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旧作(2016〜2024完結)「TOKIの神秘録」望月と闇の物語  作者: ごぼうかえる
オムニバス1「学園のまにまに」時野アヤが見ているもの
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学園のまにまに一話3

 その次の日、昨夜ずっと考えていた内容についての結論が出た。

 それは時野アヤが超常現象好きで何度も超常現象に会っているのではないかという事だ。


 俊也は彼女こそ「超常現象大好き部」にふさわしい人物だと思った。何かずれている気もするが……。

 故に……俊也は時野アヤに、部に入ってほしいと話しかける事に決めた。


 朝のホームルームが終わり一限目がはじまろうとしている所だった。

 早く話さなければとも思ったが俊也は突然、親しくもない女の子に話しかけられるほど鋼の心は持ち合わせていない。


そこで、おそらく超常現象が好きであろう時野アヤに俊也はある土産話を持って会話をすることに決めた。


「あ、あの……時野さん。」

俊也は自分でも驚くほど小さな声で時野アヤを呼んだ。

「何かしら?」

隣の時野アヤは俊也に社交辞令的な笑顔を向けてきた。


「じ、実は……昨日の夜から今朝にかけての噂なんだけど……商店街の車道で車を走らせていた人達がある一点のポイントに来ると何かを避けるように車が動いてしまうって言っていたんだ。でもそこには何もなくて不思議がって怖がっているんだよ。何か知らないかな?なんとなく避けなきゃいけない気持ちにもなるとか……言ってたんだけど。」

俊也は部活の勧誘よりも先に土産話の方を話してしまった。


しまったと思った時にはもう遅く、時野アヤは何かを考えはじめてしまった。

しばらく考えていた時野アヤはため息をつくと俊也の方を向いた。


「ねえ、あなた、そのおかしなことが起きた場所に案内できる?今。」

「ええ!?今っ?」

俊也は突然の言葉に目を見開いて驚いた。


……行きたいけど……だってこれから一限目……。

「ああ、そうよね。授業だものね。ダメね。じゃあ放課後で。」

時野アヤはあっさりと引き下がった。


「よく考えたら夕方まであまり車通らないし後でいいわ。」

「……。」

時野アヤがさらりと言い放ったので俊也は戸惑ってしまった。


部活を……と言いかけたところで先生が来てしまい、会話はそれっきりだった。


放課後、俊也は時野アヤを連れて噂があった商店街に来ていた。

「確か、日穀信智神にちこくしんとものかみっていう神がいる神社に近い神社の所だって言っていたから……。」

商店街には二つ神社があった。一本道の商店街の右端と左端にそれぞれ違う神がいる神社がある。


ここは実りの神がいる日穀信智神の神社とは反対側に位置する小さな神社。確かいる神は龍雷水天神りゅういかづちすいてんのかみ。この神は最近では珍しい井戸の神様とか。


世にも珍しい井戸の神様がいる神社の階段の方へは行かず、俊也はその手前の道路で止まった。


「ここ……らしいんだけど……。」

俊也が時野アヤにそう言った刹那、アヤは何かを見つけたように走り出した。


「え?何?え?」

とりあえず俊也も後を追った。幸い車はない。

不可解な事に時野アヤは怖い顔をして地面にむかって怒っていた。


「ミノ!またイドとお酒飲んだの!ここは車道よ!いつまで寝てんの!もう夕方なのよ!昨日から寝てんでしょ!早く自分の神社に帰りなさいよ!迷惑よ!」


時野アヤは地面に向かって怒鳴ると何かを動かし始めた。俊也にはそれが演技には見えなかった。間違いなく何かを抱えている……。


「『頭痛ぇ』じゃないわよ!飲みすぎ!神が二日酔いとか馬鹿じゃないの?」

時野アヤはぶつぶつ何かを叱りながら歩道まで寄せた。


その時、タイミングよく車が通った。


「あっ……。」

俊也は咄嗟に叫んだが車は何事もなかったかのように普通に通り過ぎた。


「あれ……?」

「ああ、もう大丈夫よ。どかしたから。」

「どかしたって何を……?」

俊也は不安げな顔で時野アヤが抱えているであろう何かを見つめた。


「えー……えーと……な、なんでもないわ。」

 時野アヤは言ってしまった事を後悔したのか先を続けなかった。


「そうだ!時野さん!」

俊也は『ここだ!』と声を張り上げた。


「な、何かしら?突然に……なんだかいやな予感が……。」

時野アヤは苦笑いで俊也の言葉の先を待っていた。


「超常現象大好き部に入ってください!お願いします!時野さんが大好きなアツいネタも多数持っているから!お願いします!」

 俊也は人目を気にせずに深く頭を下げた。


 「わ、私は超常現象好きじゃないわ!いつも面倒くさいもの!まあ、でもあなたのその……部活?に入れば迷惑をかけている神をすぐになんとかできるわね。」

 「よくわかんないけど……じゃあ……。」

 「入るわ。」

 「やったあ!ありがとう!時野さん!」

 俊也は子供の様に喜んだ。反対に時野アヤはどこか鬱々としていた。


 ……素直じゃないなあ。時野さん。好きじゃないとか面倒くさいなんて言って実はうれしさを隠していたんじゃないか?かわいいなあ。時野さんは……。


俊也は舞い上がり心の中で時野アヤを可愛くしていた。


この時、時野アヤは本当に面倒だと思っていたが今の俊也が知る由もなかった。

時野アヤに関わった事により俊也にはこれから謎の現象が沢山襲い掛かるのである……。



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