学園のまにまに三話2
昼休み、とりあえず隣の席の女子で我が部の時野アヤに先程聞いた怪現象を話してみた。
「はあ……。長い名前のエクレアってあれね……。『ジャスティスデスティニー風、光り輝く牧草地で育った元気な牛が自慢のレイチェル工房のクリームたっぷりエクレアピーナッツバター入り濃厚チョコソースかけ』でしょ……。エクレアでいいじゃないね。でも食べてみたいわ。」
時野アヤは意外にもエクレアに食いついた。
……すげぇ!女子って本当に甘いものが好きなのか……。おお!やっぱ女子だ!おしゃれだ!
少し舞い上がった俊也は色々な妄想を心にしまい、突っ込んで欲しいところはそこではないとアピールすることにした。
「あの……時野さん、僕はエクレアの方じゃなくて……その稲城ルルって子の事について気になるっていうか……。」
「大丈夫でしょ。あんまりひどかったら止めるけど。」
時野アヤはこの現象に関してはかなりドライだった。
そこへ日高サキが二人の会話に乱入してきた。
「え?何々?何の話してんの?てか、昼休みじゃん?今日こそあのエクレアをゲットしてやりたい!皆も手伝ってよ!知ってるかい?一階のラウンジで出張パン屋が……。」
「知っているわ。サキ。私は殺気だったラウンジには行きたくないの。」
時野アヤは全く乗り気ではなく、持参したお弁当を広げ始めた。逆に日高サキは時野アヤをラウンジに連れて行きたいらしい。お弁当を広げる時野アヤを必死で抑えている。
「いーからいこーよ!あ、俊也君は行くよね?俊也君なら男だしかっこよくエクレアを取ってくれそうじゃないかい。こうガッと!そんで……ほら、サキちゃん、これ食べたかったんだろ?って渡してくれるんでしょ!最高じゃないかい!女子のために頑張る男子!美しい!」
日高サキは俊也にエクレアを取らせるつもりらしい。本当は争い事は好まないのだが男の子アピールまでして持ち上げてくれた日高サキに「僕は怖いから嫌だ」とは言えなかった。
こうやって男は女に使われるんだな……とか思いつつ、俊也はやる気で頷いた。
「任せて!俺が取ってやるからね!」
いつの間にか一人称が「俺」になるほどに持ち上げられた俊也は日高サキとラウンジへ行く事へ決めた。
廊下を歩き始めた時、寂しかったのか時野アヤが嫌々ながらもついてきた。
「あれ?アヤも行くのかい?」
「遠くから見ているだけにするわ。」
おどけている日高サキの言葉に時野アヤはふてくされながらつぶやいた。
……よし、こうなったら時野さんにもいいところを見せるぞ!
日高サキと時野アヤが知らないところで俊也は無駄に気合を入れていた。




