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学園のまにまに二話3

 「あー……えっと、お疲れさん。」

 サキが俊也を労って来た。今の現象をすべてもみ消そうとしている笑顔を向けている。


 「お、おつかれ……。」

 俊也の頭はまだ回転しておらず、とりあえずサキにオウム返しのような労いの返答をした。もちろん、顔は引きつっている。


 「い、いやあ……しかし、変な天気だったねぇ……。ゲリラ豪雨とかねー。今は晴れたけど……あは……あはは。」

 サキはどこかよそよそしく笑っている。


 「サキ、逆に気持ち悪いわ。俊也君、行きましょう。」

 「俊也君!?」

 時野アヤが俊也を促して言った言葉に俊也は驚いた。

 ……初めて名前呼ばれた!しかも下の名前!

 混乱しながらもこれだけははっきりと確認した。


 「……何かしら?俊也君よね?」

 時野アヤはごく自然に特に引っ掛かりもなくそう呼んだらしい。俊也が疑問形で聞き返してきたことに疑問を抱いているようだ。


 「う、うん!合ってるよ!……よ、よし、じゃあ部室に戻ろうか!」

 俊也は動揺が悟られないように時野アヤに笑顔を向けた。本当は色々と大混乱していたが務めて今まで通りを装った。


 「ねえ、待っておくれ。」

 ふとサキが俊也の制服を引っ張った。


 「え?どうしたの?」

 「なんかこないだから面白そうな活動してるね?あたしもやりたいなあって。」

 サキは無茶苦茶かわいい笑顔で俊也にほほ笑んでいた。


 「ちょ……超常現象を楽しむ部活だけど入る?まだ部活にもなっていなくて……。」

 サキのかわいさに俊也は思い切り動揺した。時野アヤとはまた違うタイプである。


 ……元気はつらつな感じでかわいいなあ……。

 ……ぼ、僕はさっきから何を考えているんだ!ガールズバーのスカウトとかじゃないんだから!


 「入る!」

 俊也が考えをまとめている間にサキが大きな声で叫んでいた。


 「ぶ、部活にだよね?」

 「当たり前じゃないか。今、その話していたんじゃないのかい?」

 「う、うん。じゃあ手続きしようか!」

 違う事を考えていた俊也はサキの目線で我に返った。


 「えーと、あたしは……うーん。苗字どうしようかなー。」

 「苗字どうしようかなって何!?」

 サキの悩んでいるポイントが理解不能だった俊也は思わず叫んだ。先程の事といい、もう叫ばなければ自分を保てそうにない。


 「アヤはどんなのにした?」

 「私は時野よ。」

 「時野か。いそう!いそう!」

 サキとアヤの会話に俊也はさらに戸惑いの色を見せた。一瞬、自分がおかしいのではないかという錯覚に陥るくらい頭が混乱していた。


 「サキは太陽にちなんだのにしたらいいんじゃないかしら?」

 「太陽か……。じゃあ、日高(ひだか)さんになろっと。いそうじゃないかい?」

 「いいんじゃないかしら?」

 アヤとサキが満足そうに会話を終え、くるりと俊也に向き直った。


 「あたしは日高サキ。よろしくー。」

 サキが楽観的に自己紹介をしてきた。


 「あ……日高さん。よろしくね!」

 俊也もなんだか合わせないといけないような気がして何事もなかったかのように話を合わせておいた。


 「じゃ、部室に行こうか。それと部の申請に行こう。」

 俊也はすべての疑問について考えるのをやめ、素直に日高サキを歓迎した。

 ……超常現象を楽しむ部活なんだ。怖がってどうする!

 結果的に脳がこのような判断をしたらしい。人間は不思議な生き物だ。


 こうして日高サキをなんとなく入れた俊也の部活は三人になり、ようやく部活として動き出すようになったのである。


 例の不思議な暴風雨について時野アヤと日高サキが語る事はなかった。

 俊也の中での永遠に解けない謎の内の一つである。


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