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おっさん、早期リタイアしてキャンピングカーでのんびり異世界ライフ  作者: 椎乃律歌
第一章 エルフの村

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05.村長の話を聴こう!

今回は何時もよりちょっとだけ長いです。

 村長宅に入る。玄関を抜けると暖炉のあるリビング。居心地の良さそうな空間だ。高原の避暑地にある別荘のような雰囲気。壁にはカラフルな織物が飾ってあったりして華やかだ。


 リビングにはソファーとローテーブルがあって、そこに座るように勧められる。程なく村長の奥さんがお茶菓子を用意してくれた。それをみんなで口をつけながら村長の話が始まった。


「私は今は村長をやっていますが、以前は研究学園都市の学びの宮にて学術師を勤めていました。そこでは魔法の研鑽や歴史などを研究していたのです」


 村長は地球で言う所の大学教授のような仕事をしていたようだ。学びの宮とはエルフ国の最高学府らしい。故宮を再利用しているので「宮」と呼んでいるようだ。ちなみに故宮は王政が廃止されたので故宮となり今は宮殿はないらしい。エルフ長老会という名の議会制度になっているそうだ。


「それであなたのような彷徨い人のこともよく知っているのです。この世界には時折、神のいたずらか、異世界から色々な生き物がやってくるのですが長年の調査でわかったのは、元の世界で一度死を体験して気がついたらこの世界にいたというものです」


 やっぱり俺は一度死んだのかな?状況からしてそうとしか思えない。


「偶然にも彷徨い人がこの世界に現れる瞬間を目撃した証言が何件かあり、私達が検討した理論では、死んだ者は一度、物質の最小単位に分解された後、時空間を物質の情報のみがこの世界に伝わって、この世界にあるもので再構築されるというものです」


 これはもしかして量子テレポーテーションとか言うやつですか!?その説だと元のオリジナル情報を元に再構築されたのが今の俺ということになるか……。どちらにしても完全に俺は死んでいますね……。


「この世界には魔法の基礎となるアイテールが多量に含まれており、再構築時にアイテールも使用されるために魔法が使えない世界の生物も内部にアイテールを保有するのです。残念ながら人族は元々魔法を使える器官が無いので魔法を使うことは出来ませんけれどね」


 なるほど、つまり異世界に来てみたけれど俺自体は魔法を使うことは出来ないのか。


 ここでこの世界の魔法について少し説明しておこう。


 この世界ではアイテールという原子が酸素や水素の様に存在している。このアイテール自体は生物が吸い込んでも無害ではあるが高濃度のアイテールは毒になる。酸素中毒と似たような感じだ。エルフなど魔法を使える生命体はこのアイテールを体内に取り込んで魔力に変換することが出来る。工業的にはアイテールを触媒を通して魔力に変換して作り出している。


 一方、魔法を実行するために魔法を使える知的生命体は脳内にある魔法論理演算野によって魔法術式を構築して出力用に変換した後に言霊として実行される。言霊を紡ぐことで体内で生成された魔力が魔法として実行されるのである。つまり人族を始めとした魔法を使えない知的生命体は魔法論理演算野が無いので魔法が使えない。


 誰でも使える魔導具は言霊を魔力を宿した特殊なインクで書き留めた魔法陣を利用して発動している。近年は魔法論理演算野を魔導具として再現できないか研究中のようだ。


 つまり、この世界ではイメージだけでは魔法は使えないし、無詠唱でも魔法は使えないし、詠唱キャンセルなんてのも無理な世界なのだ。


「しかし物の場合は少し特殊でして、魔法技術で限りなく再現されます。それも神代レベルで。つまりあなたのウニキャンとやらは魔道具というか神の御力で魔道具化されているために神器に近いものなのです」


 なんだってー!?俺のウニキャンが三種の神器のようなものになっただとー!?神棚作っておけば良かったかな!?


「そう言えば、俺のウニキャンはガソリンと言うもので動くのですが、減っていたガソリンがこちらで目覚めていた時には満タンでした」


「それは復元力が働いているのでしょう。怪我してたり、壊れていたものは元の状態に復元されてこの世界に現れますから。魔道具は魔力を注げば誰でも使えますが、神器化した物は所有者以外には使うことが出来ません。その上、使って減ったり壊れたら元の状態に戻ろうとする復元力が働きますが普通の魔道具は壊れたら直さないと壊れたままです」


 例外的に魔道具に高度な復元力の魔法を付加することもあるらしいのだが、コストと手間の関係で滅多には使わないらしい。新しく買ったほうが安いて言うやつだ。


 話の流れで詳しくウニキャンを観てみたいという話になって村長と一緒に外に出る。学者魂が疼いたらしい。


 ウニキャンの前で村長が懐から巻物を取り出した。巻物は「スクリプト・リーディング・スクロール」という物らしい。ウニキャンに触ってもよいかと聞かれたので許可を出した。なんでも許可なく触ると防御結界が働いて弾き飛ばされるのだとか。もしかして巨大猪が飛ばされていたのは防御結界のおかげなのかな?


 村長はウニキャンに巻物を当てると浮かび上がった魔術式をうんうんと頷きながら暫く検分していた。さらに巻物をあちこちに当てながら一周して戻ってくる村長さん。


「で、村長さん何かわかりました?」


「おお、ヒロシ殿すまなかった、つい珍しい魔術式を観たもので長々と思いふけってしまいました。やはりというか、このウニキャン全体が大規模な神器となっていますね。術式も複雑かつ高度で私達では解析が難しいものばかりで読み取るのに苦労しました。面白いのは癒術系の式が常時可動しているのですが、使われない時には待機状態ですが怪我したり疲労した者がいると即時に発動するようです」


「あっ、ミリィさんをウニキャン内で介抱しましたが、何もしなかったのに元気になって起きてきたのはそれが原因なのかな?」と今更ながら思い当たる。


「なるほど、娘がなんとも無かった理由がわかりました、改めてありがとうございました」


 そんなこんなで検分も終わり、また村長宅に戻る。


「それにしても、色々と分からないことが見えてきたので参考になりました」


「いやいや、娘の恩人ですから気になさらいでください。こちらも新しい知見を得ましたので」


 などと後は世間話をしつつ過ごしたら、もう晩飯時。お暇しようとしたら村長さんに晩飯でも食べていってくださいと言われたので断るのも変なのでご相伴に(あずか)ることにした。


毎週金曜日に更新しています。

誤字などありましたらお知らせください。


評価やブックマークありがとうございます。

執筆の励みになるのでこれからもお願いします。

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