学園のまにまに六話1
「そういえば、七夕でよく出るオリヒメとヒコボシって雨なら会えないんだっけ?」
俊也は部室でまったりしながら窓から外を見た。
外は雨が降っておりグラウンドを濡らしていた。
「秋の長雨に話す内容かしら?それ」
俊也の横で椅子に座って読書をしていた時野アヤは本から目を離さずにあきれた声をあげた。
季節は秋である。ちなみに十月だ。
紅葉が色づき、校庭にはえている銀杏は葉を黄色くしていた。
「いやあー、古典の先生がなんか話してた内容を急に思い出して……」
「ああ、七夕のモデルは神様って話ね。古典は変な話が多いわよね」
「まー、オリヒメ、ヒコボシは七夕雨でも関係なしに会ってるね」
時野アヤと俊也の会話に割り込むように日高サキが嬉々とした声をあげた。
「そうなの?」
「うん。だって雲の上はいつも晴れてるし」
「あ、そうだね。それは盲点だったよ」
日高サキの言葉に俊也は妙に納得した。
「明日晴れるみたいだし、皆で夜空観賞でもするかい?」
日高サキが突然秋の夜空観賞を提案してきた。俊也は首を傾げて日高サキを見る。
「え?だって日高さんは門限あるんじゃ……」
「今は十月、神無月じゃないかい。会議はあるけど、二、三日の休みなら取れるんだよ。集まりがあるだけで対してやることもないしね」
日高サキはさも当たり前のように返してきた。
「いや、意味わかんないよ!?」
まるでどこかの神様のような言い方に俊也は突っ込まざる得なかった。
日高サキは色々とミステリアスだ。彼女の家で一体何の会議がおこなわれているというのか?
集まりとは何か?家族はバラバラなのか?ならばなぜ門限が?
など、俊也の頭から疑問は消えない。
とりあえず、俊也は隣にいた時野アヤに目を向けた。
「時野さんはどうする?僕はなんだか楽しそうだなって思うけど」
「いいんじゃないかしら?秋は静かに時を過ごしたいし、雨の後なら空気が澄んで月もきれいだろうし」
時野アヤは俊也の問いかけに小さく微笑んだ。
……時野さんっ!今の顔、かなりかわいい!!スマホで撮りたい!!
俊也は時野アヤの微笑みに釘付けになりながらも言葉を発した。
「え、えーと!じ、じゃあ、明日の夜でいいのかな!?どこにするの?明日土曜日だけどっ!」
声が上ずっていた俊也を不思議そうに眺めながら日高サキがうーんと唸って口を開いた。
「せっかくだし、こないだ七夕祭りやってた海にでも行く?」
「ああ、あのローカル線走っている田舎ね」
「小旅行だね!どうせなら民宿とかで泊まろうじゃないかい!」
なんだか女子同士で盛り上がっているが俊也は違うことで盛り上がり始めていた。
……女の子ふたりと星空眺めに海に!?
なんてロマンチックなんだ!!
泊まりなら布団ひいて両脇に女子!ハーレムだ!やばい!!
鼻の下が伸びた俊也はふと我に返った。
……いやいや、なんて事を考えているんだ。男は僕ひとりだぞ。ロマンチックな星空の後に両脇に女子なんて僕がなんか問題起こしたら大変じゃないか!!
そこでこんな考えが浮かんだ。
「妹を連れてけばいい!兄妹がいることで自制が効くはず!」
「はい?」
考えを口にしてしまった俊也は日高サキに不思議な顔をされた。
「あ、いや、えーと、実は妹がいてその妹にも星空見せてあげないなーとか……」
「へぇ、あなた、妹がいるの」
俊也は時野アヤにそう尋ねられて呼吸を整えてから小さく頷いた。
「母親が超元気な健康優良児で一年経たない内に妹を妊娠したから同学年なんだけど」
「え!?なんかすごいわね。それ」
「この学校にいるよ。クラス違うけど……」
「いいじゃないかい!連れてきなよ!」
日高サキはわくわくした顔で俊也を見た。
「うん。じゃあ聞いてみるよ。変わり者だけどよろしくね」
「俊也君も変わってるけど……」
時野アヤは呆れた顔で俊也に答えた。




