第二話 モン・ジャ山ハイキング その2
まだ背の高い樹木の生えた山の斜面をジグザグに縫うように作られた登山道に沿ってゆっくりと登っていく。ナツは相変わらず興味深い物を見つけるとダッシュして見に行ったりと自由だ。先ほども蝶を見つけて追いかけっこしていた。
曲がり角を曲がる度に標高が上がっていく。そしてついに森林限界に達して低木しか生えてない山道に出た。目の前に広がる山の斜面を見ると、これを今から登るのか……、という気分にはなるが、立ち止まっていても山頂はやって来ないので黙々と足を動かす。
暫くして息も上がってきたので休憩だ。
「ナツ!! 休憩するよ〜!」
呼ばれたナツは元気に駆けて戻って来る。俺はその辺りの適当な岩に折り畳みクッションを敷いて座る。
「ふぅ……」
ナツのために折り畳みのバケツに水を入れてナツに差し出すとナツは水を飲み始めた。喉が渇いていたのか夢中で飲んでいる。
俺もプラティパスボトルを取り出して水を飲む。そして補給食のチョコバーを取り出してカロリー補給をする。腹が空いてなくてもカロリーを補給しておくことでハンガーノックを防げるので大切だ。
ハンガーノックがおきると体に力が入らなくなり動けなくなるので平地ではなんともなくても山では天候が急変したりと危険が増大するので早めの対処が必須だ。
水を飲み終えたナツは咲いている花の匂いを嗅いだりとあちらこちらを探検していて、その様子を見ているだけでも飽きない。
おっと、いつまでも眺めていたいがそうも行かない。水筒をバックパックに仕舞うと立ち上がる。
「よし、とりあえず頂上まで頑張ろう。ナツ行くよ!!」
「わふっ!!」
呼ばれたナツも走って戻ってきた。俺はナツを軽く撫でると自らに気合を入れて歩き出す。
疎らに生えた低木と花と草で埋め尽くされた山道を登っていくと漸く山頂がみえてきた。山頂には石積み二階建ての山小屋が1軒のみ佇んでいる。
今日は気軽なハイキングで泊まりでは無いので山小屋を通り過ぎて尾根沿いに歩いていく。
頂上に万年雪が積もるモン・ジャ山と今いる尾根の少し下方にある草花が生える草原の中に突如として現れる湖。そこにモン・ジャ山が映り込むと逆さ富士ならぬ逆さモン・ジャが見える場所に来た。観光ガイドを読んだときから気になっていた場所だ。観光ガイドに紹介されている場所だけあってあちらこちらで休憩している人を見かける。
「なんて美しいのだ」
俺はその眺望の美しさに目を奪われてしばらく眺めていた。眺めているとナツが寄ってきて遊びたそうに足に体をぐりぐり擦り付けてくるので我に返る。
「おお、ナツのことを忘れていたわけではないよ」
「くぅ〜ん、くぅ〜ん」
「おお、よしよし」
俺はそう言いながらナツの体を撫でてやる。
「よし、ここをキャンプ地とするぞ〜!!」
「わんっ!!」
俺はナツに対して宣言すると適当な空きスペースを見つけてデイキャンプの準備を始めた。




