表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん、早期リタイアしてキャンピングカーでのんびり異世界ライフ  作者: 椎乃律歌
第五章 魔女島

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/101

12.魔女エアレースをしよう!

主人公以外の視点です。おっさん達は次回戻ってきます。

 魔法連合国の各地を転戦して行われる魔女エアレース。人気も高く観客も常に大入りだ。チケットは飛ぶように売れて直ぐに完売するほどだ。


 私、ヒメロペーはそんな魔女エアレーサーの一人だ。今年の開幕戦は魔女島の北の玄関口である港で行われる。今後の戦績を占う重要な一戦だ。プロのエアレーサーは出資者(スポンサー)の広告をレーススーツに貼り付けて戦う。より多く勝利して広告の露出を増やすことが使命ともなっている。私はまだ新人だが、ここまで応援してくれた後援者のためにも初戦を勝利で飾りたいと意気込んでいたのだ。


 選手のために用意されたテント村にて各出資者から提供されているケータリングを賞味しているとテント村の入り口が騒がしくなった。去年の年間女王であるライドネーがマスコミを引き連れて入ってきたのだ。テント村の中はマスコミは入れないのでライドネーだけがやって来てみんなに気軽に挨拶している。


 世間でどう思われているかわからないが選手たちの間の仲は良好だ。対戦相手でもあり叩きのめす相手でもあるのだが、そもそも競争相手がいなければ勝利は出来ないし、幼い頃から各地のアマチュアレースで顔を合わせる間柄なのでレースがない時は友達付き合いしている選手が大半である。練習も一緒にしていたりするしね。


 ライドネーは私の憧れで何時かは勝ちたいと思っている。一緒に練習しているからこそ彼女の強さも分かるから乗り越えたいと願うのだ。


「ヒメロペー、調子はどうだ?」

「まぁまぁよ」

 ライドネーは何時ものように軽い感じで尋ねてきたので、私も軽い感じで返した。

「初戦だからといって気を張りすぎるとレースが始まるまでに疲れるぞ」

 ライドネーには全てを見抜かれている。私は肩の力を抜いて深呼吸した。

「ありがとう、レースでは負けないから!」

「うん、それでいい」

 そう言って笑いながら去っていくライドネーを見つめていた。悔しいけれどライドネーはカッコいい。


 オープニングのアクロバット飛行が終わり、アマチュアレースの前座レースが始まっている。アマチュアレースに出ている子達が何れプロになる時が来るのだろう。アマチュア時代のライドネーは圧倒的に強く美しかった。今はさらに磨きをかけて洗練されている。


 アマチュアレースが終わればいよいよメインレースの本番だ。


 魔女エアレースは選手が一斉にスタートするのではなくて選手が抽選順番に従って飛行して、その飛行時間で競い合う競技だ。選手は飛行する時の風の向きや温度や天候等の情報を良く読んで僅かなタイムを詰めていく。レースは一人三回飛行して一番速いタイムを出した選手が優勝となるシンプルな競技だ。


 私の番は全選手六人中三番手だ。早すぎるわけではないが遅い方でもない。先行する二人の競技を見てから飛行できるので若干有利かもしれないが天候が悪化したら遅いスタート順が逆に不利になる。


 順番がやって来た。審判のスタートの合図で初回から全開で行く。本日の天候は晴天だけれど上空は風が強い。特に風に注意して飛ぶ。


 コースはポイントに置かれた魔道具で生成された直径三メートルの円を潜り抜けることで進行する。ポイントは順番があり、その順番通りに正しく飛ばなくてはならない。コースアウトして違うポイントを潜ったり、順番を飛ばして潜った場合は失格だ。三メートルの円の中なら何処を通っても問題はないが円の縁に体や箒の一部が触れたら減点の対象となる。一ポイント減点の度に自身の計測タイムに加算されていくのでミス無く飛べるかが勝負の分かれ目だ。


 私は一回目は緊張し過ぎていたのが収まり、程よい集中力で競技を終えて一回目の暫定トップになることが出来た。


 一回目とはいえ、ライドネーに勝てたのだ!チーム全員が好感触に盛り上がっている。


 続く二回目は惜しくも僅差でライドネーに及ばなく僅差だが一位を守った。


 次の三回目ですべてが決まる。私は出来る限りのギリギリのラインを攻めた。それこそ髪の毛一本分の差を詰めるように。私は絶好調で次々とポイントをクリアしていく。これならいけるぞと思った最終コーナーで立ち上がる時に僅かに突風が吹いた。私はその突風に煽られてしまい姿勢を立て直すのに手間取り大きくタイムを落としてしまった。結果だけを見れば新人の初戦の三位なので上出来なのだが私は控室に戻ると一人で気が済むまで泣いた……。


 散々泣いた後に控室を出るとライドネーがいて私の肩を軽く叩くと何も言わずに去って行った。


 よし、次こそ一位を獲ろうと心に誓って表彰式に向かったのだった。


評価、ブックマーク、誤字報告、お好きなエアレースなどが有りましたら、お気軽にお願いします。


次回から第六章『ドワーフ国その二』が始まります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ