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壊された世界9

アヤはごぼうと共に宇宙空間を滑っていた。

「はあ……私、首突っ込まない方が良かったかしら……。あんまり役に立ててる感じがしないのよね」

「何言ってるんだよ。サヨは君がいるだけで、心強いって言ってたよ」

サヨの言葉なのか、かえるの言葉なのかわからないが、ごぼうが目を吊り上げて、少し怒っている雰囲気で言った。


「そうかしら? まあ、いいわ。探すって、どこを探す?」

「うーん……」

進みながら考えていると、不思議な時間の歪みをアヤが感じ取った。


「ねぇ……なんか……この近くで強い時間操作を感じるわ」

「時間操作?」

「ええ……。巻き戻されているような……」

そこまでつぶやいて、アヤはあることに気がついた。


「巻き戻されているって、かなりまずいわ!! いままでの努力がなかったことに……」

「更夜達の呪縛もなかったことになるのかな?」

ごぼうの言葉に、アヤはさらに顔を青くした。


「いかなくちゃ……サヨにも連絡しないと……」

「ボクが繋ぐよ! サヨ!」

ごぼうが声を上げると、サヨを呼んだ。すると、呼び出し音が鳴り、サヨの声がごぼうからした。


「はーい? アヤ、なんかありげ?」

「よくわからないけれど、過去戻りの力が強いところがあるの。これから行ってみるわ。せっかく解いた呪縛をなかったことにされそうなの!」


「なんだって!? びっくりぽんなんですけど!! 凍夜の野郎のせいなわけ? それ」

サヨの驚いた声が響き、奥の方で逢夜達の尋ねる声が聞こえた。


「それはわからないわ。ちょっと見に行ってみるから」

時間関係になると、アヤには恐怖の感情が消えてしまうようだ。


「ちょっと! アヤ!!」

「ごぼうって名前で良かったのよね? ごぼう、あっちに行きましょう」

サヨの声が聞こえる中、アヤはごぼうに言った。


「あっちよ!!」

「え? う、うん」

アヤの剣幕に負け、ごぼうは戸惑いながら、進み始めた。


「アーヤー!!」

「サヨ、後で!」

サヨの声を流し、アヤは時がおかしいところを探す。


「あの辺……」

宇宙空間が広がる中で、波紋が広がっている部分を見つけた。


「ごぼう、あの辺よ」

アヤは目の前を指差して、ごぼうに指示を出す。ごぼうは素直に従った。


「赤い空に黒い砂漠の世界……。凍夜が壊した世界だわ。じゃあ誰かの心じゃないから入れそうね」

アヤは後先を考えずに、眼前の世界に飛び込んで行った。


アヤは時神であるため、時間を無意識に正そうとする。今回もその隠れた能力が作動したらしい。


「いかなくちゃ……」

アヤは黒い砂が舞う世界へ落ちていった。


※※


少し前、更夜達を逃がしたミノさんとメグは凍夜と対峙していた。


Kの少女である、あやは凍夜の力に抗いながら、Kの世界を修復していた。トケイは無表情のまま、凍夜を排除しようと飛び回る。


「全員始末しておこう」

凍夜は狂気的に笑うと、好戦的な目でトケイを見た。


「あいつから撃ち落としてやろう」

嘲笑した凍夜は、体から黒い霧を発生させた。黒い霧はやがて、凍夜の体に重なるように吸い込まれた。凍夜の瞳が赤く輝き、禍々しい気配が刺さるように、その場にいるものを射抜いていく。


「オオマガツミ……。世界を歪ませられる神霊……。誰かに寄生する神……。やはり、凍夜はあれを取り込んでも『狂わない』霊のひとり」


メグは冷や汗をかきながら、凍夜を睨み付けていた。平和を願うKには、この力は毒過ぎる。

凍夜は人間にはあり得ない脚力で、飛ぶトケイに追い付くと、高らかに叫んだ。


「弐の世界、管理者権限システムにアクセス……『攻撃』」


「勝手にアクセスしないで!! まずい! オオマガツミもシステムの一つだって気がついたんだ! あの男!」

あやが叫ぶが、凍夜は止まらない。黒い砂が凍夜の手に集まると、刀の刃のようにトケイを斬り捨てた。


「トケイ!」

トケイは苦しそうにもがきながら、勢いよく黒い砂漠の中に落ちていった。


「メグ! オオマガツミがトケイに入った!! 弐の世界の未来がいじられる!!」

あやが必死にメグに言う。凍夜はトケイを追うことなく、今度はこちらを見て、気味の悪い笑みを向けている。


「わかってる! でも、動けない! オオマガツミはシステムの一部……、私達Kは正の方、あいつは負の方。通常負は表に出てこない……。だから動き方がわからない! 仲間のKは私とあやだけ! あや、動ける?」


「……力が強すぎて動けない……。オオマガツミ……、私達Kと同じことができると気がついた……。私達ができることと逆のことができる。たぶん、『攻撃』とか『消滅』とか『破壊』とかそういう言霊だと思う」


あやは頭を悩ませるが、世界の修復で精一杯だ。


「……私がなんとかする。ワダツミの力を使うしかない。相手は人間だけど、最大級の厄神を宿した人間。生身の人間ではないから、この力を使う」


メグから静かなさざ波の音が響き始めた。嵐の前の静けさのような不気味な雰囲気をメグはまとい始める。


「俺は何をすりゃあいい?」

横で冷や汗をかいているミノさんが、声を震わせながら尋ねた。


「私が負けたら、その時は……」

ミノさんが息を飲む中、メグは海の荒々しい雰囲気を纏いながら、氷のように美しい矛を出現させた。


「私は海そのもの。この矛で日本を作ったんだ。負けない!」

矛を構えながら、メグは凍夜に向かい、飛んでいった。

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