第十四話 バイクライドの後はティータイム
俺はオークさんと別れると再びグラベルロードに乗って漕ぎ出した。森林限界を超えた山は見晴らしも良く景色を見ながら走るにはちょうど良い。
ただ、森林限界を越えた山なので標高も高い。つまり酸素も薄く長時間の運動は、それなりにきつい。
俺は息が苦しくなってきたのでグラベルローから降りると草原に仰向けに倒れ込んだ。
「ぜー、ぜー……。本当にきついわ……」
ナツが先行偵察から戻ってくると、どうしたの? と俺の顔を覗き込むとペロペロと舐め出す。
「うははは、ナツ、くすぐったい……。ぜーぜー、はーはー」
俺はナツを抱きしめると、そのもふもふを撫で回す。しばらくして呼吸も落ち着いて汗もひいてきたので飲み物の用意をする。
サドルバッグからSOTOのフィールドホッパーを取り出す。アルミ製の折り畳みテーブルで簡単に素早く展開できるので気に入っている。
ポーチからスノーピークのチタンマグ300を取り出す。中には小型のアルコールストーブがスタッキングされている。
今回使うアルストはエバニューのブルーノートストーブというアルストだ。ブルーノートといえばジャズ好きなら有名なジャズレーベルやジャズ・クラブを思い出すことだろう。このアルストを作った人はジャズ好きなのかもしれない。これは、おっさんホイホイだね。
このアルストは尖った機能を有していて使い所を選ぶ製品だ。形はアルミ製のダブルウォール構造のぐい呑みみたいな形で小さい。そして小さいので燃料は最大で15mlのアルコール燃料しか入らない。15mlの燃料では300mlぐらいのお湯を沸かすぐらいの能力しかない。ちょうどコーヒーやお茶をマグカップで一杯分だ。
そして本体が五徳を兼ねているので五徳を別に持ってくる必要もない。アルストは風に弱いので風防があると便利である。
そしてこのアルストがユニークなのは本体を蓋をするようにクッカーを置くので、本来ならバーナー口を塞いでしまうのだが、アルストの側面に複数の穴が開けてあり、そこから炎が出る構造になっている。説明書にはサイドバーナー式アルコールストーブと説明がある。
それではお湯を沸かしてみよう。
まず燃料用アルコールを正確に計ることから始める。エバニューが出している計量カップ付きの燃料用ボトルであるALC.Bottleが便利だ。この燃料ボトルも計量カップになっているキャップにて15mlのアルコールを計量。そしてブルーノートにアルコールを入れる。プレヒート用の皿にもアルコールを垂らしておく。
チタンマグに水を入れてアルストに載せる。そしてプレヒート用の皿に垂らしたアルコールにイムコライターで火をつける。するとアルストは温められて気化したアルコールがアルスト側面の穴から出る時に引火して燃焼を始める。
その炎は綺麗な青で、日中では見えないけれど夜中だと綺麗な青い炎を見るだけで癒されるものだ。
そんな青い炎からブルーノートと名付けられたらしい。
暫くして、お湯が沸いたので火から降ろす。程なく燃料を使い果たしたアルストの火が消える。
どこのスーパーでも売っているリプトンのティーバッグをお湯の入ったマグに浸す。そして蓋をして三分待つ。
たったそれだけで出来てしまうお手軽な紅茶だが、アウトドアで飲むと非常に美味しく感じるのだ。むしろこれでいい。この安っぽい感じがいいのだ。
マグカップ片手に大自然を眺めながらゆったりと過ごした。




