学園のまにまに四話2
「さあ、じゃあ活動しようじゃないかい。俊也君、あたしはいい場所を知っているんだよ。ニヒヒ。」
日高サキが下品な笑い声をあげて俊也を見た。
「日高さん、この辺に来た事あるの?あ、そういえば今日は七夕だったね。七夕祭りがここ有名だからそれで知っているの?」
「……ま、色々と。」
日高サキはなんだか含みのある表現を使ったが俊也はあまり気にしなかった。
「それで……暑いのだけれどせめて日陰に行かない?」
時野アヤはまだ不機嫌そうだ。
「いいよー。この近くに廃校になった学校があるんだよー。」
日高サキは時野アヤの耳元でニコニコ笑いながら耳打ちしていた。
日高サキは朝から夕方にかけてすべて明るく元気すぎる所がある。
それに時野アヤは疲れてしまっているのかもしれない。
なんというか彼女は暑苦しいのだ。
とりあえず灼熱の太陽から体を守るため、三人は廃校になったという学校を目指し歩き出した。
「廃校の学校なんて中に入れるの?」
俊也は日高サキに再び質問をした。
「大丈夫。超ド田舎の木の分校だから。今は資料館になっているよ。一応、冷房はついているし涼しいはずさ。」
「それは涼しそうね。」
時野アヤはため息交じりに日高サキに答えた。
……時野さん……今日疲れているのかな?
俊也は何か気遣いの言葉を探した。
「時野さん!あ、暑いなら僕の影に入りなよ。僕は背が高いし日陰になるよ?」
なんだかわけのわからない気遣いを口にしてしまった。
……な、何言ってんだ僕は。それじゃあ密着して逆にアツい……ぎゃああ!
炎天下の中で顔を真っ赤にしてしまった俊也は目を閉じ、頭をぶんぶんと振った。
その時、なぜか全くわからないのだが時野アヤと水の入ったペットボトルで間接キスをしている映像が頭をよぎった。全く妄想逞しい。俊也は再び頭を振る。
時野アヤは一瞬首を傾げたが俊也の言葉が伝わり、軽くほほ笑んだ。
「ありがとう。大丈夫よ。私が気分悪いのは他の事だから。わざわざなんか起きそうなところに俊也君を連れてくるなんて……。」
時野アヤは柔らかく俊也に言った後、日高サキを鋭く睨みつけた。
「アヤ、そんなに睨まないでおくれ。大丈夫だよ。稲荷神がちょろちょろしているだけだって。」
日高サキの言葉に少し引っかかる単語が飛び出ているのを俊也は聞き逃さなかった。
「稲荷神?」
俊也の興味はムクムクと心の中で膨れ上がった。
「あ、えっとまあ……怪現象っていうか。ね?」
日高サキはしまったと顔を歪めるとごまかし始めた。
またも時野アヤが日高サキを睨みつけていた。おそらくこの二人は何か秘密を持っている。俊也はそう実感した。
廃校になった学校への田舎道を歩いていると前から麦わら帽子を被ったちょっと地味目な少女がけん玉をしながら歩いてきた。
ピンクの半そでシャツにオレンジのスカートを履いていた。ちなみに無地だ。
肩先で切りそろえられている黒い髪がさらにちょっとした地味さを醸し出している。
いや、女性に地味というのは失礼だ。なんというか大人しめだ。
「来た……。」
時野アヤはあからさまに嫌そうな顔をしていた。
時野アヤの目線はその少女にはない。なぜか何もない少女の隣を凝視している。
そして目線を低くしている。何かいるのか?
刹那、日高サキが何かと戯れ始めた。いや、俊也には何も見えない。ただ、日高サキが身長の低そうな何かとじゃれ合い、話しかけている。
それを麦わら帽子の少女がなだめており、時野アヤは不機嫌そうに眺めている。
……なんだ?見えないのは僕だけなのか?
「と、時野さん……。」
困った俊也はとりあえず時野アヤに助けを求めた。




