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学園のまにまに四話1

挿絵(By みてみん)

 これは七月七日七夕の土曜日、真っ昼間の事だった。真夏の太陽が照らし、セミも鳴き、外に出るのもためらうような暑い状態が続いた。


 こんな茹るような蒸し暑さなのに日高サキは『部活なんだから合宿しよう!』とか言っていた。こないだ入部したばかりなのにもう部長の風格のようなものが出ている。

 この子は人の上に立つ子だと俊也は頼もしくもあり、振り回されもしているのであった。


 「はーい!到着!」

 かわいらしいワンピースに麦わら帽子の日高サキは田舎のローカル電車から元気よくホームへ飛び出した。


 「ねえ……なんでこんな暑い時に外出……しかもド田舎に来ないといけないの?」

 続いて不機嫌そうに電車から降りてきたのは同じく可愛らしいワンピース姿の時野アヤである。頭を抱えながら日高サキに尋ねた。


 「だから……日帰りだけど合宿なんだってば!田舎で羽を伸ばそうと思ってね。このきれいな深緑の山!このさびれた駅!そして近くに広がる海!気持ちいいじゃないかい!」

 日高サキは青空に向かって大きく伸びをすると眩しく照り付ける太陽を満面の笑みで見つめた。


 そんな二人の様子を眺めながら俊也も駅のホームに足をつけた。俊也はシャツにズボンという別におしゃれでもない恰好だった。恥ずかしながらこれしか持っていなかったのだ。


 辺りを見回すとホームは確かにさびれている。色あせた古臭いベンチと穴の空いている屋根、地面のコンクリートは剥がれており雑草が元気に伸びていた。


 「でも山、きれいだね。」

 俊也はときおり吹く心地の良い風を浴びながら生命溢れる山々を見回した。


 「まあ、自然はいいけど……ここら辺は何もないわ。」

 時野アヤは始終ご機嫌ナナメだ。それもかわいい。


 「チッチッチ。ここには不思議現象が沢山起こるんだよ。ま、夏だし海で遊ぶのもいいんじゃないかい?それとも避暑地に行く?」

 日高サキは人差し指を時計の針のようにちょろちょろと動かすと同意を求めるように俊也に目配せをした。


 「そ、そうだね。ちょっと暑いけど。」

 俊也はとりあえず日高サキに合わせ肯定をしておいた。

 日高サキは家庭の事情か門限があるようだった。故に日帰りで日が沈む前までに解散だ。


 この頃、彼女は生粋のお嬢様なのではないかと俊也は疑っている。

 日高サキの話し方からは想像できそうにない事だがどこか人間離れしていて威圧のようなものを感じる時がある。

 そう、エセではなく本物の基質だ。


 「何ぼうっとしてるの?」

 俊也が日高サキを見つめてぼんやりしていると時野アヤが訝しげにこちらを見ていた。


 「え?あ、何でもないよ。」

 俊也は瞬時に頭を元に戻し、時野アヤにほほ笑んだ。


 ……なんか時野さんが僕が日高さんを見ていたのを気にしている……。

 ……ま、まさか……。


 「そんなにぼうっとしているのは熱中症になりかけかもしれないわよ。お水を少し多めに持ってきたの。ペットボトル一本分あげるわ。」

 時野アヤは俊也を心配し、500ミリリットルのペットボトルを渡してきた。


 「え……?あ……いいの?」

 俊也は「やっぱり違ったか……。」と若干落ち込んだが時野アヤのやさしさに単純に喜んだ。


 「いいわよ。そう思って三人分持ってきたの。」

 「お、お母さんだ……。」

 時野アヤの言葉を聞き、日高サキがいらないつっこみを入れた。


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