2.別れ
「私、みるきーって呼んで貰えると嬉しいです」
「は、はぁ…」
深紅の瞳孔で見つめられ、自らもブルーアイで美形の黒髪にキャラクターを設定していると言うのに、覚醒は足元がふらついていた。何せ、女子と協力プレイするのは初めてだからだ。
――早くゾンビ来ないかな…
覚醒が今回のステージであるブラウン管が積み上がった、鉄パイプの転がる荒れ果てた地を見ていると…。
「あ、来るな」
「来ますね!」
ゾンビが何メートルか離れたブラウン管の背後から、覚醒たちに近付いてきた。
人に話しかけながらも、みるきー(tanakamilky)が反応出来るのは難関ステージを突破してきた証だろう。
みるきーは靴やタイツまで全身黒のゴスロリ服と、陶器のような白い肌にコントラストされた赤髪、そこから覗かれる可愛い顔立ちに似合わないライフルを構えて、右端の壁に走り寄って戦闘体制に入った。
迫力のある巨漢ゾンビが覚醒の前に立ちはだかり、覚醒はたじろぎながら、指先を武器変更のメニューにタップして先程アップグレードしたライフルを装備した。
巨漢ゾンビに攻撃されそうになるが、巧にライフルを操りブラウン管の後ろや場外から現れる百人越のゾンビを射殺していった。
みるきーはと言うと、巨漢ゾンビに爪で切りつけられたらしく、右腕の袖を裂かれて痛恨の如く血が滲んでいた。
「――世界ランク一位のpartypenta(覚醒のユーザーネーム)さんの足手まといになってはいけないのに…」
最難関ステージはクリアどころか、挑戦者も僅少なのだ。
みるきーは、世界ランク三十位で達人スキルであるにも関わらず身体能力が低かった。
「大丈夫だ 俺が始末する」
覚醒は直射日光で光るブルーアイをみるきーに向けたら真顔で言った。
そして、至近距離まで迫ろうとする多種多様なゾンビを丹念に殺していく。
「116,117,118,119,120,121,122,123…………」
みるきーも加担し、相違なる銃声がグラウンドに響いた。
みるきーは何度も武器を変えるが、威力は衰えなかった。
そんなこんなで、ステージはクリアした。
――また二位との差が開くな…。
覚醒はそう思いながら世界ランクを閲覧すると、みるきーのグレードが昇格しており二十九位と僅差になっている事に気が付いた。
覚醒の順位は相変わらず一位で、二位も成績を上げてきているがその差は歴然だ。
Zombieのような世界的に売れているオンラインVRゲームで、一位を獲得したらプロゲーマーになるという事もあり得るだろう。
しかし、Zombieというゲームは米国の会社が製作しているものであり、製作会社は覚醒がランク一位になってから恒常的に「プロゲーマーになるために渡米しないか?」と誘っていたわけだが、拒否されていた。




