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壊された世界5

あやがいる場所に行くべく、メグ達は赤い空に黒い砂漠の世界から抜け出した。宇宙空間にネガフィルムが巻き付く場所に出た時、狼夜(ろうや)がトケイの攻撃を受け流しているのが見えた。


「ほんとだ。あいつすげぇな……」

ミノさんが目を見開いて驚いた時、

「ごたごた言ってる場合ではない。少しだけ待っていろ」

と、千夜が狼夜の邪魔をしないように近づいていた。


「お姉様」

「……狼夜、いったん逃げるぞ」

「……」

狼夜はトケイを危なげに受け流すと千夜と共に逃げ始めた。


「追うよ」

それを見たメグは自分の使い、セカイを出すと千夜達を追っていった。メグが進むとミノさん達もついてくる。


『K』は壱の世界の魂も運べる。

本来なら現世を生きる者達は弐を動き回ることはできないが、『K』がいることでそれが可能であった。


トケイは再び、ミノさんが抱いている鈴に目を向けた。トケイは速度を上げると、ミノさんに突っ込んでいく。


「うわっ! やっべぇ……」

ミノさんが殺気を感じて小さくつぶやいた。


「俺が!」

いち早く動いたのは狼夜で、メグがセカイを動かすよりも速かった。狼夜は横からの回し蹴りを手の甲で流れに任せつつ、押した。


トケイの足は微妙に軌道を変えられて、狼夜達に当たることなく通りすぎていった。止まる部分を失ったトケイはそのまま回りながら、狼夜達とはかなり離されて飛ばされた。


「すげぇ……」

茫然とするミノさんを一瞥してから、メグは先へと進んだ。

メグ達は千夜になんとか追い付き、そのまま一緒に進む。


「狼夜、大丈夫か?」

「問題ありません」

千夜は狼夜を心配したが、狼夜に体の不調はなかった。


「おたく、マジですげぇな……」

ミノさんは怯えた顔を狼夜に向け、つぶやいた。


「それより、トケイが来る。スピードを上げる!」

メグが鋭く言い、千夜、狼夜、更夜達、霊は進む速度を上げ、さらに蛇行しつつトケイをかわしていった。トケイは無機質な目でメグ達を捉え、無駄なく追いかけてきている。


「速い……」

トケイに追い付かれそうになった時、目の前に「Kの世界」があった。


「あった! 防護プログラムが解除されてる。入れる!」

メグが一言そう言って、弾丸のように真っ直ぐ「Kの世界」へ落ちていった。


※※


一方、サヨ達はこれからどうするか相談中だった。


「次はどうするよ? あたしさ、狼夜とか千夜を探せって言われて、元々ここに来ちゃったんだけど」

サヨは頭を抱えつつ、アヤ達を見る。


「トケイもいなくなってしまったし、敵対していた華夜(はなや)もいなくなったから、ここにいる意味はないわね……」

アヤは辺りを見回してから確認するように逢夜(おうや)を仰いだ。


「ああ、このまま敵の本拠地に乗り込むのも、心もとないな。やはりお姉様と狼夜に会うのが一番……」

逢夜が考えを巡らせていると、すぐ真上の赤い空から何かが落ちてくるのが見えた。


「ん……?」

「なんか……落ちてくる……」

サヨが目を凝らすよりも先に逢夜が動いていた。


「あれは憐夜(れんや)だ!」

「え!?」

アヤとサヨが同時に声を上げる。


「憐夜!」

逢夜は高く跳躍すると、憐夜を抱き止めた。


「お兄様! いた……。よかった! たまたま落ちただけで……あのね……」

憐夜が話している最中、逢夜が砂漠に着地し、アヤとサヨが近寄ってきた。


「憐夜、良かった……。って、怪我をしているじゃねぇか!」

逢夜は涙ぐみつつ、憐夜を眺めると苦痛の声を上げた。よく見ると、憐夜はあちらこちら擦り傷を負っていた。


「お兄様! それはいいんですが、あのっ……」

「いいわけあるか!」

逢夜は厳しく言い放つと、憐夜を抱きしめた。


「いや、あの……」

憐夜はなんだか様子がおかしい。何かに焦っているようだ。


「逢夜! 上見て! 秒で!」

「なにしやがる!」

サヨは逢夜の首を無理やり上に向けさせた。逢夜の目線の先で三人組の人形が光のない瞳でこちらを見ていた。三人組の人形は憐夜を追うように、こちらに突進してきていた。


「……っ。あいつらは……」

「猫夜のドールだわね」

戸惑う逢夜にアヤが冷や汗をかきながら答える。


「……憐夜を追っていたのか……」

「お兄様、私、猫夜からすごく嫌われました。あの人形に攻撃されています」

逢夜に子供らしく伝えた憐夜は戸惑った目で逢夜を仰いだ。


「憐夜、よく戻ってきた。本当に良かった……。とりあえず、あれは俺に任せろ」

逢夜は憐夜をアヤ達に預けると小刀を抜く。


「なに、かっこつけちゃってさ、 あたしもやる! ごぼうちゃん!」

サヨはカエルのぬいぐるみ、ごぼうを出すと、逢夜の背中を半目(はんめ)で見つめた。


「……まあ、あの二人はやっぱりどこか似ているわね……」

「似ている?」

アヤの言葉に憐夜が首を傾げた。


「ええ。なんかそっくり。……私も微力だけど頑張るわ」

アヤが答えた時、逢夜が人形とぶつかる音が響いた。

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