第十話 コーヒーとバノック
焚き火をする時に気をつけなければいけないのは水の入ったバケツを用意するなど直ぐに消火が出来る準備。そして難燃素材の服装にすることだ。燃えやすいナイロンとかの繊維だと火の粉が飛んで服に穴が開いたり、最悪だと服に炎が燃え広がり火傷を負う可能性もある。
今回は、この世界に来てから買った難燃素材のエプロンを使う。見た目の素材感や手触りは元の世界にもあった酒屋さんのエプロンみたいな感じである。
キャンプ系道具を多く製造しているディアボス工房というところの製品だが、コットン系の素材に耐火の付与された魔素を染み込ませる事で難燃素材としたものだ。魔法陣を縫い込むと完全な耐火になるらしいのだが、それだとコストがかかるのと量産が難しくて、現在のような方法が編み出されたようだ。
そして焚き火用のグローブ。これもディアボス工房の製品で、なめし皮のグローブにエプロンと同様の加工を施したもので難燃性と耐熱性が極めて高めてある。
炎が高く上がり火力が強いうちにケトルに水を入れてお湯を沸かす。火力が強い時に調理すると焦げちゃうから薪が熾火になる頃がベストだ。
トランギアのケトルならFireboxに直接置いても問題ないが、直径12cm以下のクッカーでお湯を沸かす場合はFireboxに付属しているステンレス製の平たい串状のFirestickをFireboxに設けてある溝や穴に刺したりすることで五徳になるようにできている。
縦長のFireboxは煙突効果もあって燃焼効率が良い。少量の薪でもよく燃える。
沸いたお湯でいつものようにエアロプレスを使ってコーヒーを淹れる。朝に目覚めの一杯として飲むコーヒーは本当に美味い。
そして長閑な風景を添えて飲むコーヒーは格別だ。
キャンプチェアに深く腰掛けて足を投げ出し伸びをする。このまま寝てしまいそうなゆったりとした時間が流れるが、朝食を準備しないとな。
朝食はバノックを作ろうかと思う。バノックというのはフライパンで焼く簡易パンだ。欧米のブッシュクラフターがキャンプで好んで作るパンである。
まずは材料を用意する。4カップの小麦粉、ティースプーン4杯のベーキングパウダー、ティースプーン1杯の塩、そして砂糖を一振り。
それらをジップロックに入れてよく混ぜる。自宅でやる場合はボールでかき混ぜても良い。
材料がよく混ざり合ったら1/3カップのオリーブオイルを投入してさらに混ぜる。
そして水を適量を徐々に加えながら袋をモミモミしてよく混ぜていく。この時に水を入れすぎてドロドロにしないように。ボロボロな塊ができる感じの水加減であとは捏ねて丸める。
丸めた生地をまな板に打粉を撒いた上でホットケーキのように平らに整形する。
バターを引いたフライパンを熱してから生地を入れる。焦げ目がついたらひっくり返して蓋をして10分ほど焼く。
キツネ色の焼き目がついたら、これでバノックの出来上がりだ。
俺はバノックを適当な大きさに切り分けてイチゴジャムを用意して塗って食べてみる。クリスピーな食感とジャムの甘さがサイコーな組み合わせだ。
そしてコーヒーを飲んで香りを楽しむ。そしてまたバノックを齧る。それを繰り返す。
これはアウトドアで食べる最高の朝食だな。
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参考文献
Steve's Bannock / Fireboxstove.com
https://www.fireboxstove.com/cookbook/baking?product_id=298
参考動画
Bannock on the Firebox Ultra Cook Kit / PaleoHikerMD
https://www.youtube.com/watch?v=BcYPZGJnyCA&t=757s




