第十三話 エアボードに乗ってみた
山の斜面から滑り降りてきた人は俺の前でターンしながら止まった。
やっぱり山なんだから挨拶しよう。
「こんにちは〜」
「おう、こんちは!!」
目の前にいるオークさんの足元を見るとスノーボードのようなものに乗っている。そしてそのボードは地面から10cmほど浮いているのだ。
「エアボードはみたことないのか?」
「エアボード?」
俺がボードをじっとみていたらオークさんが教えてくれた。
「これは風魔法を使った魔導具でな、こうやって風魔法で浮かんで進むんだ」
「なるほど〜。つまり、このエアボードは魔女みたいに空を飛べるのか?」
「あんた、魔女を見たことあるのか。こいつは魔女とは違うやり方なんだ。魔女は重力を祓うことで空を飛ぶが、このエアボードは風の力で少し浮くだけで魔女のようには飛べない」
「そうなんだ」
「飛べないけれど、これはこれで高いところから落ちる心配はしなくても良いし、楽しいんだぜ!! よし、ちょっと載せてやろう」
「ええ!? いいのか?」
「もちろんだ!!」
そういうとオークさんはプロテクターも貸してくれて、エアボードを俺に差し出した。俺はエアボードを受け取って地面に置く。地面に置いただけでは浮いてはいない。
「ボードに乗らないと浮かないようになっているんだ」
とりあえずエアボードに乗ると「カチッ」とスイッチが入ってゆっくりとボードが浮き上がる。
「おー!! 浮いたぞ!!」
「当たり前だ、そこで進みたい方向に重心を傾けると進むから。止まりたい時は後ろに体重をかけると止まる」
「よし! やってみるか」
俺はグイッと体重を前に傾けるとエアボードは前に進む。いや、進むというより急発進した。
「やべぇ!!」
俺は慌てて後ろに体重をかけると急ブレーキがかかり俺は前方に投げされる。
「あっ!?」
世界がスローに見える。これは死んだかも? と思いながら何もできずに迫り来る地面をぼんやりと眺めていた。
その時、前方にブワッと風が巻き起こると、巻き起こった風によってふんわりと俺の体は受け止められて優しく地面に降ろされた。
「し、死んだかと思った……」
「大丈夫か!?」
オークさんが慌てて駆け寄ってきた。
「いやぁ、大丈夫みたいだったよ。なんか風がぶわっと出たけれど、このプロテクターのおかげかな?」
「ああ、そうだ。プロテクターの安全装置が上手く働いたようだな。いや、すまんかった。こちらのセッティングミスだ。セッティングが上級者向けのセッティングのままだったよ。上級者向けはわずかな入力で反応するようになっていてね、過剰な入力になって暴走したんだよ」
オークさんはエアボードのセッティングを初心者向けに調整してくれた上でもう一度エアボードを貸してくれた。
今度は暴走することもなくゆっくりと進むエアボードを使うことができた。




