

「Mommyー!」

佐々木がなんかそういってタックルっぽい動作をしてきてた。今!やめい!そういうの!そういう雰囲気じゃねえ!あと衝撃とか結構来る馬鹿野郎!腰やるこの野郎。あと誰がmommyだ!お前が子供だったとしたら相当だよ!同いだよ。

「ここ抜けたらすぐだよ。あっちにある」

北上さんが言うにはもうすぐ。ホントすぐ。あとちょっと北上したらあるっていう。北上に関しては狙ったのかどうかわからない。馬鹿野郎がタックルとかしてきたから聞けなかった。ほらーお前ータイミング!

「ただ、途中に一本川があるからね。今から行くのは危ないと思う。まあそんなに深い訳でも幅が広い訳でもないけど」

それにしても五代さんも薫さんも川の事は一つも言ってなかったけどなあ。それともSUVだったから気にならなかったのかな?

「・・・」

佐々木はタックルで全部使い果たしたのか、さっきとはうって変わって隣でこっくりこっくりと舟を漕いでいた。さっきの今でどうしてそうも違うのこの人。何?どうなってんの?

「佐々木、寝るの?」

テントも無事に設営できたし寝るんだったら寝袋もあるから、ちょっと。

「じゅる!」

え?何?その同人誌で触手が獲物を見つけたみたいな音。うわ!よだれ!お前私の服に!お前・・・!お前!

「もう寝れ!」

自分の体から引き離そうと体を押しのけていると、突然がばっ!と顔を起こして、

「北上さんは、ここで何をしているんですか?」

とうつろな顔で言った。これが入眠に至る最後の障害。そんな感じだった。んで、私は奴のその頭の上下運動に押しのけに使っていた腕を強襲されてぎゃ!ってなった。こいつマジかってなった。こんな最小限の動きで殺りに来やがったってなった。骨折れたかと思った。こんな異世界でお前。こんな異世界で病院とか、保険とかもあるかどうかもわからない異世界でお前!

「・・・」

けど、でもまあ、佐々木ナイス。いい質問それ。三遊間。三遊間抜けたわ、今。


だって、お世話になったけど、すごいお世話になったけど、テントの設営撤収学んでカップ麺もらってすごい助かったけどでも、考えてみたらこんな異世界だもんね。こんな訳わかめな異世界で出会った得体のしれない人だもんね。


「星空に星を上げてるんだ」

北上さんはそう言った。はあ?ってなった。本来ならそういうのは佐々木がやるべきなんだけど、でももう完全に寝てるから。私の膝を、ざーひーを枕にしてるから。コインランドリーでの借りを返せと言わんばかりに。だから私がリアクションした。してしまった。


星空に星を上げてる?なんとなく空を見上げた。星空。星空に星ってこの事?スター?☆?何?アイマスの話?プロデューサーとしてアイドルをスターにしてるの?アイドルマスター ミリオンライブ!の話?え?MILLIONSTARSの話?何?何の話?


「星空に星を上げてる」

北上さんはこっちの意図を知ってか知らずかそう繰り返した。何すかその突然のモブ感?RPGのモブ感なんでなんすか。


「はあ」

そんなの言われたら私だってこう頷くほかないでしょ。佐々木が起きてたらこの人にこのタイミングで何か、例えば、馬鹿かおめえ!みたいな事を言ってもらえたかもしれないけども、でももう寝てるし。完全に寝てるし。完全体で寝てるし。仕方ないので、星って何すか?って私が聞いた。いざとなったら私が何か言わないといけないのかと思うと、気が重い、不安が募る。

「まあ、まだ現状は40個くらいしか上げれてないけどね」

絶妙にかみ合わない。上の歯よりも下の歯が出てる人みたいにかみ合わない。

「星って、この星ですか?」

一応、空を差して聞く。トゥース!みたいな感じで。

「うーん、ここではそれでいいと思うよ」

そうなんですか。ああよかった。何とかかみ合った。あーよかった。

「まあ、とにかく今は100個を目指してるんだ」

空には無数の星が輝いていた。それは当然40とか100ではきかない数だった。でも、例えそれの一部であっても星を空にあげてる人っていったらまあ、凄いっちゃ凄いんじゃない?知らないですけども。

「すごいですね」

でも、だからこれくらいは言える。適当でもとりあえずそれくらいはまあ。

「今あげてるのはまだまだ七等星みたいなのばっかりだけどね。肉眼では確認できないようなものばっかりだよ。あ、ただ当然、自分ではそうは思ってない。一等星とは言わないまでも見えるものを上げてるつもりなんだけど」

そういえば佐々木はみんな昔は子供だったの子供みたいに七等星見えるのかって思えるくらいの視力でコインランドリーを見つけたよなあ。あ、おい!そういえば妖精はどうなったんだ?

「あのー、この辺に妖精っています?」

「ん?」

うわ、すいません。星空に星を上げる人に負けず劣らず、妖精の話とかしてすいません。

「佐々木が、これが妖精を見たって言って、それでここに着いたんです私達」

「ああ、そうか。あれも元々は星空にあげるはずだったんだけどね」

北上さんはそういって、ああ、そうかそうか。と何か一人でわかったみたいに納得したみたいになってしまった。

「星空にその、星を上げるのって何か仕事ですか?」

正直私的には仕事であってほしかった。だって仕事だったら別にいいもん。全然いいよ。仕事ってそういうもんだから。

「いや、仕事じゃない。意味もないよ」

「ええー?」

でも、それじゃないとなると、ちょっと・・・。

「意味はない。100個上げても1000個上げても意味はないよ。でも、自分との闘いってこういうのじゃないかと思うんだ。だから七等星だろうが何だろうが、他の誰もみんなが辞めたとしたって、これからもずっと上げていきたい。そう思ってる」

それはまあ、なんとなく、わからないではないような。

「きっと君らも同じようなものでしょ?」


まあ・・・どうなんだろう。


それを機にその会はお開きとなった。私は佐々木を担いでテントに入った。それから寝てる佐々木を苦労して寝袋に突っ込んで自分ももう一つの寝袋に入った。北上さんは朝までここに居るという。

「何も出ないから、よく寝た方がいいよ」

そう言っていた。


星空に星を上げるねえ。


寝袋に入っても、そのことを考えてしまった。


ああー、もしかしていいねとかリツイートとかそういう事なのかな?評価するというか。星4.2点みたいなそういう事だったのかな?


そんなことをぼんやりと考えているうちにいつの間にか意識が途切れていた。


あくる朝起きてテントを出てみると、すでに北上さんはいなくなっていた。


「もういないか・・・」

ちなみに佐々木はまだ寝てる。くふぃーくふぃー言ってる。


北上さんの居たあたりにペットボトルの水が二本置かれていた。それを持つと下の地面に、


↑あっち↑


と書いていた。その後佐々木を起こして、

「私昨日いつ寝たの?」

二人で協力してテントを撤収してその方向に向かった。


「っていうか!」

「うわ、すぐ川あるね、西村」

その広場を出たらすぐ川があった。ちょっとそこまで降りるくらいはするけど、でももう感覚的には目の前と言ってもよかった。そして、

「うほ!舟あるぞ!」

佐々木の言う通り岸辺には舟があった。一艘だけ。田舎の駅前のタクシープールみたいに。ただ一艘だけ。


その一艘だけの船には誰か乗っていた。


ベトナムの人みたいな△の笠みたいなのを頭に被っていた。

「ゆるキャン△?」

いや、あれは違うだろ。△って言ったら何でもゆるキャン△じゃねえんだよ。

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