4話
「え?あの…その……」
「和泉さんも『こっち』の人か!!そっかそっか!」
当の和泉さんは全く状況を把握していないようだけど、私としてはこれ以上にないくらい嬉しいことだった。
自分以外にも、バスケをやっていて『こっち側』の人に出会ったのは、初めてだったから。
「私もね、すごく好きなんだ!『アニメ』!!」
敬遠され続けてきた事実を、あのサイトが判った時点で自然と口に出してしまっていた。
今思えばもしかしたら友達に頼まれて開いていたんだけど…と言われていたらもうアウトとだったのだが、あの時の私はそんなこと考えていられるわけがなかった。
同士を見つけられたという時点で、話しかけざる得なかった。
「ほんと……?」
和泉さんも和泉さんでだんだん状況が判って来たらしく、みるみるうちに先程の笑顔が戻ってきた。
そしてどちらからともなく、気がついたら握手をしていた。
「「これからもよろしく」」
ここに一つ、バスケ以外の新たな友情が生まれた瞬間だった――――――
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和泉さんが明日も一応部活をしに行くと言っていたので、バスケの楽しさを忘れられなかった私は明日も行くことにした。
明日は一人じゃない。大塚さんはもうすでに入部しているし、和泉さんも一緒なんだからある程度は緊張感もほぐれるだろう。
なにしろあんなアットホームな空気にいれば、すごく落ち着いて楽しくバスケができる気がした。
今だけじゃない、これからも。
「……玲?」
「あれ?ようにぃ?」
家に帰ると部活棚の前にようにいが何かを探しているのか棚の前を占領していた。
珍しい。もう大学も終盤だというのにどうしてこの棚に用なんかあるんだろう。
「なにしてるの?」
「……別に」
私を見つけるや否やさっとその場を立ってどこかへ行ってしまった。
ようにいの行動はたまに読めないことがあるので、今回もその辺の類だろうと思いながら明日着るウェアを探そうとした。
すると――――――
「ん?」
バスケの棚から攻めようと一番上の棚を開けた途端、見慣れないウェアがそこにあった。
大きくバスケットボールの絵が描かれている、すごくシンプルなウェア。こんなのたいにいも持ってなかったし、もちろん私も持ってない。
「なんだろうこれ……?」
不信感を抱きつつも、せっかくあるのだから使わない方がちょっともったいない。
そう思った私は迷わずそれをかばんの中へ突っ込み自分の部屋へと歩き出した。
明日も楽しみ。なんてったって、バスケができるんだから。
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翌日の授業は正直頭に入ってこなかった。
早くバスケがしたい。あの中でなら、私はいつもの私でいられる。そんな気がする。
まだどんな性格かもわからないチームメイトでも、とにかくバスケができればもうそれでいい気もしてきた。
入る入らないは、また別の話だけど。
「さぁて!放課後だよ神影!!」
私の隣にはきがついたら大塚さんがいた。ものすごく目を輝かせてこちらを見てくる。
バスケ部に行ったということで彼女から「もう呼び捨てでいいよね!」と言われたので特に嫌なわけでもなく了承をした。
じゃあどうして名字で呼ばせているのかといえば、私が「あきら」と呼ばれるのがあんまり好きじゃないから。なんか自分っぽくないなと思って家族以外にはあんまり呼ばせていない。
「今日も来てくれる?」
輝くような笑顔でこちらをみている。これで逆に「今日はちょっと……」と言ったらものすごく愕然とするに違いない。
だけどまぁ、そうはならないわけで。
「うん、することもないし今日も体験入部だけどいかせてもらうね!」
「やったぁ!あっ、ちょっと待ってね?今日から本入部の子も一緒だから!!」
早速本入部の子ができたらしい。昨日初めてバスケ部に行った私は、和泉さん以外の体験入部者を知らないから、自然と緊張感が高まってくる。
トコトコと大塚さんは教室を出てくると、数分もしないうちに教室まで戻ってきた。
「紹介するね!長谷部真理さんっていうの!」
「どうも、長谷部です。よろしくね?」
「長谷部さんは私たちの隣の2組だから、何かと接点あるかもね!」
……第一印象、まつ毛なが!!しかも量も尋常じゃない。メイクでも施しているであろうその瞳は、色々とインパクトがでかすぎてそれ以外の顔のパーツがあまり目に入らない。
身長は私と20センチくらいの差。ポジションはガードと言ったところだろうか。
「さぁ、香苗ちゃんも連れて今日も部活にレッツゴー!」
威勢のいい声で戦闘をきる大塚さんに次いで私と長谷部さんが後ろを歩く。電車ごっこさながらな状態だ。
和泉さんは5組なので少し遠い。そんな私と大塚さんは3組で割と階段が近くて登校の時は何かと楽をさせてもらってる。
「えっと……」
「さぁ香苗ちゃん!一緒にこの輪に入るんだ!!」
「え、えぇっと……」
5組についた私たちは大塚さんを先頭に作っているこの電車ごっこのような状態のまま教室に入るなり、一直線に和泉さんのところへ向かった。
困惑した様子の和泉さん。まぁ無理もないか。こんな状況で入れと言われたら躊躇わないわけがない。
「とりあえず、部活いこ?」
このままでは部活に遅れてしまいそうなので、慌てて私が和泉さんに話を振る。大塚さんはあくまでもこの状態でいきたいようだが、そんなこと言ってたらいつまで経っても埒が明かない気がする。
「う、うん……」
苦笑しながらも私たちの後ろをついてきてくれる和泉さんは、根っこは優しい人に違いないだろうなと思いつつも部室の方へ向かった。
「私たちは部室で着替えるけど、神影たちは?」
「私たちは更衣室で着替えるよ。まだ本入部したってわけじゃないし」
「そっか!早くこっちで着替えられる日を願ってるよ!!」
部室塔に到着した私たちは、部室と更衣室の分かれ道で少し話をすると長谷部さんと大塚さんは部室へ、私と和泉さんは昨日の更衣室へと足を進めた。
私立桜星高校。東京都某所に位置する、一風変わったビジネスの高校である。
最近できたばかりで、ビジネス科目と英語にものすごく力を入れている現代っぽい学校だ。
構造も少し複雑で、普段授業を受ける校舎塔と体育館や部室のある部室塔に別れていて、運動部の部室は全て部室塔の中にある。
更衣室も部室塔の中にあって、体育館に近いからという理由で私たちはそっちで着替えている感じだ。
「さて、今日も部活頑張ろうね?」
「そうだね、今日も愛しの翔君のために頑張る!!」
昨日の状態のままの和泉さんに、思わずふっと笑ってしまう。
同時にあの出来事が夢や偽りでないことを表してくれるので、私としては安心感を得られるのでむしろ嬉しい。
「二人とも、準備できた―!?」
部室の方からは大塚さんの元気のいい声が廊下中に響き渡った。
「「おっけー!!」」
こうして今日も私たちのバスケットボールが始まったのだった。
モデルさんたちが結構楽しみと言うことで、結構頑張って描いてます←
どうも森野です。
今日は長谷部さんの出会い方について書いてみた←
リアルでもこんなんだからホントにビビる←←
だってホントに第一印象がまつ毛という点しか覚えていません←←
まぁこの後書きますが、彼女はホントに動くこと動くことw
一緒にいて面白いですし、いいお友達ですよww
では、今日はこの辺で♪