第五話 ホテル・キャスバー その1
俺とナツはウニキャンのキャビン内にあるソファーに腰掛けて次はどこに行こうかと観光ガイドを眺めながら寛いでいた。ナツは俺の膝の上に顎を乗せて寛いでいる。
「このまま順番に行くとしたら陸続きでもあるオーク国かな?」
「わんっ!!」
「そっかー、ナツもそう思うか?」
「う〜、わんっ!!」
「ははは、ナツはそんなにオーク国がいいのか? よーし、それじゃ、次はオーク国に行こうな!!」
「わん!!」
観光ガイドによるとオーク国はドワーフ国から見て北にある国だ。広い平野があることから大規模農業が盛んらしい。葡萄の生産も世界一らしくてワイン作りも盛んらしい。つまり美味しいワインを飲めるかもしれないということだ。ワインと合わせてグルメも発達して美食も売りのようだ。その他の見どころとしては芸術活動が盛んで歌劇の大劇場があって歌劇鑑賞がお勧めのようだ。
キャンピングカーによる気ままな旅だ、行き先を決めればすぐに旅立てる。俺は展開していたオーニングを格納して外に出していたキャンプチェアやテーブルを片付ける。今日はあまり外に細々したものを出していなかったので片付けるのは早い。
片付けが終わったら助手席側のドアを開けるとナツが器用に登って席に着く。俺も運転席に座るとエンジンを始動。さぁ、出発だ。
昨夜は道路を少し原野に入った所で野宿していたのでチェックアウト時間とは気にしないでいたが今は10時ごろなのでのんびりできた。
地図を見て大体の旅程を頭の中で組み立てる。方向を定めるとウニキャンを原野から道のある方へと走らせる。
でこぼこ道をウニキャンは難なく走破して舗装路に出る。あとは北に針路をとりウニキャンを走らさせるだけだ。進行方向には丘陵地帯が見え、さらに奥にはヒールネ山脈が見えるのどかな風景だ。
ヒールネ山脈はドワーフ国とオーク国の国境沿いに横たわる大山脈だ。それを越えなければオーク国には辿り着けない。
ナツはしばらく風景を眺めていたが飽きたのか居眠りモードに入った。話し相手もいなくなったので俺はスマホに入っている曲をカーステレオ経由で音小さめで流しながら北上する。
今は特に何も無い広い平原の未舗装路を走っているのでかなり揺れる。そんなわけで単調な景色ではあるが眠気はやってこないのでありがたい。
既に2時間も走ったので休憩と昼飯の時間にしよう。今から何か作るのも面倒なのでどこかに食堂でも無いだろうか?
遠くに看板が見える。とりあえず看板のところまで行ってみよう。




