第六話 ホテル・キャスバー その2
ヒールネ山脈に向かって街道を走っているとキャスバー村に辿り着いた。そのキャスバー村の外縁にあるのが『ホテル・キャスバー』その1階には『レストラン・キャスバー』が営業している。
俺は駐車スペースにウニキャンを止めて、ナツにはキャビンに移動して留守番をしてもらう。
「ナツ、ここでお留守番をしててね」
「わん!!」
ナツはベッドに飛び込むと伏せて尻尾をふりふりしてお留守番のポーズ。
「ナツは偉いな〜」
俺はナツに見送られてレストランに入った。
ホテルの外観は石のブロックを積み上げた造りで堅牢なイメージ。内部もやはり石積みの壁でかなりごっつい感じではあるが、壁面には数多くの暖かな色合いのタペストリーが彩飾、暖かい空間を演出している。
「これは、いい雰囲気だ」
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「はい、一名です」
「では、こちらへどうぞ」
ウエイターに案内されて窓側の二人席に案内されて座る。程なくしてウエイターがメニューを持ってきたのでメニューを見る。
「本日のおすすめ料理とかありますか?」
俺は初めて入る店というのもあってウエイターにおすすめ料理を尋ねてみた。
「本日はちょうど良いリオリコ肉が入っていますのでリオリコ肉のソテーがメインのランチコースはいかがでしょうか?」
「うーん、それじゃ、リオリコのランチをください」
「かしこまりました」
俺は注文を終えると観光ガイドを取り出して読み始めた。次に行くオーク国は、もちろんオークによって建国された国だ。この世界のオークは豚のような容貌ではなく猪系かつ日本の昔話に出てくるような鬼のような容貌で2本の角が生えている。そして重要なことだが草食である。地球でも鹿とかキリンとか多くの草食動物に角は生えていたので納得できる話である。
しばらく読書していると料理が運ばれてきた。まずはトメとツネのサラダ。味は元の世界のトマトとツナに似ているがトメは丸い形ではなくて細長い形をしているのだ。細長いのできゅうりみたいな輪切りになっている。ツネはマグロではなくてツネ鶏肉。ナータ油がベースのドレッシングがかけてあって美味しい。
次に運ばれてきたのは豆の煮込み料理。豆を中心に根菜とかも煮込まれている料理。日本的に言えば大豆の五目煮ぽい見た目だが味は西洋風だ。これも煮豆が柔らかくほっこり煮えていて田舎を思わせる懐かしい味で美味しい。
そしてメインのリオリコ肉のソテーが運ばれてきた。丸い平皿に扇状に並べられたリオリコ肉のソテー。そこにマーリンを細切りにしたフライが添えてある。マーリンとはジャガイモに似た味の野菜ではある。
リオリコ肉はワインがベースのタレでソテーしてあり表面はカリッと焼いてあり香ばしい匂いがする。匂いだけでご飯3杯はいけそうだ。
口に入れてみればカリッとした食感と内部はがっしりとした肉の食感と旨味。脂身はあっさりとしていてくどく無い。肉にもほのかに甘味があって美味い。なぜここにご飯が無いんだー!! と叫びたい気分だ。
付け合わせのマーリンフライもホクホク、アツアツで美味しい。さらっとちょうど良い塩梅の塩だけが振りかけてあるのも良い仕事だ。
良い満足感に浸っているところにデザートが運ばれてきた。銀色の細長いトレーに乗せられたクッキーだっとコーヒー。クッキーはありふれた円形でサクサクと美味しい。これがコーヒーに合うのだな。まったりコーヒーを飲みながらクッキーを食べると、どこかのモンスターみたいに無限に食べられそうだ。実際にはお腹一杯で無理なんだがな。
今日のレストランは当たりだった。また機会があったら寄りたいところだ。俺は会計を済ませるとナツが留守番しているウニキャンに急いで戻っいった。




