12.湖で遊ぼう!
湖畔で一泊した翌朝、カルロスさん達が朝食を作ってくれたので一緒に湖を眺めながら食べる。これから撤収するので朝食は火を使わない簡単なものだ。昨日の余った野菜やハムを挟んだサンドイッチとエスプレッソコーヒー。エスプレッソコーヒーは魔導具で入れるので火を熾す必要ないものだ。地球的にはエスプレッソメーカーと言った方が想像できるだろう。サンドイッチは余り物で作っているのにキャンプで食べると何故か美味しいのだよな。場所だったり雰囲気だったりが隠し味になっているのだろうか?
エスプレッソを飲んだ後はナツを連れて散歩に出かける。ナツも大分大きく育ってきたのでリードを付けていると力が強くて引っ張られる。誰もいない所でリードを外してやり俺はメッセンジャーバッグからボールを取り出した。
ボールを取り出したらナツの反応がすごい。じっとボールを見つめて「何時投げるの!?」てな感じで見つめられると照れちゃうな。よしよし、それでは期待に答えねばならない。
「とってこーい!」
掛け声と共にボールを力いっぱい山なりに投げる。投げたボールを追ってナツが猛然とダッシュする。ナツがボールに追いついてジャンプしてパクッと咥えると直ぐに戻ってきてボールを俺に渡してくる。そしてまた期待のこもった目で見つめられると言うわけだ。
何十回か繰り返している内に疲れて来たのか指の力が抜けて投げたボールが湖の方へと飛んでいってしまう。
「しまった!」
為す術もなく飛んでいくボールを見送っていた一人と一匹だが、ボールが水面に落ちる前に突如水中から何かが飛び出してボールを食べてしまった。
「「!!」」
俺とナツは驚いてただそれを見ていたが、ボールを食べた謎の物体が岸に向かってくる。ナツも吃驚して吠えている。ナツが吠えているのに気がついたカルロスさん達が俺の所までやってきた。
「あれはユネッシーじゃないか?」
「ユネッシー?」
「このユネス湖に住む水棲恐竜だよ」
「恐竜だって!?こっ、こっちに来ているけれど大丈夫か?」
「あいつらは大人しいから問題ないと思うぞ、観光資源にもなっていてユネッシーウォッチングツアーとかもあるからな」
「へー」
俺らの所までユネッシーが来ると咥えていたボールを放り投げて俺に渡してくれた。このユネッシーは賢いのかな?
「ありがとうユネッシー」
「ピー!」
なんか嬉しそうに見えるな。
「ユネッシー達は賢いからボール遊びを見ていて混ざりたくなったんだろう」とカルロスさん。やっぱり賢いのか。
「ピー!ピー!」
ユネッシーにもナツと同様なキラキラした目でボールを見つめられているぞ。やっぱり期待に答えねばならないか……。
「とってこーい、ピーちゃん!」と言って俺はボールを投げてみた。
「ピー!」ユネッシーは喜んでボールを追いかけて咥えて戻ってくると俺に渡した。
「ヒロシよ。一つ聞きたいが、ピーちゃんてなんだ?」
「いやね、カルロスさんユネッシーがピーて鳴くからピーちゃんて呼んでみた」
「なるほど……」
カルロスさんの問に俺は答えたが単なる思いつきだ。子供の頃に見た映画の影響に違いないがカルロスさんに映画の説明をするのも面倒だから説明はしない。
しかし、恐竜と遊ぶことになるとは地球で生きていた頃には全く思わなかったので良い経験になったな。
地球で大型ダンプと衝突して交通事故で死亡してこの世界に来てから色々あったな。最初はエルフと出会ってエルフの村長さんには親切にして貰った。
エルフの都に行く途中ではナツに出会って一緒に旅をすることになった。次に行ったエルフの都では遺跡に入って冒険を楽しんだ。
獣人の国ではラリー競技に挑戦したしラリー仲間と仲良くなった。次に向かったドワーフの国では造船所を見学したり魔女に会ったりした。
魔女島を巡って祭りに参加したり遺跡を見たりと楽しんだ。そしてまたドワーフの国に戻ってきてドワーフ達と仲良くなれた。
ちょっと感慨深く物思いに耽っていると遠くで鳴き声がする。湖の中ほどで数匹のユネッシーが鳴いている様だ。
ピーちゃんは「ピー!」と鳴くと名残惜しそうにユネッシーの群れに戻っていった。母親にでも呼ばれたんだろう。
「元気でな!ピーちゃん!」
俺はピーちゃんに手を振って見送った。ナツも「わんっ!」と一声吠えて見送るのだった。
さて次はどんな出会いと旅が待っているのだろうか?俺達、一人と一匹の旅はこれからも続くのであった。
【第一期完】
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最初にプロットを作った内容は全て出しきりました。
今後の予定については未定ですので今回で一応完結となります。
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