05.セイレーンの魔女メッセンジャーサービスに行こう!
「「あっ!」」
たこ焼きを買いに来た魔女のお客さんは件のペイシノエーさんだった。
「ヒロシさんですね!」
「ペイシノエーさんお久し振りです」
「来て下さったんですね!」
「ああ、魔女島てどんな所だろうて思ってね、後で伺おうと思ってたんだよ」
「それなら四の一時(午後六時)頃に仕事が終わったらまた来ますので、この場所で待っていてくださいね!」
「ああ、了解した。毎度ありー!」
仕事中なのか挨拶もそこそこにペイシノエーさんは飛び去って行った。
本日分のたこ焼きも全部売れたので屋台を畳んでキャンプ場に向かう。広場でキャンプするのは駄目なんだよね。路駐も出来なくはないけれどキャンプ場でキャンプした方がトラブルが少なくて済む。
前日と同じキャンプ場で場所を確保して、ナツに晩飯を用意して留守番を頼んでから自転車で出かける。荷物はメッセンジャーバッグを背負っただけの軽装だ。犬用のバッグでもあればナツも一緒に連れていけるのだが、ナツも大きくなってきたので背負うのは無理かもしれないな。
広場に着いて暫く待っているとペイシノエーさんが歩いてやって来た。
「お待たせしました、それでは行きましょう」
「歩いて来たという事は、ここから近いのですか?」
「ええ、そうなんですよ」
俺は自転車を押しながら会った時の事や、ここまでの話やら、ペイシノエーさんのあの後の話とかをしながら歩いていたら到着した。
「ここが『セイレーンの魔女メッセンジャーサービス』です!!」
両脇に二階建ての建物があってその間の奥まった場所に三階建ての建物が『セイレーンの魔女メッセンジャーサービス』の店舗兼住宅だそうだ。この三軒ともサーモンピンク色に外壁が塗られていて南ヨーロッパな雰囲気がある。この辺りの商業系建物は白だったりオレンジだったりクリームイエローだったりとカラフルな外壁な建物が多いので見ていて楽しい。店舗前の通路兼中庭は三軒の共用スペースだそうだ。鉢植えの花とかが置いてある。
中庭に自転車を置かせて貰って店舗に入る。一階が店舗になっていて二階から上が居住スペースのようだ。一階は主に荷受けするだけなので受付カウンターと事務所て感じの誂えになっている。
「姉さん!ヒロシさんを連れてきたよ!」
ペイシノエーさんが奥に向かって呼ぶと三人の魔女が出てきた。
「はじめまして、ヒロシさん。うちのペイシノエーが迷惑をかけたようですみませんでした。私が長女のテルクシオペイアーよ。この『セイレーンの魔女メッセンジャーサービス』の代表でもあるわ」
ウェーブのかかったロングヘアーで、金色の瞳が印象的な切れ長の目の美女だ。
「ペイシノエーが大変世話になったようだね、あたしは次女のアグラオペーメーだ」
ポニーテールが印象的なスポーツ出来る系活発系美女だ。目の色は濃い藍色だ。
「はじめまして、お兄さん。ボクは四女のモルペーだよ!」
榛色の瞳を持ったショートヘアーが似合うボクっ娘だ。この世界にもボクっ娘がいたとは驚きだ。
「はじめまして、俺はヒロシ・ヤマノと言います。最近、この世界に来たばかりなので右も左も分からない状態ですが、よろしくお願いします」
「人族とは珍しいわね。さぁ、遠慮なく中に入って下さい」
テルクシオペイアーさんに招き入れられてお邪魔することになった。みんな揃って店舗の奥にある階段から二階に上がるとそこはリビング、ダイニング、キッチンになっていた。所謂LDKである。広さは一六畳以上はあるのではなかろうか。
奥の壁は石貼りの壁でI型のキッチンが据え付けられている。ダイニングには丸いテーブルと四脚の椅子。リビングには座り心地の良さそうなソファーとローテーブルがある。
「お好きな場所におかけ下さい。晩御飯はまだですよね?一緒に食べましょう」
とテルクシオペイアーさんにソファーを勧められる。
「ありがとうございます。あっ、これはお土産です」
俺は背負っていたメッセンジャーバッグを降ろして中から包を取り出した。
「俺の故郷の食べ物でお好み焼きと言います」
「ご丁寧にありがとうございます。こちらもテーブルに並べて皆で食べましょう」
ペイシノエーさんが、早くもお好み焼きの匂いにつられて涎を垂らしている。ドジっ子と食いしん坊属性だなと思ったが言わないでおこう。魔女さん達の家庭料理がどんなものになるのか楽しみである。
評価、ブックマーク、誤字報告、理想の住まいなど有りましたら、お気軽にお願いします。




