学園のまにまに三話1
梅雨の時期に入りそうな入らなそうなそんな時期だった。
俊也の元へある噂が入ってきた。
クラスメートの男子生徒と体育前の準備体操をしている時だった。
「なあ、俊也、知っているか?」
「ん?何を?」
男子生徒は白沢圭一という。その白沢はどうでもいいが男から見てもイケメンでなんだか悔しい。だがいいやつである。
「あー、お前知らねぇの?一番敏感だと思ってたのになあ。」
「だから何?何の話?」
もったいぶる白沢に俊也は少し腹を立てながら急かした。
白沢は屈伸をしながら俊也ににやりと笑みを返してきた。
「昼休みなんだけどさ、一階にラウンジあるじゃん?あのラウンジで毎日パン屋が出張でパンを売りに来るのね、あ、購買とは別だぞ。……それでな、ここからなんだが……。」
白沢は井戸端会議をする女達のように楽しそうだが静かに話し始めた。
「稲城ルルって女の子がいるらしいんだが不思議な術を使って一番人気のほら……あの長い名前のエクレア……なんだっけか……を毎日周りの人をものともせずに買っていくらしいぞ。」
「え?あの出張パン屋、いつも争奪戦が繰り広げられているじゃないか。僕は皆の目が怖いから行かないんだけど、おいしいらしいね。その稲城ルルって子の術ってなんだ?」
俊也は前屈をしながら白沢に尋ねた。
「なんか、風がちょっと吹いてエクレア一個だけ飛ばすんだってさ。そんで遠くにいるのにいつの間にかエクレア持ってんだって。でも誰も飛ばすところを見てねぇんだって。んで、その稲城ルルって子はうちの制服を着てんらしいんだけどどのクラスにもいねぇんだってよ。今、めっちゃ裏で噂になってんぞ。お前が知らないのは意外だった。」
白沢が追加した最後の言葉に俊也は若干震えた。
「何それ、怖えよ……。だが、興味はある……。」
「あ、ちなみに俺の彼女がその子に名前を聞いて稲城ルルだってわかったから他の奴は名前を知らねぇんだと。」
「へえ……。」
俊也は白沢に彼女がいたことに驚き、まあ当然だとも思い、イケメンはいいなとも思い、色々と思いが駆け巡ってから稲城ルルの内容に頭が戻ってきた。
他に質問をしようとしたが体育の先生から怒られたのでやめた。




