表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者学校の英雄(笑)  作者: 岡本砂糖
第一章 勇者の卵
2/5

転生一日目

俺にはわかったことがいくつかある。まず、俺はレオン・ゴドウィンだ。そして、この世界はおかしい。勇者や魔法使い、まるでゲームの世界のような空間に来てしまったようだ。

つぎに、俺は勇者候補生であり、11歳の春から、勇者学校というところで勇者になるための勉強をするのだという。そして優秀な勇者候補生、つまり『成績優秀者』になれば、卒業してから魔王を倒すもよし、力を蓄えるのもよし、『勇者』になれるのだという。


わっかんねー!!

あともう1つ言えることは俺が上流貴族で、なんと一週間後に9歳になることだけだ。ちなみに今は冬。ここの世界では暦は詳しくわけられず、誕生日の季節で色々分けられるらしい。俺は春生まれ。つまり、あと一週間で春が来る、というわけだ。

レオンの記憶も徐々に俺のなかに入ってきた。だが5歳から前の記憶がないのだがそれは置いておいて、父親と母親の名前はエリーナとジョーンズ。(仮)ではなく本当の両親だった。だがどちらも俺、つまりレオンと違う色の瞳だ。俺の容姿は超絶イケメンショタだが、まわりが超超超イケメンなのでめっちゃ霞む。そして地味な色合いなので、勇者……?となる。俺の想像していた勇者ってのはさ、もっと金髪碧眼の奴だった。そしてカラフル。みんなカラフル。お母様の側近のルージュさんは赤い髪にオレンジの瞳。さすがルージュ!って思ったよ!!顔面偏差値も高いよ!ルージュさんは。そして今は俺が目覚めた日の夕食である。


「今日はレオンの調子にあわせましたよ。」

お母様がにっこにっこしながら俺に言う。

「ありがとうございます、お母様」

俺も負けじとイケメンオーラびんびんして話す。

出てきたのはステーキだった。

そう、あのみんなが知っているであろう肉の塊。

「今日はお父様があなたのためだけに狩ってきたのですよ。」

「ふっふっ、レオンのためだからな」

くすくすとメイドも側近たちも笑う、笑えないのは俺一人。

「お肉、ですか……」

「ええ、レオンの大好きなフィルトリルですよ」

レオンはフィルトリルという肉みたいなやつが好きらしい。俺は勇気を出して食べようと思うと、「レオン!?」と両親に止められた。なぜに。

「まだ食前の祈りをしていないでしょう?」

「大好物を食べたい気持ちはわかるが食前の祈りをしなければだぞハッハッハッ」


「春の神の恩恵を、この食事に込められた労働を、私の体へいただくと共に、神に祈りを捧げます。」両親が言うとまるで体が覚えていたかのようにすらすらと祈りが出てくる。そして言い終わると1拍あけてぱんっ、と手を叩く。これを合図に家族三人が食事を始める。フィルトリルは思ったより美味しかった。見た目はどういても牛肉のステーキなのに味はローストチキンでびびった。あとは、どうみてもレタスなのにキャベッツという野菜のサラダや、じゃがいもの冷やしスープなどがあった。

どれも、美味しかった。

「あら?レオン、レオンはキャベッツが好きでしたっけ?」

しまったー!まさかこのレオン、キャベッツが嫌いだったりしたのか!?

「はい、お母様、とても美味しいです。」

キラキラとイケメンオーラを出して答えると、お母様はなにか納得したみたいで、それ以上はなにもいってこなかった。


「では、食後の祈りを。」

みんなが食べ終わったタイミングで、ずっと口を閉じていたお父様が言う。

「春の神が我々に与えられたものを美味しくご馳走さまでした。」

「春の神が我々に与えられたものを美味しくご馳走さまでした。」

お母様と俺が続いて言う。


「さあ、レオン、あなたは病人なのだから早めにもうおねんねの時間ですよ」

おねん…ね?いや、確かに俺は8歳だ。いやでももうすぐ9歳だ。つまり小学2年生くらいに…『おねんね』を使うのか!?なんだこの世界!大丈夫か!!と、一人脳内つっこみをしてから、


「はい。」 と、短く、イケメンオーラびゅんびゅんで答えた。



「レオン坊ちゃん、用意はできております。」

お、おう、やっぱり貴族だな……寝室にいくとすでに就寝の準備がされていた。

「ぬおう!!??」

そしてなんとメイドがっ、俺の服を剥いだのだっ!しかも美人!田中守たなかまもる時代には得られなかった『美人メイドに服を剥がれる』という体験に俺は驚きつつも、いやいやいや、という気持ちになる。

そうだ、これはメイドの仕事なんだ。

就寝前なんだから、パジャマに着替えるのは当たり前のことなんだ。

と、自分に言い聞かせていないと妙な気をおこしそうだ。美人メイドは俺の奇声に驚きつつも、シャツを脱がせてきた。すると男の仕えがメイドに手をあげそれを制す。そして男の仕えがシャツを、ズボンを、なにもかもを剥いだ。

んんんんっ!?美人メイドは!?美人メイドにズボン剥がれたかった!なんて変態じみた…いや、26歳平々凡々な生活を送ってきた俺からすると普通なのだが、そんな考えを読み取られないようにぐぐっ、と唸ると、既に着替えは完了していた。あとは寝るだけだ。

「おやすみなさいませ、レオン坊ちゃん」

美人メイドと男の仕えが部屋から出ていく。


目を閉じて、今日、自分自身に起きたことについて考えることにした。

異世界

転生

勇者候補生

フィルトリル

よく分からないこの世界(いや確かにフィルトリルは違う気もしなくもないが)で、俺はどう生きていけば良いのか。絢爛豪華な装飾、布を存分に使ったパジャマ。こんなのに転生するくらいなら、ラノベでよくある「転生したら村人Cだった件」みたいな、村人として平穏な暮らしがしたかった。

考えているうちに、レオンは夢の世界へと落ちていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ