プロローグ
俺は田中守だ。そこそこ良い大学を卒業、そこそこ良い会社に勤め、やっと部下を持った26歳。の、はずだった。
俺は、あっけなく死んだ。
過労だったという。働きすぎたか~と独り反省。だがしかし、そんなことで俺は諦めたくない。
死にたくない。死にたくない。
そんな願いが叶ってか、なんと俺は目覚めたら勇者になっていたわけであった…………
いや!意味わかんないよね!大丈夫!俺もわからん!!
分かっているのは、目の前にいる人たちが俺の親で、酷く心配していると言うことだけだ。
「レオン!心配したのよ!!」
「良かった、無事か……」
俺が目覚めたことにたいして喜び今にも遥か高みへ飛んでいってしまいそうな母親(仮)と、安心で胸を撫で下ろす父親(仮)。二人の前で俺は唖然としていた。
俺の手は明らかに小さく、成人男性とは思えない。いくら日本人が小柄だからと言って、こんなに小さいのはあり得ない。そして豪華絢爛、煌めく調度品の数々。俺が寝ているベットだって、装飾品として様々な飾りがついている。寝心地は悪いが。俺が一生働いても稼げないような装飾品だ。寝心地は悪いが。
「良かった、かれこれもう一ヶ月も目覚めないから、本当に心配したのよ。」
一ヶ月―――?
「ねえ、おr……ごほん、僕って何歳だっけ?」
あどけなさの残る顔で俺は聞く。すると母親(仮)は驚いた顔で
「次の週で九歳かしら?」
…………なんだって!?
つまり俺は、田中守(26)は働きすぎの過労で死に、目覚めるとレオン・ゴドウィン(8)として生きていくことが決定したわけであります。
これにて俺の人生終了!はい!
って終われるかーーい!!いや、終われない!
自分の髪の毛を見るとやや長い紺色だった。ようし、紺か、不思議だな。たぶん地球上にはこんな色の人間生息していないな。
「おかあ……さん?鏡、持ってきてもらってもよろしいですか? 」
「レオン、お母様です。分かりました、ルージュ、鏡を。」
「はっ」
ルージュ、と呼ばれた使用人はさっと身を翻して俺が寝ている寝室から退場。やっぱり俺は貴族なのか、仮にも母親(仮)を『お母様』と呼ぶとは……俺が生きていた世界では考えられんぞ…。
「ルージュ、ありがとうございます。レオン、どうぞ。」
『お母様』から鏡を受けとる。やはり、昔のもののようで金属光沢でキラキラと光っている。まるで中学生の時に習った理科の教科書に載っていた昔の鏡じゃないか。ちょっと違うのは持ち手の部分が宝石で縁取られているとこだけか。
鏡を見る。目を疑う。
「うわあああああああああああああああっ!?」
鏡を見る。もいちど見る。やっぱり分からない。
鏡には、超絶イケメンのショタがいたからである。
みたところ、俺は紺色の髪に紺色の目を持った色彩的には地味で無難だろう。しかし、顔の作りが凄い。いや、日本人だった田中守とは比べ物にならない。いや、あんな平たい顔族でしかもフツメンだった俺と比べるのが悪いのかオーマイガッ!
「……ありがとうございますお母様。」
「やっぱり顔色が悪いわ。温かいものでも食べますか?」
「食欲がありません。」
正直に言うと眠い。寝たい。というか寝たらもとにもどって俺は日本に変えれるのではないかと微かな希望を抱いているのだ。寝させてくれ。頼む。
「しっかり食べなきゃ駄目よ、だって貴方は―」
「次期勇者なんだから」
俺は思考を放棄した。