06.魔導車工房を見学しよう!
翌日も屋台の営業が終わったらゴンサルヴェス魔導車工房に出かける。
「カルロスさん来たよ」
「おぅ!ヒロシ!待っておったぞ!」
カルロスたちが飯を待ちわびた犬のようにやってくる。尻尾があったら絶対にブンブン振っているね。
「今日も、昨日のようにして欲しい」
「わかったよ」
俺は作業場にウニキャンを乗り入れて所定の位置に停車させる。
「では、ヒロシは適当に待っていてくれ」
「あっ、それなんだけれど待っているのも暇だから工房を見学したいのだが?」
「なら、俺の女房に案内してもらおう、おーい!ルイサ!こっちに来てくれ!!」
工房の奥から昨日、お茶を持って来てくれた女性がやってきた。やっぱり奥さんだったんだな。
「ヒロシ、こいつが俺の女房のルイサだ。ルイサ、ヒロシの工房見学の案内をやってくれないか?」
「わかったよ、お前さん。ヒロシさん、カルロスの妻のルイサです。うちの旦那がお世話になっております」
「ヒロシといいます。こちらこそ、よろしくお願いします」
俺達が居た所は完成した魔導車を整備したり検査する場所で魔導車を製造しているのは別棟の工房にあるようだ。
ルイサさんの案内に付いて行って製造工房に入る。中は広い体育館というか倉庫というかそんな感じの場所で日本の自動車工場のようなみっちり詰め込んだ感じはなくて魔導車は一台ずつ台車に載せられた状態で組み立てられるのだが流れ作業と言うより一台一台に担当作業員が付いて組み立てていく感じになっている。地球の高級スーパーカーを製造している工場に近いかも。オーダーメイドに近い生産なので、きっちりラインで作るより便利らしい。
造船場を見学した時にも見た全高四メートル前後のゴーレムが重機として作業しているのでありふれた装備なんだろう。
ここで作っているのはステーションワゴンタイプのものだ。四〜六人乗りで後部が荷物置き場になっているタイプだ。その他にはウニモグの様なトラックも別のラインで作っているそうだが今回見学するのはステーションワゴンの方だ。
まず、フレームが組み立てられる。フレームは地球で主流のモノコックフレームでは無くてウニモグと同じラダーフレームだ。この辺りは馬車から発展した地球との共通点かも知れない。ラダーフレームは馬車と同じ構造なので地球でもモノコックフレームが登場するまでは主流のフレームはラダーフレームだった。
そんな話をルイサさんとフレームの製造を見ながら話していたら職人さんが詳しく教えてくれとモノコックフレームについて根掘り葉掘り聞かれたので教えたのだが……。これが所謂知識チートて奴ですかね?
今後、この世界でモノコックフレームが流行ったら俺のせいかも知れないがフォード・モデルTレベルを既に超えている量産技術レベルを見ているとモノコックフレームが生まれるのが早まるか遅いかの違い程度だと思う。もしかしたらどこかの工房が既に作っているのかも知れない。
次に見たのは魔導発動機の制作現場。原理は良くわからないが幾つかの魔法を組み合わせて実現しているようで、もちろん俺にはさっぱり分からない。基本的には鉄製でミスリルとかオリハルコンとかファンタジー金属も使われているようだ。
ラダーフレームに魔導発動機が載せられて外装が被さる。外装は既に塗装済みだ。塗装は塗装専門の作業場で塗装しているようだ。車輪を取り付けたりドアを取り付ける。
次は魔導線の配線の設置工事に内装の取り付け座席やハンドルとか魔導計器類が取り付けられる。座席や魔導計器類といったものは別の工房で作っているものを取り付けているようだ。魔導車に使う部品はそういった部品専門に作っている工房に発注して作って貰ったもので組み立てているのだ。そしてガラス類も取り付けられて魔導ランプ等の取り付けが終わる頃には完成となる。
後は、実際に魔導発動機を始動して各種の動作チェックをして問題なく組み立てられているか検査して組み立て終了だ。
そんな感じで手作りに近いので一台作るのに十日ほどかかるようだ。見学も終わったのでルイサさんにお礼を言ってウニキャンがある工房棟に戻った。
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