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旧作(2016〜2024完結)「TOKIの神秘録」望月と闇の物語  作者: ごぼうかえる
本編「TOKIの神秘録」望月と闇の世界
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望月の世界10

瓦屋根の小さな家の一室。

ちゃぶ台ひとつにタンスしかない畳のお部屋でサヨの兄、望月俊也は暇をしていた。


「好意でついてきちゃったけど……ここどこなんだろ……」

俊也は「君の力が必要だ、助けてくれ」と言われ、慌てて弐の世界に入り込むほどにお人好しだ。

気がついたらここに隔離されていた。


「あー、楽しかった!」

刹那、のんきな声と共に望月明夜(もちづきめいや)が障子扉を開け、顔を出した。

銀髪でストレート、眉の上で髪を切り揃えている。柔和な笑みをする青年だ。


「えー……僕をここに連れてきた……」

「それは望月家の父、『お父様』だよ。俺は望月明夜だ。君の先祖だい」

明夜は戸惑う俊也にとっつきやすい笑顔で答えた。


「明夜さんかー……。ご機嫌だけど何が楽しかったの?」


「行ってみたかった侍のレジャー施設に少しだけ行けたんだ。すぐに仲間の忍からこっちに帰されちゃったんだけどね。俺が怪我したら大変なことになるからさ」


「そんな大げさだなあ。怪我って転ぶくらいでしょ?……それにしても侍のレジャー施設って……そんなのあったっけ?」

俊也はぼんやりと現世の有名レジャー施設を思い浮かべる。


ネズミのキャラクターがちょんまげをしているところを想像し、首を横に振った。


「こりゃ違うな……」

「しかし、君も俺もお人好しだよね。俺もさすらいの魂だったんだけどお父様が『お前が必要なんだ!』とか必死な顔で言うからついてきたんだよ。そしたらこれだ……」

明夜は隔離されている部屋でため息をついた。


「……でも、助けてほしいんなら助けなくちゃダメだよね?ご先祖様だからねー。何を助けてほしいんだろうね?」

「……さあ、俺にもわからんよー。また暇になったから将棋でもやるかい?」

「ルールわからないから教えてー!」

明夜と俊也は談笑しながら将棋盤に駒を並べた。

自分達が『金将』であることを知らずに。


※※


レジャー施設、『天守閣の世界』でアヤ達はまだまだ探索をしていた。

更夜は毎回言葉は変わるが同じような事を感づかれないように尋ねていく。


「……それにしても、ここの売店のアイスはおいしいですねぇ。味が色々ありました。売店で思い出しましたが、この辺で何か騒ぎがありませんでしたか?私は居酒屋をやっているのですが、酒を盗まれる事件があったんですよー。友達は机を盗まれたとかで……。いやー、皆、猿の仕業なんじゃないかとか噂していますが……困りましたよ……ほんと」


更夜は世間話程度にアトラクションの待ち時間に前後の人と会話をしていた。

鈴とアヤは目立たないように家族の演技をしている。


更夜と話をしていた少年の風貌をしている男は唸りながら口を開いた。ちなみに魂には年齢はない。


「そうですか。それはお気の毒……。死んでからも悪い人間はいるんですね……。食事はとらなくてもいいし、魂のエネルギーがなくなるまでのんびり過ごすだけでいいのに……。死んでからの方が長いのに、肉体がなくなったばかりの人間はいまだに醜い部分があったりしますから。これから魂のエネルギーが消化されるまで何百年もあるというのに。ああ……そういえば悪霊が出たとかで禍々しい世界がありましたね。噂でしたけど」


「ほぉ……娘と妻がいるので入らないように気を付けたいとこですな。噂ではどこらへんで?」

更夜が男の心を開き、男は噂話をするように小さな声で話してきた。


「このレジャー施設付近に存在する世界の一つで夜の世界だそうです。黒い人影のようなものがたくさんいて、しかも襲ってくるとか。その世界の付近も夜の世界で侵食されていると……。噂しか聞いてないんですけど」


「それは怖い。気を付けなければ……。このお化け屋敷も怖そうだ……。では……」

更夜は会釈すると目の前のお化け屋敷のアトラクションへ続く扉を開けた。


「おとっちゃん、怖いよー……」

「しょうがないわね……。じゃあ、おとっちゃんに捕まってなさい。あなたが行きたいって行ったんでしょ?」

アヤは鈴を更夜にくっつかせた。


「おとっちゃん……」

「大丈夫だ。おとっちゃんはお化け好きだぞ」

微笑ましい家族の会話に列に並んでいた人々は皆、優しく笑っていた。


一回一組のお化け屋敷なので中に入ると更夜達しかいない。

ちなみに更夜と鈴は暗くても目が見えるため怖さはない。


「なるほど……色々聞けたわね」

「夜の世界、ひとつはお父様の世界だ。まわりの黒い人影はよくわからん」

アヤと更夜は聞いたことを整理していた。


しかし、鈴は更夜にひっついて離れない。


「おい、鈴……屋敷を出てから子供に戻れ。今は普通で良い」

「ごーわーいぃー!お化けー!」

「……す、鈴?」

鈴は暗闇でも目が普通に見えているはずなのだが子供並みに怯えていた。


「もしかして……ほんとにお化け屋敷が苦手……」

「絶対離れないでよ!少しでも離れたらクナイ投げるからね!」

「お前が一番怖いぞ……」

鈴の取り乱しように更夜はため息をつきながら腕で鈴を優しく引き寄せて歩きだした。


「だってさー、びっくりするでしょ!突然出てくるんだしー」


「……まあ……突然出てくるのはお化けではなさそうだ……」

更夜が井戸のセットがある場所めがけてクナイを放った。

アヤにはよく見えなかったが人影が動いたようだ。


「また来たか……」

更夜が頭を抱えた時、先程の三人組が再び現れた。


「あ!あいつら……」

鈴が慌てて小刀を懐から取り出した。

暗闇の中、突然に鉄球が何個も上から音もなく落下してきた。

当たったらタダでは済まない。


「……!」

「避けるな!」

飛んで避けようとした鈴に更夜は叫んだ。


「ええ!?」

「小さくギリギリでかわせ!飛んだら術にかかるぞ!影縫い系の術だ」

「ちっ!」

鈴は弾をよく見定めてギリギリでかわし始めた。


「……できるかわからないけど!」

アヤは手をかざして時間停止を試みた。彼女は時神なので自分の周りだけ時間操作ができる。


現世では時を狂わせてはいけないのでできないがここは魂の世界弐だ。時間が曖昧なためおそらくできるだろう。


そう確信したアヤの足元に時計を模した魔方陣が現れ、鉄球の速度を止めた。


「おおー」

鈴が感嘆の声をあげていると今度は横からクナイが勢いよく飛んできた。


「くっ……」

鈴が小刀で弾こうとした刹那、またも更夜が口を開いた。


「弾くな!」

「え……ええー!?」

鈴は慌ててクナイを避け始めた。


「ちなみに飛ぶなよ。影縫いにかかるぞ」

「どっ、どうすれば……」

「……望月の忍はどこまでも退路を絶ってくる。当たるしかない」

「当たる!?んなバカな!」

更夜は鈴の前に素早く立つと風呂敷を前にかざした。


クナイが的確に風呂敷に刺さる。

更夜の首や心臓に当たるギリギリでクナイは風呂敷に挟まった。


「そ……そんなチキンレースできないよ!!」

「術を見極め瞬時に対策を取る。これができなければ異端望月に勝つことは不可能だ」

「次元が違う……」

「また来るわよ!」

アヤの言葉に鈴は固唾を飲んだ。


今度は火薬だった。爆弾だと思われる物を放ってきていた。


「これ、微塵隠れの応用だ!」

「とにかくなんだかわからないけど……」

アヤは急いで爆弾の時間を巻き戻した。


爆弾は気がつくと投げる前になっていた。投げた三人組も一瞬時間が止まっていたようだ。しかし、更夜と鈴は動いていた。二人は弐の世界にぼんやりと存在する時間を管理する神である。

時神は時間の干渉を受けない。


故に彼らの時間は巻き戻らないのですぐに動く事ができたのだ。

ちなみに彼らは時間が曖昧な弐の世界の時神なのでアヤのようにしっかりとした時間操作はできないようだ。


三人組は更夜と鈴が攻撃を仕掛ける前に足音も何もなく唐突に消えた。


「……逃げたか」

「え?逃げたの?」

更夜に鈴は驚いて声をあげた。


アヤの時間操作を見て勝ち目なしと判断したのか?


それとも何か知りたいことを知れたので撤退したか?


よくわからないが逃げたようだ。


「気配が消えている……。俺達も一度拠点に戻るか」

「……そ、そうね……。忍って不気味だわ……」

アヤが前触れもなく消えた三人組に身震いを覚えた。

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